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竹林篤実のうつ病ブックレビュー
なぜ、ヒトは「うつ」になるのか

 そもそも「うつ病」とは何か? その本質をめぐる一つの考え方を教えてくれるのが本書だ。本書では、まずうつ病を測る指標として心のエネルギーに注目する。その上で、うつ病を心の骨折になぞらえて説明してくれる。この比喩がわかりやすい。

 本書によれば、うつ病が起こる原因は、心のエネルギーが一定レベル以下に減ってしまうことにある。仕事上のトラブルや子育ての悩み、老後の心配など人は誰でも、多かれ少なかれ何らかの問題を抱えて生きている。けれども心にエネルギーが満ちている普通の状態なら、こうした問題が一気に意識の表面に出てくることはない。

 もちろん、「仕事がうまくいかないなあ」とか「反抗期の息子とどうやって話せばいいか」といった個々の悩みはあるだろう。けれども、それらはたいてい散発的にしか出てこないはずだ。ところが、心のエネルギーが下がってくるとどうなるか。

 うつ病に陥りやすくなるのだ。心のエネルギーレベルが低下すると、それまで水面下に隠されていた岩が頭を出すように、さまざまな問題が同時多発的に表面化する。その結果、脳は巨大なストレスを受ける。

 強いストレスが続いて耐えることができなければ、心が折れてしまうのだ。心が折れるプロセスは、腕を無理やりひねられたときと似ている。強い力をかけて腕をねじられると、最初は痛みを感じる。さらに力をかけ続けられると、耐えきれなくなった腕の骨はポキンと折れてしまうだろう。

 脳に過度なストレスがかかり、心が折れてしまった状態が、うつ病である。では、折れた心をどうやって元通りにするのか。

 治療法も腕を骨折したときと同じである。腕が折れれば、レントゲンを撮って診察し、必要な治療を施すだろう。ギブスで患部を固定して安静を保ち、骨がくっつくのを待つはずだ。

 うつ病の治療ではレントゲンを撮る代わりに医者が患者の話をじっくり聞く。心を折ったストレスや、心に潜む問題を突き止める。ギブスに相当するのが薬である。きちんと薬を飲んで、十分な休息を取り、折れた心が治るのを待つ。そのためにかかる時間が3ヵ月だ。だから最初に「3ヵ月休め」と明言してくれる医者であることを、本書は優れたうつ病医の条件として挙げている。

 医者選びの基準については、他にも重要なポイントがある。それは治療プランに戦略性があるかどうか。はじめに治療方針と計画を決めた上で、定期的な診断を行う。状況により計画を微調整しながら、ゴールすなわち回復を目指す。この一連の流れをわかりやすく説明してくれる医者なら、安心して任せられるだろう。

 信頼できる医師の指導に基づき、ストレスの原因を取り除いた上で、まず十分な休養を取る。薬をきちんと服用し、段階的なプログラムを踏んだ上で職場復帰を目指す。このような戦略的な治療を行えば、うつ病からの復帰は、決して難しいものではないことを、本書は教えてくれる。