うつ病Q&A
うつ病Q&A

2012年7月22日に「メンタルヘルス・シンポジウム 2012 名古屋」が開催された。会場参加者から寄せられた質問に、パネリストの先生方にお答えいただくコーナー。3回目は、名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野教授の尾崎紀夫氏に回答していただいた。

社会保険労務士事務所勤務 女性
長男を妊娠中、つわりのころにうつ状態になりました。気力がなくなり、食事も作れず、人に会いたくなくなりました。産前のこういった症状も「マタニティーブルー」に入るのでしょうか。こういう状態になった人は更年期障害にもなりやすいと聞きましたが、予防法はないのでしょうか。

「マタニティーブルー」は、お産の直後に一過性に気持ちが不安定になることです。質問者の方は、つわりがある妊娠中のことですから、これは「マタニティーブルー」ではありません。ただ、ご本人に一番苦しかったのはいつ頃かと聞くと、妊娠中と言われます。つわりもあり、いろいろなことで実は妊娠中が一番苦しいという方が多いのです。

講演の中でも述べましたが、妊娠中、一過性に気持ちの調子を崩す人はいますが、これは一過性と表現しているようによくなります。また、一般的には苦しいので落ち込むのも当たり前だと考えがちですが、必ずしもそうではありません。身体的に苦しいことと、気持ちが落ち込んでしまう、あるいは物事を全て悪く取ってしまうこととは別のものです。人間にとって何がつらいかというと、例えば、人間関係がなかなかうまくいかない、人のサポートが得られない、人との調整がうまくいかないなど、こちらの方がヒトという動物にとってはとてもつらいものです。

もちろん、「痛い」や「苦しい」もつらいことですし、体に痛みのある病気は、うつ病になりやすいという報告もあります。本当なら子どもが生まれてハッピーなはずなのに、子どもをどう育てたらいいのかわからない、誰に助けてもらったらいいのかわからないと、どんどん悪い方向に向かっていく、その方がつらいようです。それがうつ病であり、うつ病の悪循環です。

ですから、質問の答えとしては、つわりの苦しさはマタニティーブルーとは言いません。

次に、更年期障害につながるかという質問ですが、更年期障は女性ホルモンがアップダウンしながら、変化しながら落ちていく時期で、のぼせや不快な血管系の症状を引き起こします。ただ、このホルモンの変動には個人差があります。また、個人差の中でホルモンの変動に強く反応する人もいれば、そうでない人もいます。妊娠、出産という時期のホルモンの変動に強く反応する人が更年期障害になりやすいと考えられますが、実際に明確なエビデンスはまだまだない状態です。

ただし、こういうことはあります。米国で一度、産後うつになった人に人工的に女性ホルモンを投与して、その後ポンとやめました。すると症状が再現されるケースがありました。つまり、ホルモンの変化に“脳や体が反応しやすい人がいる”ということは言えると思います。