うつ病Q&A
うつ病Q&A

2012年12月16日に開催された「メンタルヘルス・シンポジウム 2012 東京」。会場参加者から寄せられた質問に、パネリストの先生方にお答えいただくコーナー。5回目は帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科科長・教授の張賢徳氏に回答していただいた。

交通運輸業 経営管理室 男性

「新型うつ」の兆しの見極め方、病気としてのうつと、自己愁訴のみの偽うつとの見極め方(後者でも医師は診断書を交付してしまう)を教えてください。

まず、「新型うつ」の兆しというよりは、うつ病の兆しとして、その人のタイプが非定型や定型と分けられます。次に、その兆しをどう見極めるかですが、どのうつ病のタイプでも同じだと思います。講演の中で山田先生も言われていましたが、ある日突然、うつ病を発症するわけではなく、うつになるまでのプロセスがあります。

ストレス状況が続いてくると、まず体の反応として、頑張ろうとして交感神経が高まってきます。交感神経が高まってくると体は活性化されますが、イライラしやすくなったり、ぴりぴりして夜も眠れなくなってきます。自律神経は交感神経と副交感神経から成り立っていて、交感神経は体を活性化し、副交感神経は体を休めるように夜働きます。

私たちは自分の意思ではなく、生き物としてそのバランスをとっていますが、ストレス状況が続くと交感神経が出っ放しになり、自律神経失調症になります。それでも頑張り続けると、精神学的なうつ病に突入していきます。つまり、本当の意味での早期発見は、身体不調が出てきたあたりで自分でも何かおかしいなと思ってキャッチすることが大事です。ですから、そのあたりが兆しといえると思います。また、身体的な不調のほか、講演でもお話したように、どのタイプのうつ病にも通じてくる9つの基準症状が出てきたら、それがすなわち兆しです。

次に、2つ目のご質問である病気としてのうつと、偽うつとの見極め方ですが、これはなかなか難しいですね。そしてこれは外部医療機関の主治医としての立場と産業医の立場とではちょっと違ってきます。私自身は、主治医の立場ではだまされることも十分あり得るし、だまされても仕方がないと思っています。なぜなら、医療はまずは患者さんを信じるところからスタートするからです。私たち医師は裁判官でも審判でもないので、本人が「苦しい」「辛い」と言ってきたら、それに対応します。

講演で黒木先生が言われたように、中には悪い人がいて、偽うつで労災や傷病手当金をもらっている人がいるかもしれない。実際にそうしたことが見つかっているからいるのでしょう。しかしそれは少数だと思っています。そうした事例で全てがそうだというのは行き過ぎです。

ただし、偽うつがいるのも事実です。この判断は本当に難しいところです。それを主治医に求めるのは非常に厳しいと言わざるを得ません。外部の医療機関の主治医は診察室に来たときに患者さんに会うだけですから、それ以外の生活状況はわかりません。偽かどうかを見抜けるのは、むしろ日常接している人たちで、だからこそ会社の人からの情報が大事になってきます。

復職のタイミングと同様、本人を含め、主治医、産業医、人事など、さまざまな立場の人たちが集まり、一緒にディスカッションするのが1つの答えになるのではないかと考えています。