本誌連動企画

フィンランドの暮らし 第3回 何でも自分で! DIYな国、フィンランド

記事の中で分からないことがあったら……Sooda!に質問してみよう!

 こちらに移住して来た時の私の第一印象は、「人がいない!街がガラガラだ・・・」というものでした。首都ヘルシンキの真ん中に行けば、もちろんそこまでではありませんが、それでも日本の大きな都市に比べればずっと静かなものです。それもそのはず、日本の9割程の面積の中に人口は約520万人という少なさです。

 この現実がもたらしたもの、それは自助努力の精神。「そんなことも自分でするの?!」と、日本で経験してきたきめ細かな消費者サービスとの違いに、移住当初はびっくりすることも多々ありました。でも、限られたリソースで効率よくすべてをまわしていくためには、そのスピリットが不可欠なのです。

 例えば、カフェでは基本的にセルフサービス。コーヒーを一杯ずつドリップしてテーブルまでもって来てくれる、なんて聞いたことがありません。

 お店でプレゼントを買った場合も、特別包装などをしてくれるところは一番大きいデパートや逆に個人経営の小さいお店くらいで、普通は包装紙だけもらって帰ったり、レジの脇にある作業台で自分で包みます(フィンランド人いわく、きれいに包まれている事よりも、包んであること自体が大事だから仕上がりは気にしなくていいのよ~とのこと)。

 年2回の車の冬夏タイヤ交換ももちろん自分でやります。さらには病院で血液検査などをした場合、後日自分から電話をしない限り結果はわかりません。息子のインフルエンザのワクチンも自分で薬局で買い、保健所に行くまで冷蔵庫保存していましたっけ。

オフィスの引越しに重役も登場

 勤務先のオフィスの引っ越しの際も、業者に頼んだのはトラックと箱のみでした。みんなで箱に詰め、搬出。そして年季の入ったつなぎを着たおじさんがいたので電気屋さんかな?と思ったらなんと会社の重役。工具片手に率先してオフィス家具をどんどん解体&梱包していきます。箱のタワーをカートで扱うのもお手のもの。

 いつもと全く違う姿にびっくりしましたが、こちらでの暮らしが長くなるにつれ、そんな人が身の回りにたくさんいることがわかってきました。

 DIY好きな人はもちろん日本にもたくさんいますが、こちらでは好きでやる、というよりも、ある程度はやって当たり前!という感じさえ受けます。電気ドリルは一家に一台、ヘルシンキの目抜き通りにも工具やら何か「?」の部品やらが豊富なホームセンターが複数あります。

 ちなみに日本のDIY事情に詳しい知人によると、なかなか個人では買えないようなパーツや建材などがこちらでは手に入りやすく、しかも物によっては日本より安いものもあるとのこと。これも「自分で!」人口が多いからではないでしょうか。

時間にゆとりがあるからこそ

 家のリフォームを自分でやる、というのも一般的。中古物件を購入し、納得のいくかたちに作り替える人がたくさんいるので、引っ越しの話には必ず「リフォーム(自分で)するの?」という質問がつきものです。

 実際、私のまわりで引っ越しをした人の中でも、リフォームを業者に委託したという話は聞いた事がありません。壁紙の張り替え、塗り替え、フローリングの新調はよく聞く内容。もっとすごい人は壁を取り払ったりと間取りの変更も自分でします。

 さらには必要な建材が一通りセットになった「一戸建てセット」なる商品もホームセンターで売られ、それを買って自分で家を建てる人も。そしてそういった作業を、同棲中のカップル、小さな赤ちゃんを抱えたファミリー、すでに子どもが独立した夫婦・・・あらゆるタイプの人々が夏休みや週末を使ってコツコツとこなしていきます。

 IT関係に勤めるおしゃれな友人カップルも最近中古マンションを購入。一見DIYとは無縁に見える2人が、フローリング材の色違いの切れ端を片手に楽しそうにリフォーム計画を話してくれる様子にびっくり。

 会社の同僚も何年もかけて少しずつサマーコテージを直しているんだとか。平日のきびきびと働く姿とは全く違う様子を聞く度に、長靴に工具片手の彼女の姿を想像し、そのギャップがおもしろいなあと思わずにはいられません。

 そうしたことが可能なのは、休みが確保されている、残業が少ないなど、時間にゆとりがあるからこそ。勤務時間とプライベートな時間は180度違う過ごし方をする、そんなメリハリのある生活スタイルがフィンランド人のエネルギーの素なのかもしれません。

わが家も引越し

 そしてわが家もこの夏、引っ越しをしました。作業はもちろん自分たちで。スーパーから箱をコツコツ集めるところから始め、夜な夜なマイカーで荷物を運び、最後は友人たちに手伝ってもらい大物を移動。出て行く家のクリーニングも自分たちでやるものなので、1日かけて掃除をし、無事終了しました。

 築25年の新居はリフォームせずとも住むことができる状態でしたが、実際暮らし始めると、やはり小さくても気になる修理箇所がたくさん出てきます。トイレのビデの交換、歪んだドアを削る、キッチンの下水パイプの調整などなど・・・それをリストアップしながらホームセンターへ通い、工具をそろえ、ちょっとずつ直していく毎日。そして修理した事で生活が快適になっていくという気持ちよさを知ってしまいました!

 もちろん、紹介した事例を代行してくれる専門業者はそれぞれ存在します。でも、高いお金を払って時間とサービスを買うよりも、自分たちでする苦労に価値を見いだす、そちらの方がフィンランド風。わが家もその仲間入りをめざして、家のメンテナンスにはげむ毎日です。


(2009年9月4日)
記事の中で分からないことがあったら……Sooda!に質問してみよう!