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竹林篤実のうつ病ブックレビュー
「うつ」とよりそう仕事術

 うつ病で受診する人は、この10年間で約2倍に増えた。年間受診者は100万人を超える。今や「うつ」は、誰もがかかる可能性のある病気である。うつは心の風邪のようなもの、誰もがかかるものとまで言われる時代だ。

 とはいえ、実際にうつになると風邪どころの騒ぎでは済まない。まず仕事を長い間休まなければならなくなる。休職して治療に専念し、無事復職できたとしても安心はできない。1度は復職したものの、再度休職に追い込まれるケースも多い。

 本書を書いたのは、2度の休職の後、再度復職に成功した現役サラリーマンである。といっても社内制度の整った大企業ではなく、ごく普通の中小企業で働いており、未だ闘病中の身。そんな著者の手になる本書には「うつ」を抱えながらもがんばっている人にとって、非常に役立つ仕事との付き合い方が具体的に記されている。

 たとえ「うつ」になっても、人は仕事をしたい。
 これが大前提である。自分が生きている証として、世の中に何らかの貢献をできるのが仕事なのだ。そこで筆者は考える、何とかして「うつ」とよりそいながら仕事ができないものかと。そのための工夫が、生活編、基本編、応用編、改善編の4つのステップに分けて記されている。

 生活編に書かれているのは「復職までにしておくこと」。「仕事」にかかるまえに、まず「家事」から始めることや、体と心それぞれのリラックス法などが記されている。なかでも参考になるのは情報遮断時間を設けることだろう。

 「1カ月に1度、1時間でもよいので、家族とも会わず、何も見ず、何も聞かず、一切の情報を遮断する時間と空間を確保する(本書/P42)」。これには「定期的に心にたまった情報・ストレスの棚卸しをしてあげる(本書/P42)」効果がある。

 また「夜のニュースは見ない」ように奨める。「夜のニュースの多くは、嫌なニュースで占められて(本書/P42)」いるからだ。これなどは、ストレスに苛まれがちな、すべてのビジネスパーソンに役に立つアドバイスと言っていい。

 実際に仕事を進める上での具体的なコツが書かれているのが、ステップ3の応用編だ。例えば、「ため息をついたら休憩の合図」だから、5分でいいから散歩に出る、あるいは怒りはきちんとボールにぶつける。ボールにぶつけるといっても投げるのではない。手のひらに小さなボールを忍ばせておき、怒りに震えるときはぎゅっとボールを握りしめる。これで怒りを発散できるわけだ。

 「Todoリストをやりきってはいけない」などと言われると、意外に思うかもしれない。けれども「仕事が暇で辛い」のが「うつ病を患って、そして職場に復帰した経験を持つ私の、偽らざる実感(本書/P148)」とあれば納得できる。「手元には常に5個のTodoを残しておいて全部使い切らない(本書/P149)」工夫が大切なのだ。

 そして、最終章。職場に「うつ病の人」が復職してきた場合の、周囲の接し方が記されている。ポイントは4つある。

  1. うつ病を認めること。本人が周囲に説明し了承してもらうことだ。
  2. 勤務体系は、時間は短くしても朝の時間は遅らせない方がいい。
  3. 最初に任せる仕事の量は入社2年目ぐらいの人と同じレベルが適当で、それも後方支援作業が良い。
  4. ふらっと散歩に出る自由を認めてあげること。
 本人にとって復職はゴールではない。復職後の仕事と人生こそが大切なのだ。それをまわりは理解してあげたい。

 人生は「スモール・スロウ・バット・ステディ」で良いではないか。

 本書を締めくくるメッセージは、うつに悩む人も、幸いにしてうつではない人も、心に留めておくべき言葉だろう。