
アメリカでは、80%の家庭が持っているというスロークッカー。最初に登場したのは、1971年。当時は、「クロック ポット」という商品名で売り出されました。特に冬は、シチューやスープなど、時間のかかる料理が、スイッチひとつでできるとあって、大流行。キッチンには欠かせないアイテムになりました。
その後、電子レンジの登場などで、スロークッカーは、キッチンの奥で埃をかぶるように。それが、エコ志向、バージョンアップなどで見直され、近年、再びブームに火がついたのです。スロークッカー専用の料理本も、新たに何冊も出版されています。さらに、去年からの不況で、安いお肉でも柔らかく料理できることや、省エネ対策にもなることで、人気急増。08~09年の冬には、メーカーによっては、前年に比べ、15~60%も売り上げが伸びたそうです。
スロークッカーは、その名の通り、ゆっくり料理するのがポイント。ただ、8~10時間も調理するとなると、電気代が高くつきそうなイメージがあります。ところが、実際には、100ワットの白熱電球1個をつけているのと同じくらいしか、電気を使わないとのこと。つまり、週に一度、8時間ずつ使ったとしても、1ヶ月にアメリカでは、20セント(約20円)しか、かからないそうです。オーブンやコンロを使うより、省エネにつながることが、大きなメリットです。
さらに、スロークッカーの魅力は、安い肉でも、美味しい肉に変身すること。安い肉ほど、長時間煮ることで、トロトロになるとか。他にも、低価格の豆類の調理にも向いているとあって、この不況にぴったりの調理器具と人気を呼んでいます。
では、安い肉が、どれくらい美味しく、簡単に食べられるのか。実際に、友達から、スロークッカーを借りて、試してみました。
材料:牛肉 1.3キロ (ステーキ肉の半額以下の安い肉)
オニオンスープの粉 1袋
マッシュルーム濃縮スープ 1缶
作り方:牛肉を入れて、スープを薄めず流し込み、粉をふりかけて、低温で8時間調理。
結果:牛肉は、フォークを刺した途端、ふわりとする柔らかさに。トロトロ、ホロホロ、フワフワという感じ。味は、いかにもアメリカのグレービーソースがかかった牛肉の味で、アメリカ人の夫は「母親の作った料理みたいだ」と懐かしそうでした。少ないエネルギーで、ここまで肉が柔らかくなるのには、驚きです。
長く煮込む、カレーやおでんにも向いた電気鍋といえそうです。また、何より、「夕食のメインメニューはもう出来上がった」という気分で、一日過ごせることが、精神的に楽でした。夕食の準備時間が短縮できることで、働く母親だけでなく、専業主婦にとっても、大きな助けになりそうです。
ただ、スロークッカーの難点は、焦げ目がつかないこと。そこで、焦げ目をつけるには、肉をいったん、別のフライパンを使って焼き、そのあと、スロークッカーに移し変える必要があります。ところが、これを、スロークッカーの鍋ひとつだけでできるグレードアップ版が登場!内側の鍋を、まず、コンロの上に載せて、焼き目をつけ、そのままスロークッカーに戻せるというものです。しかも、調理後は、自動的に、保温に切り替わるデジタルタイマーつき。
それを愛用しているアメリカ人に、腕前を見せて頂きました。フルタイムで仕事をする、一児の母親リサ・ヘアーさん。彼女が、好んで料理するのは、簡単で美味しいBBQポーク(Pulled Pork)。これは、本来、豚肉の塊を、燻製や炭火、またはオーブンで6~8時間ほど焼き、細かく裂いて、ソースをからめるという、手間と時間のかかる一品です。レストランでは、それをパンに挟んで、サンドイッチとして出されています。
これが、スロークッカーを使うと簡単に。リサさんが見つけた地元紙に掲載されたレシピによると、作り方は以下の通り。
(作り方)
1:豚肉の塊に、スパイスをかけて、冷蔵庫で一晩寝かせる。
2:翌朝、肉に焦げ目をつけたあと、酢と砂糖、残りのスパイスを足して、低温で10時間調理。
3:肉を出して、細かくほぐし、肉汁、チリソースを混ぜれば出来上がり。
(この間、使う鍋は、スロークッカーのみ。後片付けも簡単です。)
肉の全面に焦げ目をつけるのにかかる時間は15分。「でも、慌しい出勤前は、そのわずかな時間も、省きたい」と、リサさんは、日曜日に焦げ目をつけ、いったん冷蔵庫に。そして、月曜日の朝、スロークッカーに入れて、10時間煮込むという方法をとっているそうです。去年、クリスマスギフトに、スロークッカーを贈ったご主人も、「仕事から帰って家についた途端、美味しいお肉の匂いがして、嬉しい!」と、絶賛。リサさんも、「スロークッカーは、シチューなど、冬の調理に便利だけど、夏も、オーブンの熱で部屋が暑くならない利点があり、重宝しています。」と、毎週、愛用とのこと。
とにかく、手軽なスロークッカー。毎日の食事は勿論、パーティーなどでも、大活躍。調理したものを、スロークッカーごと、パーティーに持参する姿も珍しくありません。毎日使うという人もいるほど人気があるのもうなずけます。景気回復に時間がかかる中、こうした経済的キッチンアイテムが活躍する場は、益々増えそうです。