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竹林篤実のうつ病ブックレビュー
女性の不安とうつ

 女性のうつ病患者は、ざっと男性の2倍。不安障害も女性のほうがかかる率は高く、男性の1.2倍から2倍にもなる。うつ病に関する米国の調査によれば、男女差がはっきり出始める年齢は10~14歳から。その後50歳まではずっと女性が男性のほぼ2倍で、50歳を超えると男女差はさらに広がる。

 女性にとってはショッキングな話だが、少なくとも米国では「女性のうつが男性の2倍」と統計データにはっきりと出ている。

 なぜ、女性の方がうつ病にかかりやすいのだろうか。

 うつ病を引き起こす原因には、男女で明らかな違いがある。男性が主に職場での悩みによってうつ病にかかるのに対して、女性の原因は「妊娠」「出産」「月経」など、個人生活上の問題に集中しているのだ。

 女性にうつ病が多い理由として、筆者は生物学的・社会的・心理的と女性に特有の3つの要因を挙げている。

 生物学的な要因とは女性ホルモンによるもの。『性ホルモンの水準(血液中の濃度)とうつ病発症の関係を見ると、女性のうつ病の発症率は、エストロゲンの変動の激しい時期に高くなります(同書/18P)』とある。女性ホルモンが大きく変化するのは月経、妊娠、出産そして閉経時だ。女性ホルモンが減ると脳内のセロトニンが低下し、うつ病を起こしやすくなる。

 社会的要因は、働く女性の職場と家庭の両立問題である。家事に加えて仕事でも責任をもたされているため、女性には大きなストレスがかかりがちだ。心理学的要因としては、男女のストレス対処法の違いが挙げられている。おそらく女性はストレスの発散があまり上手ではないのだろう。

 ともあれ女性のうつ病や不安障害は女性ホルモンと密接な関係がある。だからライフサイクルで大きな変化が起こるときに症状が出やすくなる。具体的には月経前症候群、月経前不快気分障害、妊娠期のうつ病(産後ブルーや産後うつ病など)、産後精神病、更年期うつ病(閉経期うつ病・閉経後うつ病)、高齢者うつ病などだ。

 治療に関しては男女差なく、薬物療法がメインである。本書では上記の各症状ごとに、主な薬物療法とその他の治療法がわかりやすく解説されている。それぞれ具体的な治療例も併載されており読みやすく参考になる。

 さらに抗うつ薬以外の治療法として、精神療法、電気けいれん療法など、その他療法、食事療法からサプリメントを使った代替医療までが幅広く紹介されている。その内容はやや専門的だが、身近にうつ病を抱えている人なら十分参考になるだろう。

 そして最終章を締めくくるのは「患者と家族にできること」。何より患者はできる限り早く救いの手を求めることだ。『うつ病は「心の病気」ですが、実は脳の働きの異常によっておこる「脳の病気」なのです(同書/224P)』。よい治療者を見つければ対策はいくらでもある。

 家族に対しては、うつ病とその治療法について可能な限り勉強する必要性を筆者は強調している。知識こそは、身近にうつ病患者を抱える人にとって最良の武器だ。その武器を手に入れるためにも、本書は格好の参考書となる。