スペシャルリポート

ハーブのルーツはギリシャに

古代からハーブを研究してきたギリシャ

 ギリシャはハーブのルーツの国。もともとハーブとは「ヨーロッパで薬効があったり、料理のスパイスになる植物」を指しますが、古代ギリシャ医学がベースです。医学の父と呼ばれる古代ギリシャの医師・ヒポクラテスが言いのこした「ヒポクラテスの誓い」は、未だにヨーロッパのみならず日本や北米の医大の式典などで誓われていますが、彼はハーブの効用について多く書き記しています。よってハーブの学名はギリシャ語も多いのです。

 そしてギリシャは今日においてもハーブの宝庫です。さんさんと降り注ぐ地中海性気候の陽射しを浴びて育つハーブは、4000種とも5000種とも言われ、クレタ島の大学をはじめ各地で研究されています。ハーブ専門店も充実。私がよく足を運ぶハーブ専門店は、驚くほど多くの種類のハーブティーやスパイスが常備されています。スタッフもハーブの効用について十分な知識があり、症状を言うと最も適したハーブを紹介してくれます。

 店内は天井から吊り下げられて干されている様々なハーブ、壁一面の棚に分別されているハーブティー、ボトルに入った色とりどりのスパイスなど、まるで物語の中の魔女の館(?)のようで、長時間眺めていても飽きることはありません。いつも多くのお客が訪れにぎわいを見せており、年齢や性別を問わず愛用者が多いことがよくわかります。

家庭で常備される「山のお茶」

 ギリシャの家庭に常備されているハーブティーとして最も有名なのは「山のお茶」(チャイ トゥ ヴヌー)でしょう。高い岩山に自生するハーブのお茶で、紀元前から風邪、胃腸病、貧血改善、呼吸器疾患などに効くとして、愛飲されてきた薬さながらのお茶。ギリシャの家庭では具合が悪いとなったら、どんな症状でもまず「山のお茶」を勧められます。

 風邪をひいたら寝る前に飲むと、特に喉の痛みなどは翌朝改善されるといいます。味はハーブティーとしては飲み易い方ですし、名産のハチミツを加えて飲んでもおいしいです。

 胃痛持ちの人にもおススメ。私自身、アテネに来たばかりの頃、謎の胃痛に悩まされました。いま思うとやはり異文化の精神的ストレスだったと思うのですが、このお茶、ストレス性胃炎にもかなり効き目があり、私には病院で処方された胃薬より効き目があったように思います。特に朝、胃の調子が悪く、朝食を食べた後に胃がもたれたり、痛みを感じたりしたのですが、そういった症状の際に飲むと、不快感や痛みがウソのように消えるので本当に助かりました。

ギリシャ固有の「ディクタモ」

 他にもギリシャならではのハーブと言えば、クレタ島特有のハーブ「ディクタモ」。この名前はクレタ島のディクティ山に由来します。ディクタモは葉がとても肉厚で、美しい紫色の花を咲かせ、夏の終わりに摘み取られます。ヒポクラテスはディクタモについて、リウマチや月経不順、胃腸病、頭痛、滋養強壮などに効くと伝えています。

 ミノア文明においては最も優れた薬効成分を持つハーブとして扱われ、大半の女性がディクタモのお茶を常飲していました。日頃からこのお茶を飲んでいると安産になると言われていたからです。古代ギリシャやエジプトでも珍重され、今でもハーブティーとしてよく飲まれます。近年はクレタ島のエバンロ村で栽培されているものが有名です。

 「ルイーザ」も“美人をつくるハーブティー”として人気。デトックス効果があるので、ダイエットに効果的とされています。肌のひきしめ効果もあるので、常飲するギリシャ人女性も多いです。

 これらのハーブティーは外国人にもファンが多く、ハーブ店、土産物店、品種によってはスーパーマーケットなどでも売っています。値段も1束2~3ユーロくらいとお手ごろなので、気軽に自然の恵みのパワーを試すことができます。

オリーブオイルとハーブでけがを治療

 ギリシャは世界中でオリーブオイルの消費国ナンバーワンだけあって、料理だけでなく治療にも使用します。数十年前ごろまでは、温めたオイルを脱脂綿に染み込ませて耳に詰め、中耳炎の治療に使ったりもしたそうです。

 ハーブをオリーブオイルに漬け込んだ治療薬もあります。様々な痛み、炎症に効くハーブオイル「ヴァルサモ・ラディ」、別名「ラディ・イペリクー」(ラディとはギリシャ語でオリーブオイルの意)は私も愛用しています。漬け込むハーブは「イぺリコン ト ディアトゥリトン」(学名イペリクム ペルフォラトゥン 和名セイヨウオトギリソウ)といい、ヨーロッパ原産でギリシャの野山に自生している植物です。このハーブから抽出した成分「イペルフォリン」は病院や市販の鎮痛剤、消炎剤にも使用されています。

 このハーブをオリーブオイルに漬けて2、3週間、日光の下に置きます。すると有効成分が染み出て、オイルの色が黄色から鮮やかな赤色に変わります。 打ち身、ねんざ、切り傷、虫さされ、火傷、リウマチ痛、筋肉のつり、腰痛、膝痛、鬱、不眠などに効用があると言われるハーブオイル。古代から治療に使われ、テルモピュライの戦いを描いた映画「300」で有名になったレオニダス王率いるスパルタの戦士たちも常用していたという記述が残されています。けがにはもちろん、戦いの前に体に塗布し皮膚を保護すると共に、筋肉をよりたくましく見せて威嚇する効果もあったとか。

 使用方法は手のひらに数滴たらして患部にマッサージするように塗り込みます。塗る際、患部が少し熱くなるような感覚があります。関節痛にも効くとされ、アスリートにも愛用者が多くいます。

 不眠などにはお茶に数滴たらして飲むという利用法もあるとか。薬局や有機食品店などで売っています。いろいろなメーカーのものがあり、大きなボトルのものもありますが、私はオーガニックの50~60mlくらいのサイズのボトルを購入しています。値段は5、6ユーロ。

 ギリシャは通りを見渡すと薬局が5軒というくらい薬局の多い国ですが、薬局には化学薬品だけでなく、自然派の薬品もたくさん置いてあります。家庭でも、自然のハーブから作られたお茶やオイル、クリームなどが愛用されており、最近は若い世代にもこのような習慣が見直されてきているように思います。

※ハーブ全般に言えることですが、薬効成分が強いため、妊娠中や授乳期の女性は使用を控えた方がいいものもあります。また他の薬品との併用は副作用をひきおこす場合もあるので、医療機関に相談してください。効用や効能には個人差がありますので、使用の際はご自身の責任でお願いします。


(2009年10月2日)