歯周病の妊婦は5倍も早産になりやすい!?

2005/11/03/

 「歯周病」といえば、口の中だけの病気と思いこんでいませんか。実は、近年、歯周病と全身の健康との関連が注目され、さまざまな病気が歯周病の影響を受けていることが明らかになってきています。

 妊娠している女性が歯周病にかかっている場合、早産になったり、低体重児を出産する可能性が高まるという研究もその一つです。米国をはじめとして、海外では1990年代前半から盛んに研究が進んでいます。

 日本では、私たちのグループが、1990年代からこの研究に取り組んでいます。昨年11月に私たちが発表した日本における疫学調査では、歯周病の妊婦は、そうでない妊婦に比べ、約5倍も早産になりやすかったという驚くべき結果が出ています。

「サイトカイン」の上昇を出産の合図と誤解?

 この研究は妊婦114人を対象にしたもので、歯茎の状態の悪い妊婦28人と、そうでない妊婦86人の出産の状態について比較しました。これらの妊婦のうち、陣痛や子宮筋の収縮が出産予定より早く始まった切迫早産の人は42人いました。

 結果的に、妊娠37週未満での早産となったのは21人でした。21人のうち、歯茎の状態が悪く早産だった人は13人で、歯茎の状態の悪い妊婦全体に占める割合は46.4%と、約半数にも上りました。

 一方、21人のうち歯茎の状態が悪くなかった早産妊婦は8人で、早産になる可能性は9.3%にとどまっていました。歯茎の状態の悪い妊婦は、早産を来す危険性がそうでない妊婦に比べ、約5倍も高かったのです。

 海外のデータでも、歯周病が進んだ妊婦では早産および低体重児出産の危険性が7倍高まるといった報告や、歯周病が進んだ妊婦ほど早産の頻度が高かったという報告などがあります。

 なぜ、歯周病にかかっていると、早産になりやすいのでしょうか。私は、体内の炎症反応に関与している生理活性物質の「サイトカイン」がカギを握っていると考えています。

 歯周病菌に感染すると、体内の免疫をつかさどる細胞から、サイトカインが過剰に出され、歯の組織に炎症が起こることが知られています。しかし、最近、歯周病にかかっている人は、歯の組織だけではなく、血液中のサイトカイン濃度も上昇していることが明らかになってきました。私たちの研究でも、歯周病の妊婦は、そうでない妊婦に比べ、血中のサイトカインの濃度が5〜6倍高いという結果が出ています。

歯周病治療を行うと早産や低体重児出産が減少の報告も

 妊娠している場合、サイトカイン濃度の上昇は、炎症以外に「出産開始の合図」でもあります。このため、歯周病によるサイトカイン濃度の上昇を、体が出産の準備ができた合図と判断してしまい、子宮筋の収縮などが起こって切迫早産に至るのではないかと推測されます。

 私たちが歯周病の妊婦から早産で生まれた子供の発育状態を調べたところ、妊娠期間に合った正常な発育をしているケースが多いという印象を持ちました。つまり、胎児側の発育不全といった問題ではなく、母体側の問題によって早く生まれてしまった、と判断できそうです。

 こうした現状を改善しようと、私たちは、切迫早産の妊婦に対し、歯ブラシの指導などを行って、早産が減少するかどうかを現在検証しています。既に、チリでは、400人の妊婦を対象にした研究で、歯周病治療を行うと、早産や低体重児出産の割合が約5分の1に減少したという報告があります。

 歯周病治療によって、どれだけ早産のリスクを減らせるかどうかは、今後の研究次第です。しかし、現段階でも、歯の状態が全身の健康と密接にかかわっていることは確かです。妊娠が分かったら、まず歯科を受診し、歯周病などの有無をチェックするようにしてください。

全身の健康も考えて、歯周病を予防しよう
 「歯周病」とは、細菌(歯周病菌)の感染によって、歯ぐきなどの組織に炎症が起きる病気です。最近、歯周病は口の中の問題だけではなく、さまざまな全身性の病気とも深くかかわっていることが明らかになってきました。
 歯周病菌がつくる毒素や炎症を引き起こす物質は、歯周病の病巣から血液中に入り、全身に影響を及ぼす可能性があります。実際これまでにも、口の中の慢性的な炎症や歯周病菌と、糖尿病や心筋梗塞、肺炎、低体重児出産――などとの関連性が報告されています。
 歯周病についての正しい知識を持ち、歯周病菌が媒介となって起こる体へのさまざまな影響を考えて、口と歯のケアに努めることは、重要です。
 本シリーズでは5回にわたって、歯周病菌が全身の健康に及ぼす影響とその対策についてご紹介します。

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