私が普段行くのは三源里市場という、日本の公設市場に近い食品中心の市場です。新源里という街にあるので、地元では「新源里市場」と呼ばれています。他の市場と違うのは、近くに住む外国人が多く買い物に来ること。アフリカの民族衣装をまとった人やサリーを着た人など、他の市場では見られない独特な雰囲気です。各国の料理が集まる近所の飲食店からも買いに来る人が多く、値段は他の市場よりも少し高めのようですが、他の市場よりも品質が良くて新鮮なので人気を集めています。外国人客も多い市場とあって、外国の野菜も買えます。ズッキーニやバジル、そしてミントの葉も売っています。バジルはこんなにあって、2、3元です。 市場の買い物の魅力は、売っている人やお客同士でも会話が弾むこと。北京では、食品は高くないので、あまり値切る必要はありませんが、それでも「今日は高いね。」と言えば、少し値引きしてくれたり、別の野菜をサービスで付けてくれたりします。もう一つの魅力は、欲しいものを必要なだけ買えること。少しだけでも買えますし、その逆ももちろんOK。とっても柔軟です。 |
入ってすぐ並んでいるのは果物屋です。左右両側に10件以上あり、どこで買おうか、いつも悩みます。果物は、店や物の質によって値段が違うので、私は入り口の店から買いたい果物の一斤(500グラム)の値段を聞いて回ります。隣の値段を聞いた後、値段を下げてくる店もあるから面白いですよ。だいたいの値段の見極めをした後は味見です。値段と味が見合えばその場で買いますし、美味しくなければ他の店へ移ることもあります。味見をしたからといって、必ず買う必要はありません。北京っ子は合理的なのです。今は、日本ではなかなか買えない、生のライチが旬を迎えています。楊貴妃も愛したという果物、ライチはとっても美味しいので、この時期は1回に1キロずつ何度も買いに行きます。赤い実の皮をむくと、シュワッと果汁が飛び出し、甘い匂いでなんとも言えず幸せな気分になります。 |
パン、饅頭、お惣菜、麺などは、市場での手作りの商品が一番です。ラー油やゴマのペースト、唐辛子などの調味料、胡桃や栗、乾燥なつめも売っています。私は時々栗を買って栗ごはんを炊きます。500グラム買っても10元(150円)しません。とっても贅沢な栗ご飯になるのでうれしい限りです! |
奥に進むと大きなあばら骨がついた肉がぶら下がった精肉の売り場があります。イスラム教徒用のお祈りをした羊肉や牛肉、それに鶏肉、豚肉など、扱う肉によってお店が違います。豚肉や鶏肉は手ごろな大きさに処理されている肉が木の台の上に並んでいます。冷蔵庫に入っていない肉を買うのをためらう日本人も多いのですが、私はためらわずに買っています。料理人をしていた私の父が北京に来たときに、捌いたばかりの新鮮な肉だと絶賛していました。不安な場合は冷蔵庫に入っている肉を売ってほしいと言えば、出してくれます。 |
何よりも楽しいもの、そして必ず買うものは野菜です。農薬で安全性の是非が指摘されている中国の野菜。スーパーでは有機野菜も売られていますが、私はちょっと疑心暗鬼です。有機野菜のラベルがパックに貼られていても、あまり新鮮に見えなかったり、肥料に人糞を使っていて寄生虫や大腸菌の問題も指摘されたりと、消費者としてはあまり安心できない部分もあります。 中国に住んでいる以上、農薬はある程度は使われているものと考え、野菜を選ぶ目と、下ごしらえや調理の仕方によって、安心して食べられるように工夫しています。日本にいた頃は、仕事をしていたこともあり、生協の宅配を利用していました。今までと違って実際に野菜を手に取り、対話して買うことで、日本ではラベルや記載されている「文字情報」を重視しすぎて、食品そのものをよく見て選ぶことから遠ざかっていたなあと改めて感じています。 中国で感覚がよみがえったのは、野菜の香りです。にんじんの独特の香りは、嫌われ野菜の代表格だったので、今の日本のにんじんは香りが薄くなりましたね。日本の野菜は、品種改良が進んでいるようですが、中国のにんじん、セロリ、トマトもまだまだ強い香りで主張するものが売られています。うちの息子は中国のにんじんも食べますよ。キュウリもこちらのはイボイボがたくさんあり、塩もみして皮を少しおろした後、すりこぎでたたいて割り、すりゴマをかけますが、たたいていると懐かしいキュウリの香りでキッチンがいっぱいになります。 菜っ葉類は茎がシャンと立ち、葉がピンピンしています。トマトもよく熟れていながらも、市場内では日光に照らされていない分しっかりしています。まだ土がついたままの野菜もあり、日持ちもするので、1週間分まとめて購入しても大丈夫。こちらは路地物が多いのか、季節ごとに旬の野菜がはっきりとわかり、1年中楽しめます。 |
中国ならではの菜っ葉類はぜひいろいろ買って食べてみたいものの一つです。籠の中に入っているのは、左から空心菜(コンシンツァイ)、油麦菜(ユーマイツァイ)、そして油菜(ユーツァイ)です。空心菜は茎の中が空洞になっています。あっさりと大蒜と塩味で炒めても美味しいですが、大人用にはキムチの元をまぜたりもします。真っ直ぐ縦に伸びた葉が特長の油麦菜はその名の通り、油と愛称の良い野菜で、よく炒め物にしますが、生でゴマペーストをかけて食べることも。また、油菜は茎の部分が太いので、少し斜めに落として炒めます。干し海老と一緒にいためても出汁が出て美味しいです。どれも1元(15円)から3元(45円)ぐらいで買えるので主婦には嬉しいですね。 |
市場では、今美味しい野菜と美味しくない野菜、中国の野菜やその食べ方も教えてくれます。サービスに食べたことのない野菜を付けてくれることもしばしば。市場の買い物は店の人と仲良くなるのがコツです。あれこれ話しながら買い込むうちに、いつの間にか両手が荷物でいっぱいになって、お店の人が車まで運んでくれることもあります。 中国は豊かな食文化がある国ですから、それを教えてもらい、取り入れ、また素材を選ぶ目を持つことで、食生活も楽しいものになります。市場をどれだけ楽しめるかは、買う人次第。中国へ出かけたら、ぜひ市場によって中国の食材にチャレンジしてみてください。 |