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Q. Google のMicrosoft技術者引き抜きで問われた競業避止義務の行方は?(その2)

(2005/08/31 鼎 博之 弁護士)

第10問:競合会社に優秀な社員を引き抜かれました。どのような人材引き抜き行為が違法とされるのでしょうか。また、競合会社の社員が大挙して弊社に転職を求めてきた場合、どのような点に注意すべきでしょうか。

A:英会話教室の社員引き抜きの判例が参考に

前問で、Googleが、本年7月初め、元Microsoftの検索技術担当のヴァイスプレジデントKai-Fu Lee氏を中国に開設する研究開発センターの開発責任者に任命したことで、7月18日、Microsoftは、ワシントン州の裁判所に、Lee氏だけではなく、転職先のGoogleをも相手に訴訟を提起した事例を紹介した。そこで、競合会社のどのような引き抜き行為が許容され、いかなる行為が違法とされるのであろうか検討してみよう。

営業社員24名の退職を勧誘した事案の場合は…

この問題に関しては、英会話教室を経営する会社の取締役兼営業本部長の地位にあった者が、自己の処遇に不満をもち、部下を移籍させる意図の下、部下を慰安旅行名目でホテルに連れだし、競業会社への移籍を勧誘し、当該競業会社の役員も出席して、営業社員24名の退職を勧誘した事案が参考になると思われる。

裁判所は次のように述べている。

「企業間における従業員の引抜行為の是非の問題は、個人の転職の自由の保障と企業の利益の保護という2つの要請をいかに調整するかという問題でもあるが、個人の転職の自由は最大限に保障されなければならないから、従業員の引抜行為のうち単なる転職の勧誘に留まるものは違法とはいえず、したがって、右転職の勧誘が引き抜かれる側の会社の幹部従業員によって行われたとしても、右行為を直ちに雇用契約上の誠実義務に違反したと評価することはできないというべきである」
「しかしながら、その場合でも、退職時期を考慮し、あるいは事前の予告を行う等、会社の正当な利益を侵害しないよう配慮すべきであり(従業員は一般的に2週間前に退職の予告をすべきである。民法627条1項参照)、これをしないばかりか会社に内密に移籍の計画を立て一斉、かつ、大量に従業員を引き抜く等、その引抜きが単なる転職の勧誘の域を超え、社会的相当性を逸脱し極めて背信的方法で行われた場合には、それを実行した会社の幹部従業員は雇用契約上の誠実義務に違反したものとして、債務不履行あるいは不法行為責任を負うというべきである。そして、社会的相当性を逸脱した引抜行為であるか否かは、転職する従業員のその会社に占める地位、会社内部における待遇及び人数、従業員の転職が会社に及ぼす影響、転職の勧誘に用いた方法(退職時期の予告の有無、秘密性、計画性等)等諸般の事情を総合考慮して判断すべきである」

社会的な常識を逸脱した違法な引き抜きかどうかが争点に

本件の場合には、次のような事実が存在した。

  • 当該引き抜き行為を行ったのは原告会社の営業において中心的な役割を果たしていた幹部従業員であり、しかも、引抜行為の直前まで原告会社の取締役でもあった上、原告会社の社運をかけた企画を一切任されていた。
  • したがって、当該被告とともにその配下の組織が一斉に退職すれば、原告の営業基盤の運営に重大な支障を生ずることは明らかであった。
  • その引き抜き方法も、まず、個別的にマネージャーらに移籍を説得したうえ、このマネージャーらとともに、原告に知られないように内密にセールスマンらの移籍を計画・準備し、しかも、セールスマンらが移籍を決意する以前から移籍した後の営業場所を確保したばかりか、あらかじめ右営業場所に備品を運搬するなどして、移籍後直ちに営業を行うことができるように準備した後、慰安旅行を装って、事情を知らないセールスマンらをまとめて連れ出し、ホテル内の一室で移籍の説得を行い、その翌日には打ち合わせどおりホテルに来ていた転職先である被告会社の役員に会社の説明をしてもらい、その翌日から早速被告会社の営業所で営業を始め、その後に原告へ退職届けを郵送させたというものであり、その態様は計画的かつ背信的なものであった。

このような事実関係を総合考慮して、裁判所は、被告の元幹部社員の引き抜き行為が、社会的相当性を逸脱した違法な引き抜き行為として不法行為に該当すること、そして、これらの一連の行為は、雇用契約上の誠実義務に違反したものである判断して、当の元幹部社員は、損害賠償義務を免れないと判断した。

next:さらに、裁判所は、転職を受け入れた競業会社の責任について…

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