編集長の新刊紹介

編集長 阪田英也の新刊紹介
タイトル:患者さんに説明できるうつ病治療
著者:稲田泰之
刊行:2014年2月28日
発行:じほう
定価:1994円(税込)
患者さんに説明できるうつ病治療

うつ病バブルの現代
しかし、医学用語の「うつ病」は理解されていない

 長く不安障害、うつ病を臨床家として診てきた筆者・稲田泰之氏は、この本の序で、「いま日本はうつ病バブルなのかもしれません」と警鐘を鳴らしている。
 かつて敷居の高かった精神科は、メンタルクリニックとその標榜を変え、いまは多くの患者を抱える。「うつ病」はメジャーな疾患となり、若年層に多くみられる「新型うつ病」も登場。薬物療法では坑うつ剤が年間1000億円以上の売上を記録した。そして、精神療法では認知療法が診療報酬を認められている。

 「これがバブルでなくて何なんだ」。
稲田氏でなくとも誰しもが憤りを感ずるところだろう。しかし、稲田氏がこの本を著した理由は他にある。それは、うつ病の情報は世間に溢れるほどあるが、医学用語としての「うつ病」の情報は意外と少ないという事実からである。

 筆者・稲田氏は年間多数の講演活動を行っている。その多くは医療者向けだが、その際に聞かれるのは、「精神科はどのような治療をしているのか」「うつ病患者にどのように説明しているのか」ということだ。本書のタイトル『患者さんに説明できるうつ病治療』は、こうして生まれた。

 しかし、この本が医療者向けかといえばそうではない。うつ病治療を網羅し時系列にうつ病治療を語ってはいるが、全5章が全てQ&A方式で、しかも平易なわかりやすい言葉を選んで説明されている。稲田氏は、本書の帯に、「精神科が専門外の医師、患者本人、患者家族、企業の人事担当者などにもオススメ」と記している。

 第1章は「うつ病全般について」、第2章「うつ病の原因・病態」、第3章「うつ病の治療」、第4章「病気の予後」、第5章「その他うつ病に関する質問」と、いたってシンプルである。

 だが、例えば第1章では、皆が聞きたい「精神科と心療内科の違い」をきちんと解説。第2章では、「なぜかかる医者によって診断(病名)が違うのか」、第3章では、「治療に順番があるのか」など、これまで精神科専門医が踏み込まなかった診断・治療のコア(核)の部分を開示しわかりやすく説明している。

 優れた臨床家である稲田氏が、長年うつ病の診断・治療の中で、どうしても伝えたい、どうしても分かってもらいたいエッセンスをこの一冊に集めたといえる。


(構成:日経BP社21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)