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竹林篤実のうつ病ブックレビュー
「うつ」な人ほど強くなれる

 「うつ」な人ほど強くなれる、とはどういうことか。本来なら心が弱いからこそ、人はうつになるのではないのか。

 一見、このタイトルからは何かとても矛盾した印象を受ける。しかし、本書を読み進めれば、なぜ「うつ」な人ほど強くなれるのかが、すんなりと納得できるだろう。名は体を表すという。本書のタイトルはうつの本質を的確に表現しているのだ。

 そもそも、うつになりやすいのは、どのような人だろうか。一般的には次のような性格の人が多いとされる。すなわち、まじめで誠実、責任感が強く、妥協せずにがんばり、真っ直ぐに生きようとする人であり、中には繊細な人も多い。

 では視点を改めて考えてみよう。世の中で「成功する」ためには、何が求められるか。成功するための条件とは、何ごとにもまじめに、責任感を持って取り組み、妥協せずに頑張り抜くことだ。おわかりだろうか、「成功する」人と「うつになる」人は、実は表裏一体の関係にあるといっていいことに。

 頑張る人ほど、うつになりやすいという。逆に考えれば、その人は、うつになるまで、頑張り抜く力を持っていることになる。まじめであるが故に、うつになる人がいる。つまり、その人は何ごとも決していい加減にはできない性格だということ。

 第二次世界大戦時にイギリス国民をまとめ上げ、ドイツとの戦いを勝利に導いた稀代の宰相ウィンストン・チャーチルも、若い頃うつに悩まされていた。しかしチャーチルは、うつとの戦いに勝つことで、うつになりやすい人がもっている強さを活かせるようになった。うつを克服したからこそチャーチルは、その類い稀なリーダーシップを存分に発揮できたのだ。

 自らのうつと戦い、勝った人は、自分の強みを存分に発揮できるようになる。自分の心との辛く苦しい戦いに比べれば、たいていの試練は苦にならなくなる。しかも、自分の心には言い訳できないことをわかっているから、どんなときにも言い訳などしない。これこそ理想のリーダー像ではないか。

 もちろん、うつとの戦いに勝つのは、決して簡単なことではない。しかし、うつに対する予備知識を持っていれば、その予兆や前兆を捉えることができ、激しいうつに至る前に抑えることも可能だ。本書によれば、うつを自分で見抜くセルフチェックポイントは、次の6点である。

・心の疲れが抜けない
・不安が長続きする
・何をしていても頭の中から問題が離れない
・自分を責める
・よく眠れない
・何かをやろうとしても体が動かない

 中でも気をつけたいのが心の疲れだ。疲れには体の疲れと心の疲れがある。体の疲れは「早く休みたい」「風呂に入ってぐっすり寝たい」など「~したい」という表現になる。ところが心の疲れは、見事なまでの後ろ向き感覚になる。例えば、「仕事したくない」「会社に行きたくない」「人と会いたくない」など「~たくない」系表現を使い出したら要注意である。

 さらに、心の中を「不安」が占め続けるようになったら、迷わず医師の診断を受けた方が良い。きちんと薬をのみ、休息を取ることだ。落ち着いてきたら、うつの克服を、自分を改善し、自分をさらなる高みに引き上げてくれる契機として捉えること。その戦い勝った暁には、明るい未来が開けていると考えること。これこそがうつを克服するためのもっとも良い治療薬になる。

 うつは、簡単に治すことはできない。しかし、うつを克服できれば、その先には成功のチャンスが待っている。考え方を変えることができれば、うつとの戦い方も変わってくるのではないだろうか。