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日経マネーDIGITAL

CFA流『さんない』投資塾

第69回 マイナス金利時代の分散投資を考える

2016年8月26日(金)


世界的な金融アナリストの資格であるCFA。日本でプロとして活躍中の現役バリバリCFAの有志が日経マネーの読者に向けて、毎月交代でコラムを執筆します。初心者や投機や短期投資のみが投資だと思っている方に、本当の投資、資産運用を知っていただきたいと思います。合言葉は、「急がない、やめない、無理しない」。毎月1回の更新です。

CFAって何?という方はこちらからどうぞ。→ ごあいさつ

つかさ長期投資研究所 代表
田倉達彦, CFA






 私は、長らく機関投資家の立場で資産運用の現業に携わった後、投資を研究する会社を立ち上げました。現在は投資家として、市場と企業の関係の理解を深め、長期的な視点で投資機会を追求しています。また、個人投資家層の資産形成に役立つような活動にも関与したいと思っています。

 そこで今回は、欧州に続き日本が踏み込んだマイナス金利政策という未踏の経済環境において、個人投資家が考えておくべき資産運用の視点を整理しました。

資産運用の基本は分散投資

 資産運用の基本は、ポートフォリオ(投資対象資産の組み合わせ)全体で考えて、価格変動リスクと期待リターンのバランスを取るという発想にあります。そのための方法論が分散投資と呼ばれるものです。
 これは「すべての卵をひとつの籠に盛るな」という考えに基づくもので、投資対象資産を分散することでポートフォリオのリスクの低減を図り、リターンの安定化を図ることを目的とするものです。

 分散投資の手順は、以下の通り、投資対象とするアセットクラス(資産分類)を考え、各資産が有するリスク・リターン特性を把握する形で進みます。

 (1)代表的なアセットクラスは国内外の株式及び債券です。不動産投資の代替としてのREIT(不動産投資信託)などのオルタナティブ資産も対象となります。

 (2)それぞれの資産について、過去の価格の動きから平均的なリターンと価格変動リスク(標準偏差)を調べます。

 (3)そして、現時点の経済環境との類似点を考慮しながら、将来の予測に反映する作業を行います。

 今回は、(2)のリスク・リターン特性と資産選択の関係を取り上げ、分散投資について考えていきます。

アセットクラスのリスク・リターン特性

 最初に、各資産のリスク・リターン特性をイメージするために(図1)に例を示しました。有価証券のリスクは一般に標準偏差で測ります。これは各資産の年次リターンがどれだけ上下に振れるかの指標で、平均値から±1標準偏差の範囲に約68%が収まります。 例えば、国内株式のリターンは約68%の確率で+19%から-16%程度に収まることを意味します。

 しかし、過去のデータをみても、リスクとリターンの関係は常に安定している訳ではありません。計測する期間によって、かなり大きく変化しているのが現実です。このような資産価格の「不確実性」こそが投資の難しさの本質といえるものなのです。それでも、過去のリスク・リターン特性を知ることは、将来予測の指針を与えてくれると同時に、将来の不確実性に対峙するという心構えを持つことにもつながります。

資産選択の考え方

 次に、リスク・リターン特性と資産選択の関係を整理します。投資資産の選択に当たっては、基本となる考え方があります。それは縦軸に期待リターン、横軸に価格変動リスク(標準偏差)をとった2軸の平面図に、各アセットクラスのリスク・リターンの特性をプロットするものです。ポートフォリオ理論ではこの概念フレームワークを資本市場線(Capital Market Line)と呼んでいます。

 ここでの要点は、期待リターンの高い資産は価格変動リスクも大きいという基本原理です。この点を認識したうえで、ポートフォリオ全体のリスクとリターンが安定化するよう、合理的な分散投資を行うことが求められるのです。

マイナス金利時代の分散投資とは

 資本市場線の例を具体的に考えると、無リスク金利のリターン(縦軸のリターン切片)が高かった時代は、投資対象資産の期待リターンに下振れリスクを吸収する余地がありました(図左)。しかし、現状のように主要先進国の無リスク金利がゼロ水準にあり、マイナス金利政策の深堀りも進む状況では、各資産の下振れリスクは、即マイナスのリターンとなってしまう可能性に注意を払う必要があります(図右)。

 現在のようなマイナス金利政策下では、無リスク金利のリターンは良くてもゼロ近傍ですから、価格変動リスクのある資産への投資からプラスのリターンを確保しなければなりません。その場合の分散投資は、少なくとも2つの視点から実践する必要があると考えます。

 1つ目の視点は、資産間の価格の連動性の低さ(低相関または逆相関の関係)を重視する分散投資です。例えばリスク資産として株式を考える場合、日本株であれば、代表的な大型株指数だけでなく東証マザーズなどの小型株指数にも分散します。同時に、米国株や欧州株、新興国の株式などにもきめ細かく分散投資をすることを考えなければなりません。

 もう1つの視点は時間分散です。リスク資産の価格が標準偏差に応じて下落する局面で逆バリ投資ができるよう、時間分散の余力も残しておくことが肝要です。過去、金融不安が強まるとリスク資産の相関が高まる(価格が連動しやすい)という現象も観察されており、市場が不安定化する場合、主要な資産のリターンが同時にマイナスとなる可能性も排除できません。従って、かなり気長に安値を待つという時間分散にも備えておく必要があるといえるでしょう。

このコラムについて

世界的な金融アナリストの資格であるCFA。日本でプロとして活躍中の現役バリバリCFAの有志が日経マネーの読者に向けて、毎月交代でコラムを執筆します。初心者や投機や短期投資のみが投資だと思っている方に、本当の投資、資産運用を知っていただきたいと思います。

<ごあいさつ>

日本CFA協会元会長/ウェルス・マネジメント・フォーラム代表幹事 岡本和久
「投資のプロたちが皆さんに本当にお伝えしたいこと」


このコラムでは質問コーナーも設けます。どんな初歩的な質問でも結構ですのでどんどんお寄せ下さい。
(ただ、個別銘柄に関する相談や短期的な相場見通しについてはお答えできません)。

<このコラムへの質問はこちらからどうぞ>
問い合わせ内容を「CFAに質問」としてください。


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