口の中の細菌が肺炎の原因になる――というと、驚く人も多いかもしれません。実は、最近になって、65歳以上の高齢者の死因の6割以上を占める肺炎で、歯周病菌が大きな役割を果たしていることが分かってきたのです。
高齢者が起こす肺炎のうち、主な原因となっているのが、口の中の細菌を含んだ唾液などが気道に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」です。気管支や肺に入った細菌がそこで増えて炎症を起こし、肺炎になります。
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歯周病の原因は、歯とハグキの境目に増殖する細菌のかたまりです。細菌が作る毒素によってハグキに炎症が起こり、出血や腫れなどがみられます。歯周病があると出血や排膿などのため、口の中に存在するさまざまな細菌が繁殖しやすい環境になります。この結果、食べ物を飲み込む際に、むせたりして大量の細菌が気道に入ってしまう可能性が高くなります。このため、歯周病は誤嚥による肺炎を起こす大きな原因ではないかと考えられているのです。
われわれも、食事の際にむせたりして、飲み物が気道に入ってしまうことがありますが、高齢者の場合は、のどの反射の衰えなどによって、“むせる”という動作が起こらず、周りの人が気づきにくいという問題を抱えています。誤嚥が起こることを前提に、口の中の細菌をいかに減らすか、という点にも気を配る必要があるのです。
実際、われわれは以前、全国11カ所の特別養護老人ホームの患者366人を対象に、歯みがきに加え、デンタルフロスによる清掃など、歯科衛生士らによる専門的な口腔ケアを行ったグループと、従来の歯みがきケアのみを行ったグループに分けて、肺炎の発症率を調べてみました。その結果、従来のケアでは19%だった肺炎の発症率は、口腔ケアの実施によって、11%まで下げることができたのです。
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また、意外なことに、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(参考記事:喫煙男性に増える慢性閉塞性肺疾患)も歯周病と関連があることが明らかになりつつあります。
COPDは、タバコなどにより気管支が炎症を起こし、呼吸がしにくくなる病気で、喫煙歴の長い40歳代以上の男性に圧倒的に多くみられます。細気管支炎や肺気腫、慢性気管支炎などが含まれます。歯周病にかかっていると呼吸器感染症を起こしやすくなるため、COPDの症状も悪化させる可能性があると考えられています。
COPDは“タバコ病”と呼ばれるほど、喫煙習慣と深い関連がありますが、歯周病もタバコと深い関連があります。口の中よりも高温のタバコを吸うことでハグキの血流が停滞したり、ニコチンなどの有害物質によって、ハグキに炎症が起こります。細菌が増えやすい環境になると考えられるので、歯周病にも、COPDにも、さらに肺炎にもなりやすいと言えます。
口から肺へと細菌が移動することで、重い感染症を来すケースは非常に多いのです。逆に言えば、毎日、こまめなうがいや歯みがきを心がければ、かなり感染症を防ぐことができると言えます。毎日の自己管理が最も重要であることをしっかり認識して、積極的な口腔ケアを心がけましょう。ハグキが腫れている場合は、ハグキを指でマッサージすることも効果的です。

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