スペシャルリポート

子育ての現実は変わっていない!?

―― 最近はイクメンも増えている印象がありますし、子どもがいたら定時に帰れる、という職場も増えています。以前はほふく前進状態で頑張らないとワーキングマザーができなかったような時代もありましたが、今は制度も整ったし、偏見も減ったという実感はあります。ほろいわさんは、子育てをめぐる現実は、ラクになっていると思いますか?

ほろいわ:思いません! きっぱり(笑)。物理的にはラクになっているけど、心情的には大変になっている感じがしますね。スタンダードがない大変さ。これをやっておけばいいよね、という確認が得にくい生きにくさ。

 あと、子育ての要求水準も高くなっている気がします。この育て方でいいのか、と不安になったり、だめなことはひとつもしていないのに、自分のやり方がいけなかった? と自分を責めてしまう。まわりに「それでいいよ」「大丈夫だよ」と言ってくれる人が不足しているのでは、とも思います。

子育てと自分の母親との関係

―― 女性にとって、子育ては自分の母親と深く関わる機会だと思います。最近のおばあちゃんは若くて元気ですから、子育てにも深く介入してきて、いろいろ言ってくれる存在なのでは?

ほろいわ:今の子育て世代の親って、パワフルな人が多い世代。いわゆる団塊の世代よりちょっとあとの人たちですね。だから、「大丈夫なんだよ」というよりも、もっとちゃんとやらなくちゃ、もっと頑張らなくちゃと、批判的な言葉を投げかける人が多いんです。常にクリティカルなのね。

―― なるほど。「本当にこのままでいいのか」という自問自答の源は、もしかしたら母親の世代にあるのかもしれないですよね。

 最近、女性の子育てと自分の母親との関係にとても興味があります。一卵性母子といった仲良し母娘が増えていますが、この延長で結婚して子どもを持って、ずっと母親からの支配から抜け出せない人もいる。離婚して実家に戻って、母親との関係がうまくいかずに心を病む人もいます。これから子どもを持つ世代にとって、母親との関係はどう考えておけばいいと思われますか。

ほろいわ:最近は、パワーがあって、娘をコントロールする力もある、「おばあちゃんになれないママ」が増えています。頑張ってやってきた母親世代にとって、子育てで小さくまとまってしまう娘はふがいなくて仕方ない。一方、頑張りたかったけど頑張れなかった人たちは、リベンジをかけて娘を成功させようと、精一杯のサポートをしたりもします。

 いずれにしても、こうした母親からのプレッシャー、リベンジ感、怨念といったものが「頑張れコール」となって娘にのしかかるケースは多いんですよね。

 こうした強い母親は、罪悪感をコントロールするのがうまいんです。あなたはそのままでいいの? それだけで満足するの? どうしてもっとちゃんとやらないの? なぜそんなことを言うの?と。女性は子どものころから、こうした「罪悪感」で人の気持ちをコントロールすることに長けてるんですよ。

―― うわあ。すっごくよくわかります。

罪悪感の正体は?

―― ほろいわさんの「感じない子ども こころを扱えない大人」(集英社)の中にもありましたよね。子どもをしかるときに「なぜそんなことをするの?」「どうして?」という言葉の投げかけをしないように、と。「なぜ?」と詰め寄るのは、理由を聞き出すことよりも、罪悪感を引き出して言葉を失わせる働きがあるように思いますね。

ほろいわ:そうした罪悪感をすぐ感じ取るセンサーみたいなものも、女性の心の中にあるものだと思うんですよね。

―― 職場復帰を控えたお母さんたちから頻繁に聞く言葉が「罪悪感」なんです。小さい子を預けてまで働くなんて。家事がきちんとできないなんて、って。なーんにも悪いことなんてしていないのに、そんな「罪悪感」と戦っている女性たちが実に多いんだな、と。

ほろいわ:罪悪感という雲に覆われちゃっているような感じですね。とにかく、まず自分でできることは「なんで?」という言葉の投げかけをしないことと、普段から「ごめんなさい」という代わりに、「ありがとう」というくせをつけることです。そして、母親と自分は別の人間なんだということに、自覚的になることです。無理して母親を切り捨てる必要なんてないけど、母親との間に上手に線引きをすることも大事なんだと思います。

 自分が「苦しい」「つらい」という気持ちになっていることには、早めに気づくことも大事。実感レベルでの自分の感情を大事にしてほしい。自分の内側でおきていることにきちんと目を向け、悩みをつぶやける身近な人を持つことですね。こういう時は、自分の母親よりも、ななめの関係にある人がとても助けになります。職場の先輩や、自分よりちょっと先をいく「お姉さん」的存在の人が持てるととてもいいんです。たくさんSOSを出して相談してほしいですね。

―― 子育てでは、ちょっと先輩の頼りになる人がいると、気持ちが楽になるし、「なんだ、頑張りすぎなくたって、こんな感じでどうにかなるんだな」って思うことができる気がします。頑張り過ぎて閉じてしまいがちな人には、大切な存在になりますね。

 頑張りすぎずに、SOSを出してまわりとつながっていくことの大切さを再認識できた気がします。今日は本当にありがとうございました!

ほろいわななさんが考えるラクになる

今すぐできるラクになる できばえより、「したこと」をどんどんほめる

自分をほめる。そのコツは「今できて、明日もできると思えることをすべてほめられることだ」ということ。たとえば「朝ご飯を作った」。これは十分、自分をほめてあげるに値する。「おいしいご飯を作る」という目標を自分に課してしまうと、「おいしい」という部分が抽象的な価値観と関わることとなり、手放しでほめにくくなる。こうしたできばえを表す言葉をなるべく使わず、「行動」にフォーカスして自分のやっていることを振り返ってみよう。

朝、笑顔で起きられずに子どもについプリプリしてしまったとしても、「ちゃんと朝起きた」ことに変わりはない。ちゃんと起きたことに、自分で◯をつけてあげる。こうして、自分の中のOKな部分を取り上げていくこと。当たり前のことを当たり前にできること、しかもそれを毎日やっていること。それだけでも十分ほめるに値することで、自分はちゃんとそれをやっているのだと自信を持って、OKを出せる事柄をたくさん書き出してみて。

10年後がラクになるために 備えようとしすぎない

現代は、まず目標から落とし込んで、今の行動を決める方法が推奨されている傾向がある。でも、目標を決めても時代は変わるし、自分もどんどん変わっていく。目標があったほうが動きやすいのは確かだけど、目標を見直すことの大切さを忘れないで。そして、変わっても仕方ない、変わるものなんだと受け止めて、自分にOKを出しながら進んでいってほしい。

今は、目標を決める力よりも、「こんなことがしたい」「これがおもしろい」「こんな人に会いたい」といった自分の内側のセンサーを磨くことのほうが大事。そして、思い通りにならない想定外の動きがあっても、取り入れていく柔軟さを持つこと。

直線的に進むよりも、うろうろしておもしろい体験ができる場所を思いがけなくみつけながら歩いていくほうが、うまくいくように思う。

*対談を終えて

 誰をも包み込んでしまうやわらかほろいわさんの存在感と優しい声の中で、大切なことをたくさん教わったような気がします。物理的にはラクになっていても、心情的には逆に大変になっているのではないか、ということ。その中で、一人で抱え込んで頑張りすぎてしまう人が増えていることの指摘。

 大切なのは、リアルなコミュニケーションの中で、SOSを出して助けを求める力を持つこと。そして、自分をほめて、未来に備えていろいろなことを決めすぎないこと。

 みなさんの未来がラクになるヒントが、きっとひとつはみつかるのではないかと思います。私も、「今日できて明日もできること」をほめる視点を持って、今日を生きていきたいな、と思います。

 キャリアプランを早くに決めすぎないという話題については、日経ウーマンオンラインでも掲載します。

袰岩奈々
(ほろいわ・なな)

1959年生まれ。不登校生徒や家族の教育相談員を経て、東京・荻窪に「カウンセリングルーム プリメイラ」を開設。働く女性、学生、カップルのカウンセリングを行う。企業・教育関係者を対象とした研修も数多く実施。著書に『「NO!」を言うことから始めよう』(大和出版)、『感じない子ども こころを扱えない大人』(集英社)、監修書として『EQテスト』(ベストセラーズ)がある。

ももせ いづみ

生活コラムニスト。目からウロコの「快適家事術」を数多く提案。執筆、イラスト、講演など多方面で活躍。著書多数。ecomom本誌「ももせいづみのプチエコな日々」を連載中
URL: http://www.izoomi-m.com/
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>> 「はた楽インタビュー」バックナンバー
《はた楽インタビュー1》 楽になるための家族観、はたらき方とは