本誌連動企画

被災地・東北のためにできること 〜Coffret Project 代表・向田麻衣さん

ecomom3月号で化粧品を通して、発展途上国を支援する活動を紹介したCoffret Projectの向田麻衣さん。東日本大震災の被災地・宮城県は向田さんの出身地でもありました。地元の被災に心を痛めながらも、震災直後からさまざまな支援活動を続けている向田さんに改めてお話を伺ってきました。
写真提供・向田麻衣
被災地は地震と津波でさまざまなものが破壊され、それまでの町の面影は失われてしまいました。支援物資の化粧品を受け取ったときの被災者の笑顔が印象的です。




頭が真っ白になって、
テレビの画面を追い続けた地震当日

 3月11日、東京・青山の事務所で雑誌の取材を受けているときに、地震にあったというCoffret Project(コフレプロジェクト)代表の向田麻衣さん。

 地震の大きさにびっくりしながらも、オフィスの近隣のショップの片づけなどを手伝っているうちに、震源地が三陸沖ということを知ります。宮城県仙台市は、向田さんにとって、高校までを過ごした大切なふるさと。

 「もう頭が真っ白で・・・。もちろん現地とは電話やメールは通じないし、そのうちテレビからは地震と津波で大変なことになっている映像が流れてきて・・・。時間が経つのもわからずに、テレビを食い入るように見つめていました」

 実家の両親とは奇跡的にメールが一度だけつながり無事を確認。「でも、石巻に住む祖母と叔母夫婦の安否がずっとわからなくて・・・」

 そんな不安を抱えながらも、都内で帰宅難民化している人たちがいることを知り、事務所を開放。「トイレや休憩所などを提供することで、少しでも帰宅難民となった人たちの役に立ちたかった」と言います。

ツイッターやネットを使って、
被災地へ物や思いを届けるプロジェクトを

 震災後、被災地の壊滅的な様子が明らかになるにつれ、「何か自分にもできないだろうか」と考えた人も多かったはずです。

 帰宅難民への手助けを皮切りに、被災地支援として、向田さんたちが考えたのは、一般の人たちがツイッターでつぶやくことで企業に働きかけて、現地に物資を送るという「Todoke!」プロジェクトです。

 震災直後は物流が動いていなかったこともあり、支援物資を送りたい企業と、物資はないけれど物流手段はあるという企業をマッチングさせて、次々と現地へ支援物資を送ることを実現しました。

 「私だけでなく、このプロジェクトにかかわるみんなが、とにかく被災地のみなさんのためにできることはないかと一生懸命取り組んだ結果がどんどん形になっていきました。それぞれ本業がある中でのボランティア作業のため、ネット上で意見交換しながら、さまざまな懸案をクリアし、タスクをこなしながら、支援を形作っていきました」。

震災後の地元へ

 3月26、27日には、向田さんもボランティアのバスに乗って炊き出しと物資支援のために現地入り。

 震災後、4日目に無事がわかっていた石巻の祖母宅にも足を運ぶことができました。1階で呉服店を営んでいたという祖母宅は、さまざまなものが混じり合った泥で1階はめちゃめちゃな状態だったといいます。

 それでも、祖母や叔母夫婦の無事な顔を見届けられたことで、向田さん自身、ようやくほっとした気持ちに。「自分が幼い頃から慣れ親しんできた町並がなくなっていたのは、私にとっても大きなショックでした。私の叔母夫婦は泥だらけの店舗から、畳を1枚1枚外に出して干すという作業を続けていたのですが、泥水にまみれた畳はとても重くて作業は重労働。被災した人はどなたも同じように、大変な作業の連続で、心身ともに疲労の限界を超えているのを痛感しました」。

 いくつか回った避難所で、さまざまな支援物資と一緒に、向田さんが持ちこんだ基礎化粧品をそっと差し出すと「ずっと肌のお手入れもできずカサカサだったから、本当にうれしい」と、ほっと表情をほころばせてくれる人が何人もいたそうです。

傷ついた被災者の心を「コスメ」で癒す

 被災地が元の状態に戻るには長い時間がかかるはず。そして、現地の被災者が必要とする物資やケアも時間の流れとともに大きく変わっていきます。
「そういうときに、お肌のケアをしたり、メイクをすることで少しでも気持ちを明るくしてほしい」と、今後もCoffret Projectとしてできることを模索していく予定です。

 発展途上国で女性の自立支援のためにやってきたことは、きっと今回の震災の被害者の支援にも役立つはず。実際、阪神大震災のときも、化粧品がほしいというニーズが高かったにも関わらず、生活必需品などが優先される中で、被災者の手元にはなかなか届かなかったといいます。

 化粧水やクリームをつけて肌がしっとりすること、口紅を引いて顔が明るくなること・・・。長い時間がかかるといわれている復興への道のりでは、そんな小さな喜びが、力を与えてくれるのではないでしょうか?

 4月12日、今度はCoffret Projectとして、たくさんの支援物資と基礎化粧品を現地に運んだ向田さん。これからも、大切なふるさとが少しでも早く立ち直れるよう、支援を続けていくつもりです。

 「震災後、より一層自分に与えられた残りの時間について意識するようになりました。発展途上国や先進国などという枠組みにはとらわれずに、Coffret Projectとしてできることを精一杯取り組んでゆきたいと思っています。」

向田麻衣(むかいだ・まい)さん
Coffret Project 代表。宮城県仙台市出身。高校在学中にネパールに渡り、NGO活動にふれる。大学卒業後は化粧品メーカーのマーケティング部を経て、Coffret Projectを立ち上げ代表に。化粧品を通じた発展途上国の女性の自立支援を図るとともに、地元・宮城県を中心に被災地の支援活動にも力を入れる。

●Coffret Project:http://coffretproject.com/
●Todoke!:http://todoke.org/

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(2011年4月22日)