

天然ブリの季節になりました。定番の照焼きやお刺身もおいしいのですが、最近はブリのしゃぶしゃぶといったおしゃれな食べ方まで登場しています。ところで、ブリの産地をと言って思い出すのは、どこでしょうか。富山県氷見市と答える方がきっと多いのではないかと思います。ですが、実は私のふるさと神奈川県小田原市もブリ漁で有名な歴史があります。
「小田原のブリ?聞いたことないな」。小田原出身の人からもこんな反応が返ってきます。でも、たしかに小田原の港にはブリが大漁に水揚げた時代がありました。そして、1960年代半ばから次第に減少し、現在はほとんど水揚げされなくなってしまったのも事実です。
小田原の港が面する相模湾で、定置網漁によって水揚げされたブリの年間漁獲尾数の推移を見てみましょう。1954年に57万5381尾という大漁を記録していますが、1966年以降10万尾を越えることはなくなりました。2000年以降は悲しくなるほどの数字で、一番多い年で昨年2011年の6000尾、少ない年は2005年のわずか18尾しかありません。
なぜ、50年で60万尾近かったブリがここまで激減してしまったのでしょうか。



定置網漁について研究を続けている石戸谷博範さん(神奈川県水産技術センター相模湾試験場専門研究員)に話を聞きました。
考えられる原因は様々。まず、養殖のために1960年代ころ稚魚をとりすぎてしまったことや(現在は改善されているようです)、80年代から魚群を網で囲って獲るまき網漁の影響が考えられるといいます。固定した網を通った魚だけをとる定置網にくらべると、魚をとりすぎる可能性があると指摘されています。
次に、小田原の海が明るく、うるさくなってしまったことも一因と考えられています。ブリはデリケートで、騒がしい海には寄りつきません。小田原は1972年に海沿いに西湘バイパスが開通し、24時間電灯の光が海を煌々(こうこう)と照らすようになりました。
そんな原因の中でも、私が驚いたのは“森の機能低下”というものでした。
ブリ漁と森・・・。一見つながらないこの2つが、実は深い関係にあります。
森には土砂崩れを防ぐなどの様々な機能がありますが、保水によって雨水を濾過しながら大地の栄養分とともに川、海に水を届けるという役割を果たしています。森の保水力が低下すると森に水が浸透しなくなるので、水が森の養分を含まずに海に流れてしまいます。森のミネラル分が少ない海では植物・動物プランクトンが育ちにくく、プランクトンを食べて育つ小魚も減り、結果として、小魚を食べるブリもこなくなるのです。