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Q.、在外日本人の選挙権の違憲判断の影響は?在外投票が許可されていないのは違憲そこで、まず、最高裁は1998年の参議院と衆議院の比例区での在外選挙を認める改正案成立前の公職選挙法について、次のように述べて違憲であると断じた。 「世界各地に散在する多数の在外国民に選挙権の行使を認めるに当たり、公正な選挙の実施や候補者に関する情報の適正な伝達等に関して解決されるべき問題があったとしても、既に昭和59年の時点で、選挙の執行について責任を負う内閣がその解決が可能であることを前提に上記の法律案を国会に提出していることを考慮すると、同法律案が廃案となった後、国会が,10年以上の長きにわたって在外選挙制度を何ら創設しないまま放置し、本件選挙において在外国民が投票をすることを認めなかったことについては、やむを得ない事由があったとは到底いうことができない。そうすると、本件改正前の公職選挙法が、本件選挙当時、在外国民であった上告人らの投票を全く認めていなかったことは、憲法15条1項及び3項、43条1項並びに44条ただし書に違反するものであったというべきである」 さらに、1998年に参議院と衆議院の比例区でのみ在外選挙を認める改正案成立後の公職選挙法についても、次のように述べて違憲であると断じた。 「本件改正後に在外選挙が繰り返し実施されてきていること、通信手段が地球規模で目覚ましい発達を遂げていることなどによれば、在外国民に候補者個人に関する情報を適正に伝達することが著しく困難であるとはいえなくなったものというべきである。また、参議院比例代表選出議員の選挙制度を非拘束名簿式に改めることなどを内容とする公職選挙法の一部を改正する法律が平成12年11月1日に公布され、…この改正後は、参議院比例代表選出議員の選挙の投票については、公職選挙法86条の3第1項の参議院名簿登載者の氏名を自書することが原則とされ、既に平成13年及び同16年に、在外国民についてもこの制度に基づく選挙権の行使がされていることなども併せて考えると、遅くとも、本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の時点においては、衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙について在外国民に投票をすることを認めないことについて、やむを得ない事由があるということはできず、公職選挙法附則8項の規定のうち、在外選挙制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は、憲法15条1項及び3項,43条1項並びに44条ただし書に違反するものといわざるを得ない」 以上の通り、最高裁は、参議院での選挙区選挙及び衆議院での小選挙区における在外投票が許可されていないのは、違憲であるとした。 最高裁の指摘はネット時代という現状を踏まえたものそこで、まず、選挙区選挙が許されことになった場合、在外邦人がどの選挙区で投票することができるのかという問題であるが、これは、海外転出直前の本籍地か住所地とすることで解決する。 次に、選挙公報を在外邦人に配布するという点については、総務省のHPに選挙掲示板を作成し、選挙広報はもとより、各候補者の政策や考えを掲載するようにすれば、世界中どこからでもアクセスすることができる。もともと、小選挙区での候補者が、法律で定められた限度の葉書3万5000枚を出したり、ビラ7万枚を出すだけで、候補者の政策や考えを十分に伝達することは、国内の有権者に対しても不可能なことである。世界中の在外有権者に紙で選挙公報を発送することは不可能などというナンセンスな発想をするから、外務省の職員を増員しなければならないなどという声が出てくるのである。 小選挙区候補者も、選挙期間中にメールアドレスを登録した人に選挙演説の日程や、選挙運動の模様をHPに掲示したり、さらに政策や考えをブログで発信したりすることが可能となる。それは、選挙民が国内にいようが海外にいようが同じことである。 「通信手段が地球規模で目覚ましい発達を遂げていることなどによれば、在外国民に候補者個人に関する情報を適正に伝達することが著しく困難であるとはいえなくなったものというべきである。」という最高裁の指摘は、正しくネット時代という現状を踏まえたものである。 HPやブログでの選挙運動の解禁も検討材料に米国の例では、民主党及び共和党それぞれ独自に、海外居住者用に、HPを設置して、情報を提供している。 また、ニュ-ヨークの日本総領事館のHPでも、在外投票の制度は説明されている。しかし、米国人の海外在住者は700万人で、日本人は72万であることから、従来、在外邦人の選挙権の行使という地味なテーマは人々の関心を得る材料とはならなかった。そのために、一審の東京地裁も二審の東京高裁でも、選挙権の行使の方法は、国会の自主性に任せるとして、違憲立法審査権を行使することはなく、10年以上も法律の制定を放置したことについても、立法の不作為(国会の怠慢)を認めなかった。 このような中で、下級裁判所の判断を引っくり返し、最高裁が選挙権という憲法上の権利について、違憲判決を出したことの意義は大きい。もっとも、損害賠償として認められたのは、原告一人あたり5000円であり、東京地裁への提訴時の原告が53人であつたものの、時間を経るごとに原告数が減っていき、最高裁への上告時には、13名になっていた。13名の上告人一人あたり、5000円の損害賠償では、合計6万5000円にしかならず、10年以上もかけた裁判からみると、余りにも常識から外れた数字である。 とにかく、国会は、次回の選挙までに、早急に在外邦人の選挙区での選挙権を確保する立法をすることが求められた。同時に、政党や候補者の情報発信のためにHPやブログでの選挙運動の解禁も検討材料にのぼることを期待したい。今回の最高裁の判決は、選挙権という憲法上の権利確保のためにも、ネットの利便性を利用することができることを指摘したと解釈することも可能であろう。 鼎 博之(かなえ ひろゆき)
国際取引、企業法務、M&A、技術援助、ソフトウエアライセンス契約、ジョイントベンチャー、知的所有権を専門とし、第二東京弁護士会紛議調停委員会副委員長、国際交流委員会副委員長、常議員、綱紀委員などを歴任。ニューヨーク州での弁護士資格もあり。著書には、「会社役員の仕事」(共著、中央経済社・2003年)「Q&Aでわかるネットビジネス法律相談室」(共著、日経ネットビジネス・2000年)「電子商取引に関する日本の法制度」(共著、コマースネット ジャパン・1999年)ほか著書多数。新東京法律事務所所属。
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