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Q.ブログの報道にもメディアとしての倫理基準があるのですか?

(2005/05/30 鼎 博之 弁護士)

第4問: Blog(ブログ)が活況を呈していますが、一方で、Blogger(ブロガー)の記事には、責任の所在が明確でないとの批判があります。何か倫理上の行動基準はないのでしょうか。

A.: ブロガーが自主的に倫理基準を作成し記事の信頼性を高める動きも

第1問で、ブログは、草の根情報発信手段のひとつであり、さほどの費用をかけることなく、個人が私設新聞や私設放送局を設置することができるようなものであり、重要な民主主義実現の一手段であると述べた。去る5月18日の日本経済新聞には、「総務省の発表によると、本年3月末時点で、ブログ利用者が、335万人に達し、ブログ閲覧者も1651万人に達した。同省の分析では、2年後にはブログの利用者が2.3倍の約782万人に、閲覧者も3455万人に拡大すると試算している」と記載されている。

閲覧者3455万人という数字は実に恐ろしい数字である。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の日刊新聞紙の発行部数をすべて合わせたくらいのブログの読者が存在するということになると、ブログは、既存の活字メディアに匹敵する規模といえることになる。

ホワイトハウスのプレスパスを持つ草の根ブロガーも登場

既に欧米では、ブロガーが社会的な勢力を持ち始めており、その社会的認知度は、日々高まっている。スイス、ダボスでの「World Economic Forum」についてのブログもその内容が注目を集め、2004年の米国大統領選挙選挙戦においてもブロガーの存在がもはや既定のものとなっている(「CYBER JOURNALIST.NET」の記事より)。

さらに、今年3月には、ガレット・グラフ(Garrett Graff)氏は、ブロガーとして、初めてホワイトハウスに出入りするプレスパスを取得した。グラフ氏は、ワシントンDCのメディア人のゴシップ記事を自らのブログ「FishbowlDC」に掲載しているブロガーである。ゴシップメディアであれ、正当派メディアであれ、ブロガーが、ホワイトハウスのプレスとして認知されたということは、ひとつのエポックメーキングな出来事であり、このことは、逆に草の根ジャーナリストとしてのブロガーがその何百倍も存在することを示している。

このような社会的な認知度の向上を考慮すると、ブロガーは、いわば別名「サイバージャーナリスト」と呼んでもいいのではないかと思われる。すでにサイバージャーナリストのWebsite「CYBER JOURNALIST.NET」も開設されており、ブロガーの記事、写真などを自由に検索することができる。サイバージャーナリストの動きは、既存メディアとは一線を画し、あくまで草の根報道に徹し、市民のジャーナリズムであるとの視点を協調している。

問題になるブログ・ジャーナリズムの信憑性

ところが、このように、ブロガーがメンストリームに登場してくると問題になるのが、ブログの内容に信憑性があるのかという問題である。そして、もし、ブログの内容が真実と相違する場合、ブロガーは、訂正記事を記載することが要求されるかどうかという問題もある。つまりこのように記事内容の選択、確認、訂正という作業が加わって初めてブログの価値が高まるのである。単なる裏付けもない事実の言いっぱなしでは、ブログの社会的価値が向上することは望めないと思われる。

さらに、ブロガーが、企業から報酬を受領しているのに、そのような事実を隠して、その企業の販売する商品を、あたかも素人が利用した結果のように推奨する内容のブログを掲載した場合、ブログの記事内容の信頼性が問われることになる。

このような中で、ブロガー自身が、行動倫理基準を制定しようとする動きが出てきた。米国におけるサイバージャーナリストの記者倫理基準「ブロガーの行動基準」設定がこの試みである。このサイバージャーナリストの記者倫理基準は、「既存メディアの記者倫理基準」を一部修正して採用したものである。

確かに、すべてのブロガーが、ジャーナリストではない。ブログは、もっとカジュアルなものであり、既存メディアのジャーナリストのような倫理規定が、適用される必要性もなく、おのおのの基準で行動すればよいとの意見も当然存在するが、これもひとつの動きと見ることができよう。


【ブロガーの行動基準】

正直かつ公平であれ。
ブロガーは、情報の収集、報道、解釈において正直でかつ公平でなければならない。

  • 他人の文章を盗用してはならない。
  • 署名入りで記載し、できる限り情報の出所に対するリンクを張ること。大衆は、情報源の信頼性に対してできる限りの情報を知る権利がある。
  • ブログの記載には十分注意し、引用、タイトル、写真、及びすべての内容について、事実に相違することのないようにすること。記事内容は、単純化しすぎてはならず、中身を外れた出来事を協調しすぎてはならない。
  • 写真の内容を歪曲してはならない、もし、修正を施す場合は、どこを修正したか明記すること。画像の修正は、技術的な明瞭性のためのみが許容される。モンタージュ写真、及び写真イラストにはラベルを付すこと。
  • 正確でないことがわかっている情報は掲載しないこと。もし、内容が真実でない疑いがある場合、疑問があることを明記すること。
  • 主張、コメント、及び事実の報道の区別をつけること。主張及びコメントは、事実として掲載してはならない。
  • 事実とコメントを、広告宣伝と明確に区別すること。この二つのラインを混在させないこと。

個人の権利侵害を最低限度にとどめること
倫理規範を有するブロガーは、情報源とブログの対象を共に人間として尊敬の対象として、対処すること。従って、ブロガーは、次のように行動する。

  • ブログの内容により、影響を受ける人物に対しては思いやりの心をもつこと。子供や未経験の情報源あるいはブログの対象に対しては、特別の慎重さで望むこと。
  • 悲劇や悲嘆の対象となった人物に対するインタビューあるいは写真を撮影することは特に慎重にすること。
  • 情報の収集、及び報道は、害や不快感をもたらすことがあることを認識すること。情報を探求することは、傲慢さを許容するものではない。
  • 一般の私人は、権力、影響力、あるいは注目度の高い政治家や公務員と異なり、情報に対する高度のコントロール権を有することを認識すること。高度の公共的使命の要求が存在するときにのみ、プライバシーの侵害が許される。
  • 味のある表現を示すこと。迎合的で、扇情的な興味本位に走ることは避けること。刑事事件の被疑者が未成年者である場合の氏名の特定、または性犯罪の被害者や犯罪事件の被疑者の氏名を特定することは、正式な起訴手続きがなされる前には、慎重でなければならない。

説明責任を果たすこと
ブロガーは、次に記載する事項を守らなければならない。

  • 間違いがある場合は素直に認め、直ちに訂正すること。
  • ブログの使命を説明し、その記事内容やブロガーの行動について、大衆の声を聴くこと。
  • 利害関係、提携関係、行動基準、個人的課題を開示すること。
  • 広告提供者や特別の利益団体を特別扱いしないこと、またこれらの者からの記事内容に対する介入を拒絶すること。もし、例外的扱いを行った場合には、その事実を包み隠さず開示すること。
  • 好意的取扱いを求めて情報を提供する情報源に対しては用心すること。そのような情報を受け取る場合、好意の内容を開示すること。
  • 他のブロガーの反倫理的な行動を明るみに出すこと。
  • ジャーナリストが他人に対して持つと同様の高い倫理基準を遵守すること。

もちろん、この記者倫理基準は、あくまで参考とされており、これに対するコメント、追加、修正を広く読者に求めている。このように、既存メディアに対抗して発生したブログは、その存在が社会的認知度を高めていく段階に比例して、高い倫理性を求められているということがいえよう。

鼎 博之(かなえ ひろゆき)
国際取引、企業法務、M&A、技術援助、ソフトウエアライセンス契約、ジョイントベンチャー、知的所有権を専門とし、第二東京弁護士会紛議調停委員会副委員長、国際交流委員会副委員長、常議員、綱紀委員などを歴任。ニューヨーク州での弁護士資格もあり。著書には、「会社役員の仕事」(共著、中央経済社・2003年)「Q&Aでわかるネットビジネス法律相談室」(共著、日経ネットビジネス・2000年)「電子商取引に関する日本の法制度」(共著、コマースネット ジャパン・1999年)ほか著書多数。新東京法律事務所所属。
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