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Q.ブログを公開する際に「引用」などは法的制限を受けるのですか?(2005/04/06 鼎 博之 弁護士)
第1問: 個人のBlog(ブログ)サイトが活況を呈しています。blog(ブログ)について「引用」などは法的な制限を受けるのでしょうか。また著作権法上その他で注意しなければならない点はどんな点でしょうか。 A.: 改変などに注意すればかなりの引用が認められる そもそも、ブログ(blog)とは、Web上のlogに書き込まれた文字、画像情報の集合体であり、このブログ自体の形式も様々である。個人が独自に設定しているブログは、個人のホームページをいわば進化させたもので、掲示板に書き込む感覚で記事をポストすると、書き込みが更新されて、個人の情報が瞬く間にネット上に発信されていくシステムである。無料や有料のブログソフトのお陰で、個人版放送局が出来上がるというシステムである。 また、gooやexcite、さらには最近話題のlivedoorのブログサービスのように、各社の提供するブログホスティングサービスを利用すれば、簡単に個人のブログを作成することができるようになっている。これは、単に個人が趣味で設定するものから、一定のオピニオンの主張、あるいは、異業種交流サークルのようなものまで、様々である。政治家、評論家、スポーツ選手、俳優、その他社会で活躍中の有名人のブログは、その人の日々の行動が書き込まれており、一種ネットの上でのファンクラブの様相を呈している。 ブログの誕生で問題になってきた著作権インタ-ネットは、人類が数千年の永きにわたって享受してきた紙の文明からデジタル文明とでもいうべき一大文明上の変革をもたらせた。当初は、軍事目的で発展したインターネットが、一般企業の利用に止まらず、パソコンユーザーという名の市民に開放され、ついに誰でも、どこでも情報の発信者になりうるという革命的変化をもたらせた。現在、世界では10億人以上がインターネットを利用しており、その数の増加は、テレビが5000万人に普及するまでに38年間かかったといわれる米国でさえ、わずか4年間で5000万ユーザを達成したという程の急速な発展を遂げた。普通の市民にとって、インターネットに接続するだけで、日本中はおろか、世界中に発言の機会を確保できるのであるから、情報発信手段としては、まさにパンドラの箱をひっくり返した状態となったわけである。 しかし、情報の発信という観点から見た場合、このブログに代表されるメディアの大衆化は、グーテンベルグの印刷機の発明に劣らない、一大発明とみることができよう。一般大衆が情報を発信する場合は、せいぜいビラかコピーを配布するという方法しかなかったのであるが、ブログに代表されるインターネットのお蔭で、現在では、無料またはわずかの料金で何百万人に対して情報を発信することができるようになった。既存メディアを第4の権力という場合、このブログを第5の権力という人も出てきた(「木村 剛氏のブログ」)。 さらに、そこで、個人がブログを作成して、ネットで情報を発信しようとする場合に注意しなければならない点を指摘しておきたい。 「脱ゴーマニズム宣言」裁判にみる「引用」の解釈まず、著作権には、複製権、翻案権、送信可能化権を含む自動公衆送信権など非常に多岐にわたる権利が含まれる。従って、第三者が所有する著作物を無断で自己のブログ上で、複製したり、改作したり、送信可能な状態に置いた場合には、当該著作者の著作権を侵害することになる。他人が創作した文章、ロゴ、キャラクター、図案、図形、写真、絵画などは、著作物の範囲に入るので、これらを無断でブログ上に利用することは慎まなければならない。 ブログにおいては、自己の主張を述べるだけでなく、他人の批判や批評を掲載することも多いと思われる。そこで、問題になるのは、「引用」という方法である。この点で、重要な判例があるので紹介したい。 漫画家として著名な小林よしのり氏は、「ゴーマニズム宣言」「新・ゴーマニズム宣言」「新・ゴーマニズム宣言脱正義論」などの作品を著作している。これに対して、小林氏の作品を批判する「脱ゴーマニズム宣言」という書籍を発行した人物を小林氏が、著作権法違反で提訴した事件がある。 この書籍は、小林氏の漫画作品のコマ(57カット)を作者に無断で採録した上で、作者の作品の一部に対する論評が加えられており、採録された一部のコマには人物の顔に目線を施すなどの変更がくわえられているなどの処置が施されていた。小林氏は、著作権法上の複製権侵害、同一性保持権侵害並びに不正競争防止法違反を主張して、被告書籍の出版、発行、販売及び頒布の差し止め並びに損害賠償を求めた。 これに対して、東京地方裁判所は、次のように判断した。 「著作権法32条1項は、『公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。』と規定している。この規定は、著作権の保護を図りつつ、文化的所産としての著作物の公正な利用を可能ならしめるための規定である。そして、このような規定の趣旨に鑑みると、同項にいう引用とは、報道、批評、研究等の目的で他人の著作物の全部又は一部を自己の著作物中に採録するものであって、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する著作物(以下『引用著作物』という。)と、引用されて利用される著作物(以下『被引用著作物』という。)を明瞭に区別して認識することができ(明瞭区別性)、かつ、両著作物の間に前者が主、後者が従の関係にあるもの(付従性)をいうと解するのが相当である」 以上のような原則を述べた上で、上記の批評書籍は、明瞭区別性も付従性も充足しているとして、結局、被告書籍中の原告小林氏のカットの採録は、いずれも著作権法32条1項にいう引用の要件を充たすものであるから、原告の複製権侵害の主張は理由がないとした(東京地方裁判所平成11年8月31日判決、判例タイムズ1016号218頁)。 著作物のむやみな「改変」には要注意ところが、これに対する控訴審において、東京高等裁判所は、「引用」については、著作権侵害を認めなかったが、カットの1箇所について、「改変」が行われており、この改変は、著作権法20条1項にいう「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」という規定に違反する。従って、同一性保持権の侵害により、金20万円の支払いを認めた(東京高等裁判所平成12年4月25日判決、最高裁判所の知的財産判決速報ホームページ参照)。 以上のように、他人の著作物を引用する場合には、明瞭区別性と付従性の要件を充足するのは勿論、むやみに改変を加えることにより、同一性保持権を侵害すると主張されないような配慮も必要である。 このように、注意すべき点を押さえて引用すれば、政治、経済、文学、その他あらゆる分野に関しても自由に批判、批評は可能である。大衆のメディアとして、ブログがますます盛んになり、真の情報発信手段として健全に発展することを期待したい。 鼎 博之(かなえ ひろゆき)
国際取引、企業法務、M&A、技術援助、ソフトウエアライセンス契約、ジョイントベンチャー、知的所有権を専門とし、第二東京弁護士会紛議調停委員会副委員長、国際交流委員会副委員長、常議員、綱紀委員などを歴任。ニューヨーク州での弁護士資格もあり。著書には、「会社役員の仕事」(共著、中央経済社・2003年)「Q&Aでわかるネットビジネス法律相談室」(共著、日経ネットビジネス・2000年)「電子商取引に関する日本の法制度」(共著、コマースネット ジャパン・1999年)ほか著書多数。新東京法律事務所所属。
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