
「そういえば、住宅街で洗濯物が外に干されている光景を目にしなかった」。アメリカを旅したことのある人なら、一度はこんなことを感じたかもしれません。そんなアメリカで今注目を浴びているのが、「太陽に干そう運動」です。こちらは、ニューヨークタイムズ誌やCBS(テレビ局)ニュースなど国内外を問わず、50以上のメディアで取り上げられ、今、話題になっています。
「経済危機、環境汚染危機、電力危機。これらが重なり合うことで、ようやくメディアが注目し、話題を集めているのがこの運動です」と話すのは、民間の非営利団体「プロジェクト・ランドリー・リスト」の常務取締役、アレクサンダー・リーさん。
1995年に創設された同団体では、独自の調査によって、乾燥機が家庭内の電力消費量の10〜15%を占めるとし、エネルギー節約のために、簡単に効果的にできる外干しと冷水を使った洗濯を奨励することを目的とする教育機関としての役割を果たしています。
そして、1996年に「太陽に干そう運動」を開始しました。この運動では、原子力発電が増えることを懸念し、節電を促すために、洗濯物を外で干すメリットの紹介などを、活動家やメディア、国会議員に提供しています。
それにしても、アメリカには、なぜ、洗濯物を外に干す習慣がないのでしょうか?「建物が魅力的に見えない」「不動産の価値が下がる」。こういった美観や不動産価値の下落を理由に、地方自治体では洗濯物の外干しを禁止する法律があります。
また、50歳以上が入居の対象になるリタイアメント・コミュニティやコンドミニアム協会、ゲーテッドコミュニティ (車や歩行者の流入を厳格に制限し、防犯性を向上させた住宅地)などでは、入居時に「パティオやバルコニー、窓は常に清潔に、美しく保つように」「水着、洋服などを窓やバルコニーに干さないように」などと記載された契約書に同意が求められるため、規制がかかります。
この他、規約にはありませんが、「低所得層に見られる」「乾燥機があるのに、外に干す必要はない」という声が追い討ちをかけます。
こういった法律や規制を廃止するために、最近では法律を廃止する法律が施行されています。この法律が1970年にいち早く施行されたのが、フロリダ州。2009年には、コロラド州、ハワイ州、メーン州、バーモント州でも法律として認められました。また、要請が可決されなかったメリーランド州では、追随する動きが見られます。その他、カリフォルニア州など、可決はされませんでしたが要請した州もあるようです。
しかし、法律として認められても、対象は地方自治体やコンドミニアム協会などの20%。リーさんは「我々の運動の対象は、それ以外の80%の住民です」と話します。
現在、78%の人々が乾燥機を利用しているアメリカ。それでは、外に干すことに規制がない80%の住民が洗濯物を外に干さない理由には、一体どのようなことが挙げられるのでしょうか。「共働きで、太陽が出ている時間帯に帰宅しない」「洗濯物を干すのに時間がかかるのがいや」「忙しすぎて洗濯物を干す時間がない」「外干しが社会の風潮にない」「電化製品を使用することがアメリカ人のやり方」など、理由はさまざまです。
これらの声に反して、外干しを奨励する人たちからはこのような声があがります。
「環境破壊や原発増強には断固反対」「節約の一環になる」「年間約1万5000件の乾燥機による火災を阻止できる」「火災による死亡、ケガ、家屋損傷を阻止できる」「衣類が長持ちする」「外干しによる衣類の香りが好き」など。
「実際、洗濯物が外に干されることで不動産の価値が下がるとは証明されていません。洗濯物が干されている光景の方が人が住んでいることが伝わって、アットホームに見えますよ」とリーさん。
残念ながら、法律が施行されたからといって、外干し人口が増加したわけではありません。1970年に法律が施行され、外干しが許されているはずのフロリダでも、「洗濯物を外干ししたら家主に注意された」という声もあるほど。
不動産価値が下がるという意識が強い家主には、まだ認識が低く、法律になったからといって、住民は家主に対して訴訟を起こさない限り法律を施行することができないという状況です。もちろん、家主といざこざを起こしたくないとか、訴訟にかかる費用や労力を考えると、泣き寝入りもしばしばです。
「それでも、外干しが話題になることで、人々が認識するという働きになっていることは確かです」とリーさん。今後も外干しの奨励のために、日夜奮闘するリーさん。アメリカで洗濯物が当然のように外に干される日が来るかもしれません。
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Alexander Lee(アレクサンダー・リー) 「乾燥機の使用をやめることが、代替電力となる原子力発電所の建設を食い止めることにつながります」。当時、大学院生だったリーさんが聞いたある教授の話に感銘を受け、1995年に「プロジェクト・ランドリー・リスト」を創設。 |