うつ病Q&A
うつ病Q&A

2012年7月22日に「メンタルヘルス・シンポジウム 2012 名古屋」が開催された。会場参加者から寄せられた質問に、パネリストの先生方にお答えいただくコーナー。1回目は、国立精神・神経医療研究センター理事長・総長の樋口輝彦氏に回答していただいた。

医学部学生 女性
月経前症候群は有病率が20~30%と高いのに、義務教育の中の保健体育で、他の病気や月経そのものについては勉強しても、女性のうつについては扱われていません。女性に限らず、気分障害の障害罹患率は10~20%と決して低くないのに、精神医学の公衆衛生を義務教育の中で触れられないことについて、お考えをお聞かせください。

まず、これは日本が特に諸外国と異なっているところで、女性のうつに限らず、メンタルの病気に関して、小学・中学校、それから高校の保健体育の教科書の中にも一切説明がありません。なぜそういうことになったのか。これには歴史的な背景があります。

数十年前の教科書には、現在の統合失調症、躁うつ病、うつ病、神経症といった記述がありましたが、これがあまりにも時代錯誤的な表現でした。例えば、「遺伝で発症する」といった極めて不正確な記述で、精神障害に対する偏見や差別を助長しかねないことから、精神神経領域の学会がこうした記述はやめるべきとの声明を出しました。本来であれば、正確な記述に変更するところを、これを文部省(当時)が全て削除してしまい、以来、精神疾患に関する正確な記述は今日に至るまで教科書には出ていません。

しかし、これは非常に大きな影響を持っていると考えています。こういった精神的な病気がどういうものなのか説明を受けないまま大人になる状況が、偏見や差別を助長していることにつながっているといわれています。

例えば、これに関してオーストラリアと日本を比較した研究があります。中学・高校の教科書に正確な記載がされているオーストラリアで、心の病気の偏見に関する調査を行うと、日本とオーストラリアではそれに対する意識が全然違うことがわかっています。もちろんそれだけが理由であるとは思いませんが、小さい頃からの教育の有無が原因の1つにもなっているという考察がなされています。精神的な病気に関して、義務教育から正しい知識を共有することが大事であり、今後の大きな課題であると考えています。