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竹林篤実のうつ病ブックレビュー
子どものうつ 心の叫び

 あまり知られていないが、子どもも「うつ病」にかかる。しかも、うつ病に悩む子どもたちは、意外に多い。にも関わらず、子どものうつは見過ごされがちだ。この点を著者は問題として指摘する。

 欧米の疫学調査によれば、人口比で見た子どものうつ病発症率は、児童期(12歳未満)で0.5~2.5%、思春期(12~17歳)では2~8%となるようだ(本書/P142)。では、日本の現状をご存知だろうか。著者が北海道地区で行った調査からは、結構ショッキングな結果が出ている。

 小学校1年生から中学校3年生までを対象とした調査は、有効回答3331を得ており、サンプル数として十分有意である。その結果、抑うつ群は全体の13%にも上った。小学校1年生から中学校3年生まで400人近くの子どもが、抑うつ群なのだ。しかもうつ病と推定される子どもが、全体の2.6%いる。また抑うつ傾向に関しては次の2点が明らかになった。女子が男子より多く、年齢が上がるほど増えている。

 子ども達も大人と同じ環境の中に暮らしている。であれば大人同様、子どもがうつに悩んでいても何もおかしくはない。

 問題は、子どものうつが見過ごされやすいことにある。その理由として次の4点を著者は指摘する。一番は先入観である。「子どもが大人と同じようにうつになるはずがない」。大人の側にそんな勝手な思い込みがある。また、子どものうつは一見しただけでは、うつ病のように見えない。さらに子どものうつは身体症状や問題行動を伴うために誤解されやすく、しかも日本の子どもが自分から抑うつ気分を訴えることは稀である。

 ところが、実際には不登校や問題行動の本質的な原因に、うつが絡んでいるケースもある。だから、子どものうつを見落としてはいけないと筆者は訴えるのだ。仮に子どもが次の5つの症状のどれかを見せたときは、うつを疑うべきであり、医者の診断を受けた方がよい。

1)学校へ行き渋るようになった
2)身体症状が続いていても検査では異常がない
3)睡眠障害、食欲障害がある
4)涙もろくなり、自分を責めるようになる
5)環境の変化やライフイベントがあって不調になる(本書/P94)

 医師からうつと診断された場合の治療方針は、基本的に大人と変わらない。薬物療法を施して、十分な休養を取らせる。家族の接し方も、大人のうつ病と変わらない。

 ただし大人の場合と違い、親には「子どもの問題行動の意味を理解する(本書/P133)」ことが求められる。親としては、これがもっとも難しいかもしれない。けれども、子どもがうつであるなら、怒ったり叱ったりするのは逆効果でしかない。それよりも、子どもの行動の意味を理解してあげることだ。

 また、子どものうつ治療では、親と並んで教師もキーパーソンとなる。先生に何より求められるのは、予想以上にうつの子どもがいると認識を改めること。同時に「うつ病を身体の病気と考え」「完璧主義、過剰に頑張ることを考え直す(本書/P136)」必要がある。

 子どものうつが増える背景として、著者は次の三つをあげる。社会環境や経済環境の著しい変化、子どもの生物学的な発育・成長が以前と比べて明らかに進んでいること、さらに子どもたちを取り巻く環境が刺激にあふれていること。言われてみれば、確かにその通りだ。

 不登校やひきこもりなどの裏側には、うつが潜んでいる可能性がある。そのことを頭に入れておくだけで、救われる子どもがたくさんいる。子どものうつでも早期発見、早期治療が有効なのは、大人と同じだ。まわりが早めにチェックすることで、一人でも多くの子どもが、うつから救われることを願いたい。