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Q. Google のMicrosoft技術者引き抜きで問われた競業避止義務の行方は?(その2)

さらに、裁判所は、転職を受け入れた競業会社の責任について、次のように判断した。

転職を受け入れた被告会社は、

  • 昭和56年ころから、英語教材の訪問販売の方法が社会問題化したことをきっかけに、英語教材販売業界の健全な発展に寄与することを目的に発足した振興会の準会員として、企業間セールスマンの同時多人数のリクルート自粛の基準を遵守する立場にあったこと
  • あらかじめ、原告会社の上記被告幹部社員ともに大量のセールスマンが移籍することを前提に、新営業所の事務所の鍵を上記被告幹部社員に交付していること
  • 上記慰安旅行が原告に発覚したとの元幹部社員の報告を受けて、急遽熱海のホテルを手配したり、バスをチャーターし、このホテル代やバスのチャーター料をすべて負担するなど、移籍の勧誘のための場所作りに積極的に関与していること
  • ホテルの会議室でセールスマンらに被告会社の説明を開催したこと

これらのことなど、損害賠償責任を負わされた被告である元原告会社役員とともに、会社組織の引き抜きの計画と実行に積極的に関与したものであり、これら一連の行為は社会的相当性を逸脱した引き抜き行為にあたる。これらの行為は、会社と営業社員との契約上の債権を侵害したものであるとして、上記幹部社員とともに、損害賠償責任があると判断した。そして、損害額については、原告の請求額1億円に対して、1カ月分の粗利益を基礎として、870万円の損害賠償を元幹部と被告会社に命じた。ラクソン事件(東京地裁平成3年2月25日判決、判例時報1399号69頁)

退職までに予告期間をおくなどの対応がポイントに

また、人材派遣会社の幹部社員による派遣スタッフの大量引き抜きが裁判になった事件では、直前まで、原告・被告会社以外の第三者のA会社に派遣されていたスタッフ30名中14名、また、B会社に派遣していた5名中4名を引き抜いた行為が、不法行為と判断されている(労働判例840号62頁)。

以上の判例原則をまとめると、従業員の引き抜きで問題になる要点は、次のようなものとなる。

  • 引き抜き行為を行う者が取締役や営業部長などの地位が高いものほど、責任を負わされる可能性が高い。特に取締役には職務に関する忠実義務があり、損害賠償の根拠とされ易いと思われる。
  • 引き抜きの対象となる従業員の待遇と人数、従業員の退職が会社に及ぼす影響、転職の勧誘に用いた方法(退職時期の予告の有無、秘密性、計画性等)等が総合考慮されるが、これらの要件は、あくまで検討される事項であり、具体的なケースごとに判断が異なることなると思われる。

従って、通常行われることが多い、給料アップを条件とした転職勧誘や、ヘッドハンターを通じた勧誘行為そのものは、商業道徳や道義的な問題があったとしても、個々の労働者の職業選択の自由との関係で違法性を帯びることは少ないと思われる。

また、上記の例は、自社の社員が引き抜きにあった場合であるが、これとは逆に、もし、ライバル会社の社員が大挙して自社に転職を求めてきた場合の会社の対応としては、次のような点に注意する必要がある。

  • 転職を求めてきた社員が幹部社員であれば、退職をしようとする会社との間に、競業避止義務や引き抜き禁止の約定に署名しているかどうかを確認すること、引き抜き禁止条項が存在する場合、同僚に対する引き抜きを差し控えるようにアドバイスすること。
  • 退職までに少なくとも2週間、できれば、最低1カ月以上の十分な予告期間をおくこと。
  • 幹部社員であれば、それがライバル会社に多大な損失を生じさせる行為となるかどうかを冷静に見極め、その引抜行為が、転職を希望する社員との共謀行為とされることのないように、十分慎重に行動する必要がある。
  • 転職を希望する者からは、元の会社との競業避止義務や引抜禁止の約定に違反していないという誓約書を入手することも必要であろう。

以上、総じていえることは、企業として、社会的相当性を逸脱する行為に加担したと指弾されない行動をとる必要があるということである。

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