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Q.Google のMicrosoft技術者引き抜きで問われた競業避止義務の行方は?競合他社への転職を禁じる合意は法律上有効か?上記のように、今後ともMicrosoftとGoogle間の裁判の行方から目が離せないが、人材の流動化が進んでいる日本において、退職後の従業員に対して、競業他社に転職することを禁じる合意は法律上有効か否かという問題を検討する。 一般的に、従業員は、労働契約存続中は、職務専念義務があるので使用者の利益に反する競業行為がなされた場合には、就業規則違反として懲戒の対象となる。しかし、退職後は、職業選択の自由があるので、労働契約存続中のように競業避止義務を認めることはできない。 そこで、在職中に合意された競業避止義務に関する誓約書の有効性が認められるか否かは、退職後の競業制限の必要性やその範囲(期間、地域など)、及び退職者の行った競業行為の態様(背信性の程度)によって判断される。 ある産業機械製造会社において、会社役員、営業課長、製造課長らから在職中に「会社を退職した後5年間は、会社の営業の部類に属する事業を営む他企業への勤務又は自家営業を行わず、その他会社の技術、情報等を利用して会社に損害を及ぼす行為を一切行わない」との誓約書を提出させており、退職の際にも同様の誓約書と機密保持誓約書を徴求していたケースにおいて、裁判所は概要次のように判断した。
岩城硝子ほか事件に判例がある(大阪地裁平成10年12月22日判決、知財裁判例集30巻1000頁)。 企業も競業禁止に見合う退職金や、手当の支給が必要にまた、新薬開発に関する治験の実施及びモニタリング業務に従事していた従業員が、退職後、競業会社に転職した事件において、裁判所は次のように判断した。
そして、本件事案では、原告会社には独自のノウハウといえるものはなく、当該従業員の在職中、月額4000円の秘密保持手当を支払っていただけで、退職金その他の代替措置を講じていないことから、本件競業避止義務の合意は、期間が1年にとどまることを考慮しても、その制限が必要かつ合理的な範囲を超えるものであって、公序良俗に反し無効である、と判断した。新日本科学事件(大阪地裁平成15年1月22日判決、労働判例846号39頁)。 以上の判例理論から推測すれば、退職後の競業避止義務の有効性が認められる要件は、当該従業員の地位と会社の保有する営業秘密やノウハウの内容、競業避止義務の期間、地域の限定、代替措置等を考慮すべきであり、期間としては1年程度、しかも代替措置として、競業禁止に見合う退職金や、手当の支給が必要となろう。 欧米の雇用契約書では、競業会社に就職しない場合の代替措置として、退職後1年間は、在職中の報酬を補償する規定を設けている場合も存在する。日本において、このような代償措置の有効性は、いまだ裁判所において確認されていないが、有効な手段のひとつと思われる。 鼎 博之(かなえ ひろゆき)
国際取引、企業法務、M&A、技術援助、ソフトウエアライセンス契約、ジョイントベンチャー、知的所有権を専門とし、第二東京弁護士会紛議調停委員会副委員長、国際交流委員会副委員長、常議員、綱紀委員などを歴任。ニューヨーク州での弁護士資格もあり。著書には、「会社役員の仕事」(共著、中央経済社・2003年)「Q&Aでわかるネットビジネス法律相談室」(共著、日経ネットビジネス・2000年)「電子商取引に関する日本の法制度」(共著、コマースネット ジャパン・1999年)ほか著書多数。新東京法律事務所所属。
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