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竹林篤実のうつ病ブックレビュー
あなたの身近な人が「新型うつ」かなと思ったとき読む本

 「新型うつ病」が新たな問題として注目を集めている。とはいえ、その実態は今のところよくわかっていない。ただ1つはっきりしているのは、新型が従来型うつ病とは明らかに異なっていること。

 例えば、治療法についてなら、従来型うつ病は投薬や休息が有効だ。ところが新型うつ病の場合は薬があまり効かない。周りに求められる対応にしても、従来型では患者に対するいたわりが重視されたが、新型の場合はいたわるよりも積極的に励ますべきだと言われている。

 何より新型の厄介な点は、患者の多くがわがままで、何ごとも人のせいにしがちな点だ。しかも「新型うつ病」は正式な病名ではなく、診断基準もまだ明確にはなっていない。ただ次の9つの特徴が見られるという。

1)20~30代の若年層に比較的多い
2)本人が「うつ病である」ということを自覚し、自ら受診する
3)元気にすごせる時間がある
4)衝動的な自殺願望がある
5)規則や納期などに強いストレスを感じる
6)うまくいかないと、他者を強く非難する他責傾向がある
7)やるべきことに対する回避傾向がある
8)投薬治療や休養であまり効果が出ず、慢性化することが多い
9)自分を第一優先に考え、行動する

 もちろん、このすべてが当てはまるというわけではなく、この中のいくつかを併せ持つ場合が新型うつ病と呼ばれるようだ。

 非常に対処が難しい新型うつ病に、身近な人がなってしまったときにどう対応すればいいのか。本書によれば、新型うつ病の治療を進める上でのカギは、患者の周りにいる人とのコミュニケーションにあるという。

 本書がまず指摘するのは、新型うつ病に対しても、従来型に対するときと同様「がんばれ」は禁句だと言うこと。そして、身近な相手が新型うつ病にかかってしまったのだから、周りも接し方を変えることが大切だ。すなわちコミュニケーション・スタイルを変えることである。

 新型うつの人と話すときに意識すべきは、「事実志向コミュニケーション」と「感情優位コミュニケーション」だと本書は説く。

 事実志向コミュニケーションとは、冷静に、事実に基づいて物事を判断し、感情に左右されずに話をすること。多角的に物事を観察し、先入観や偏見を持たずに相手と向き合うよう心がける。

 感情優位コミュニケーションとは、天真爛漫に無邪気な心で人に接するときの言動のこと。こうした話し方をすることで、相手に対して明るく屈託のない印象を与える。気分が沈みがちな相手に感情豊に接することで、相手の心が刺激される。

 では、このようなコミュニケーション・スタイルを、新型うつ病の相手に対して具体的にどう使えばいいのか。実例に基づくケーススタディが本書では紹介されおり、これが参考になる。

 もとより新型うつ病については、未だに病気の定義自体が明確にはなっていない。当然、その治療法についても諸説がある。コミュニケーションを変えるだけで必ず完治するとは言い切れないだろう。しかし、治療法が定まっていないのなら、まず接し方を変えてみること。試してみる価値はありそうだ。