スペシャルリポート

オーストラリアのパーマカルチャー

シェア精神と創意工夫に満ちた家

 パーマカルチャー講師でありエコイラストレーターでもあるセシリアさんは、交通の便のよいメルボルン近郊の一軒家を借りて、国際色豊かなシェアメイト達と共同生活をしています。こちらでは、より安く快適な生活環境を求めて学生や独身者などが借家をシェアすることが一般的です。一人暮らしに比べ、コストもエネルギー消費もずっと経済的です。

 セシリアさん宅の共有リビングルームは、ガーデンテーブルが据えられた中庭へとつながっており、愛猫のガラガーが自由に往来しています。「この猫ちゃんも中庭も、本当のオーナーは裏向かいのお宅なの」と笑うセシリアさん。ご近所さんとは文字通り垣根のない間柄です。

 2階には、中庭を見下ろせるセシリアさんのお部屋とバルコニーがあります。

 バルコニーのフェンスに巻き付いたパッションフルーツが、ハーブや果物を植えた鉢に、適度な日陰を与える役割を果たしています。金魚がゆうゆうと泳ぐ大きな水鉢は、観賞用だけでなく、バルコニーの気温と湿度の調整役となります。鉢植えの植物にとっては、水分補給源でもあります。パーマカルチャーの概念を取り入れて設計されたバルコニーでは、小さなエコシステムがうまく機能しているのです。

 バルコニーには、リラックスした時間を楽しむための小さなテーブルとイスも置かれています。
「頻繁に利用したくなるような居心地の良いスペースにするのがコツよ。ここにいる時間が長いほど小さな変化に気づきやすくなるから」。セシリアさんはふと気がついたように金魚鉢から水をすくって植木鉢にかけました。

効率の良いデザインを重視するパーマカルチャー

パーマカルチャーは、1970年代に二人のオーストラリア人により提唱されました。永続を意味する「パーマネント」と農業を意味する「アグリカルチャー」を融合した造語です。後に、文化の「カルチャー」の意味合いが強まり、今では環境と人間に優しい循環型農業と、それに伴う生活形態全般をさす言葉として使われています。

 パーマカルチャーの特徴は、人間があまり手をかけなくてもうまく機能するような、自然の摂理を活かしたデザイン構築にあります。それを実現するために、しばしば不利な条件を有効活用するための逆転の発想も求められます。

 雨水補給源として水鉢を置く、水鉢に蚊がわかないように金魚を飼う、乾燥対策として素焼きの水壺をプランターに埋めるなど、セシリアさんのバルコニーのなにげない風景の中には、パーマカルチャーを実践した小さな知恵が隠されています。

 「バルコニーだと結果がすぐ目に見えるし、何度もやり直しがきくでしょう? 何通りもの答えがあって奥が深いのが魅力ね」とセシリアさん。

クリエイティブな遊び心と夢を大切に

 セシリアさんのパーマカルチャーの特長は、美しいこと。生ゴミから堆肥を作るミミズコンポストも、セシリアさんの手にかかれば美しいクラフト作品になります。
どこでも手に入る猫トイレと網底容器を改良した手作りミミズコンポストは、市販のものよりずっと安上がりです。

 「都会暮らしの私達に出来るのは言わばセミパーマカルチャー。本格的な食糧生産は無農薬農家に委ねるとしても、食べ物を育てるという行為を常に思い起こすのは大切なことね」

 最後に日本の読者へのメッセージをお願いすると、「うーん」と考えてから、「日本には子どもの教育に全てを注ぎ込むお母さんが多いように感じますが、まずお母さんに自分自身の夢を持って欲しいですね。子ども達は、そういうお母さんを見て育つだけで、自分で人生を切り開いていけるたくましい創造力を養いますから。」と答えてくれました。

 「子供と一緒に何かを育ててみるなど、ワクワクを共有して欲しいですね。」

 都会のマンション暮らしでも、自然を暮らしに生かして楽しみ、子どもの創造性を育むこととはできる。セシリアさんのバルコニー・パーマカルチャーは、都会の人工的な環境で暮らす私たちにも、多くのヒントを与えてくれそうです。

(取材・文 / メルボルン在住ライター 緑ゆたか http://ozgarden.fc2web.com

プロフィール

セシリア・マッコーリー(Cecilia Macaulay)
メルボルン在住のパーマカルチャー教師およびエコ・イラストレーター。専門学校で室内装飾を学んだ後、世界各地のエコ・ビレッジを訪問して歩く。英語教師として日本に6年間滞在した経験を活かし、オーストラリアと日本でパーマカルチャー講座を開催している。
HP: http://www.ceciliamacaulay.com.au/