うつ病Q&A
うつ病Q&A

2012年12月16日に開催された「メンタルヘルス・シンポジウム 2012 東京」。会場参加者から寄せられた質問に、パネリストの先生方にお答えいただくコーナー。10回目は、前回と同じ質問に、帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科科長・教授の張賢徳氏に回答していただいた。



うつ病学会が安易な投薬や過剰診断を判断するようなガイドラインを出しましたが、主治医がそのガイドラインを破るような人だったらどうしたらいいですか。

治療ガイドラインはあくまでも目安で、絶対に従わねばならないというものではありません。どうしても今の治療に疑問を感じるのであれば、そのまま残しておくのは治療上よくないので、主治医に遠慮なく聞いてください。このガイドラインは、日本うつ病学会のホームページからダウンロードできますから、それをお持ちになってもいいでしょう。「ここにこう書いてあるけれど、どうでしょうか」と、主治医に直接聞いていただくことが大事です。

1つ強調したいのは、対立は絶対よくないし、何も生み出しません。医師と喧嘩をしていいことは何もない。ですから、協調して二人三脚で治療していこうと発想を変えてください。

薬を飲んでおけばよくなるタイプのうつ病も確かにあります。薬と休養でよくなるうつ病もありますが、基本的には主治医と本人、家族、職場、みんなが連携しながらやっていくことが理想なので、連携を取るようなスタンスで心を開いていく。繰り返しますが、診察のときに疑問点を言ってください。そのときにガイドラインを持っていってもいいと思います。

もう一つ専門的な話をします。各国や各学会にも治療ガイドラインはありますが、本来はタイプ別に作成しなければならないのに、今の主流のガイドラインはステージング理論といって、軽症、中等症、重症と分けて治療方針を示しています。

しかし、軽症であるはずがないので、臨床上かなり無理があります。また、いろいろなタイプにも、それぞれ軽症、中等症、重症の場合があるでしょう。このタイプ別に考えることが大事な視点ですが、そうなると非常に複雑でガイドラインと銘打つほどのエビデンスも十分出ていないところもあるので、ざっくりと軽症、中等症、重症となっているわけです。

中等症以上の第一治療は抗うつ薬で、それは各国も共通しています。つまり、抗うつ薬の効果が否定されているわけではありません。ある一定の重さになれば、医師がただ患者さんの話を聞いているだけでは通じない。きちんとしたメディカルな治療が必要です。

軽症は、まだ回復力が残っている可能性があるため、カウンセリングだけでも対応できる場合があるというぐらいの捉え方が正確だと思っています。

日本は比較的安い値段で新薬が使えますが、カウンセリングにはなぜか保険が付いていません。日本にはカウンセリング文化がないからでしょう。しかし、これは国全体の問題であり、精神科医が悪いわけではないので、医師を責めてもどうすることもできません。ですから、まずは抗うつ薬を使います。軽症に薬が効くというエビデンスもあります。

前回、山田先生が言われた「患者さんのためを思って」というところでは私も全く同感で、薬に対して否定的な気持ちを持たないでいただきたいと思います。

ただ、初診の段階から3種も4種も抗うつ薬を出す病院には行かない方がいいでしょう。最初は1剤から、これは当然です。しかし、1剤ではうまくいかないケースが多いため、薬を変えていったり、2剤、3剤になったりといったことは、治療の途中段階ではあり得るとご理解ください。