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日経マネーDIGITAL

CFA流『さんない』投資塾

第55回 バークシャー・ハサウェイ株主総会に参加して

2015年6月12日(金)

世界的な金融アナリストの資格であるCFA。日本でプロとして活躍中の現役バリバリCFAの有志が日経マネーの読者に向けて、毎月交代でコラムを執筆します。初心者や投機や短期投資のみが投資だと思っている方に、本当の投資、資産運用を知っていただきたいと思います。合言葉は、「急がない、やめない、無理しない」。毎月1回の更新です。
CFAって何?という方はこちらからどうぞ。→ ごあいさつ

びとうファイナンシャルサービス
資産運用アドバイザー
尾藤 峰男,CFA






 昨年に続き、今年も5月初めに、バークシャー・ハサウェイ株主総会に参加してきました。今年の総会はウォーレン・バフェットがバークシャーを買収して50年目の記念すべき総会でした。バフェット自身が「投資家のウッドストック」と形容するこの株主総会に、4万人を超える株主が集まりました。

 なぜこれだけの人たちが世界中からわざわざ米国中央部のネブラスカ州オマハに集まるかといえば、それはただ一つ。84歳のバフェットとその45年来のパートナー、91歳のチャーリー・マンガーの「Q&A」が聞きたいからです。株主からの質問に対して、2人が5時間以上に渡って答えるのです。世界の投資家が、バフェットが自ら記すバークシャー・ハサウェイ「株主への手紙」とともに、バフェットやマンガーがこのQ&Aで何を話すかに注目しています。今年は65もの質問に答えました。
 その内容は投資企業に関するもの、企業文化や企業統治から、経済、株式市場、投資手法、中学1年の質問に答える人生への示唆まで、多岐に渡ります。その中から、特に参考になると思われるいくつかをここで紹介しましょう。



1.投資企業に関する質問

(マンガーへの)質問: 古い繊維会社のような、死にかけたIBMにバフェットが投資するのを止めさせようとしたか。
マンガー: IBMほど適応力がすぐれた企業はない。一時的に逆風を受ける会社はたくさん持っている。だから安く買えた。
バフェット: 保有する企業のコメントは本来しないが、IBMはもっと買いたいと思っている。その場合安いほうがいい。

質問: 砂糖はよくないという認識がほぼ固まったので、コカ・コーラの強みはなくなるのではないか。(筆者注:コカ・コーラはバークシャーが最大株主として保有比率9.2%、4億株を持ち、「永久保有する」としている。ちなみにバフェットはコークの愛飲家)
バフェット: 企業は消費者の好みに合わせる。実は私の体の4分の1はコークによってできている。食品のブランド力は驚くべきものがある。20年後コークはもっと売れている。コークを飲んでいるとうれしくなるが、ブロッコリや芽キャベツをホールフーズ(有機野菜などの有機食品スーパー)で買っている人は笑っている人がいない。


2.企業文化や企業統治に関する質問

質問: バフェット亡き後のバークシャーを投資家はどう判断したらいいか。
バフェット: 私がいなくなった後、いかによくバークシャーのカルチャーが生き続けているかに驚いてはいけない。バークシャーのカルチャーが生き続けるのは、個性の力ではないことが明らかになるだろう。バークシャーはずっと成長し続ける。

質問: 株主でない人の生活により大きい影響を及ぼすため、企業は何をすべきか。
バフェット: もっと慈善活動を増やすべきということには同意する。しかしそれは個人レベルの話で、企業レベルの話ではない。慈善事業に会社の小切手を切るのは、私の仕事ではない。そのお金は私のお金ではなく、株主のお金だからだ。


3.経済や株式市場に関する質問

質問: 現在の株式時価総額や企業利益の対GDP比は、歴史的に高いと見たほうがいいか。(筆者注:株式時価総額/GDPは「バフェット指標」と呼ばれ、全体株価の割安・割高度を示すとしてバフェットが提示し、市場も注目している指標)
バフェット: 高いと言えるかもしれないが、金利が歴史的に見て非常に低いことも考慮したほうがいい。マクロ要因で投資を見送ったことは今までない。

質問: 高インフレの時、バークシャー企業群のなかでどこがいいか。
バフェット: インフレ時のベストビジネスは、買ったら資本投資をしなくてもいいビジネスだ。不動産ビジネスはインフレに強い。電力や鉄道ビジネスは資本投資が重いビジネスでインフレ時はよくない。ブランド価値も、商品やサービスを値上げできるのでインフレ時に強みがある。

質問: ユーロ連合は、欧州にあったほうがいいか、ないほうがいいか。
マンガー: 概念としてはよい仕組みだが、いろんな国を入れすぎた。軽薄で酔っ払いの義理の兄弟とはうまくやっていけない。
バフェット: すこし手直しが必要な良い考えということだ。欠点があるが、直せないということではない。直せばいい。

質問: アダム・スミスの国富論は、どのように重要だったか。
バフェット: 投資哲学を形作ったわけではないが、確かに国富論から経済を学んだ。アダム・スミスやケインズ、リカード、「お客のヨットはどこにある?」を読めば、たくさんの知恵を得ることができる。
マンガー: アダム・スミスは、世界で最も賢い人の1人とされている。資本主義システムの生産力は信じられないものがある。


4.投資手法に関する質問

質問: 割安株投資は、中国など他の市場でも通じると考えるか。
バフェット: 投資原則は国境で止まらない。ベンジャミン・グラハムの原則はいつでも通用する。株はオーナー権の一部と考えよう。
マンガー: 中国はもう少し投機より企業の価値に目を向ければいいだろう。
バフェット: 安い時に買えれば、株式投資は難しい知的ゲームではない。感情をコントロールできれば簡単だ。中国が米国より投機的であれば、そこに投資機会を見つけられる。

質問: 若かりし頃の投資成功の最も大きかった要因は何か。
バフェット: 偉大な先生(ベンジャミン・グラハム)がいたこと。例外過ぎるほどの集中、そして本来あるべき平常心、気持ちの安定性だ。


5.人生への示唆に関する質問

質問: 最も良いビジネスモデルは。
マンガー: 良いビジネスモデルというよりは、良い評判を積み上げることが大事。それには時間がかかる。良識的に行動するより、大事なことはない。

(中学1年生の)質問: どうしたらたくさんの友人ができ、好かれるようになるのか。
マンガー: みんなが私を好きになってくれたのは、金持ちで寛大だったからだ。(半ばユーモアで)
バフェット: あなたがいい人と思う人の特徴を4つ挙げ、それを取り入れて、よくないと思う人の特徴を4つ挙げ、それをしないようにしよう。

質問: ファイナンシャル・リテラシー(金融知識能力)を学生にどう教えるか。
マンガー: 貯金する仕方を知らない人は助けられない。
バフェット: 良い習慣を身に付けることが大切だ。

質問: ほとんどの遺産を寄付する誓約をしたのはなぜか。
バフェット: 遺産(現在の資産約730億ドル)の99%超を、慈善事業に寄付する誓約をした。大事なことは、そのお金が最も生かされるのはどこかということだ。これらのお金は、私には要らないお金だが、60億人が病気から救われ、教育を受けられ、飢餓から救われる大変価値あるお金だ。

 このようにバフェットやマンガーの話には、投資について学ぶことが多いのはもちろんのこと、人間として色々な面で役立つ深い知恵や人生への貴重な示唆があるのです。

このコラムについて

世界的な金融アナリストの資格であるCFA。日本でプロとして活躍中の現役バリバリCFAの有志が日経マネーの読者に向けて、毎月交代でコラムを執筆します。初心者や投機や短期投資のみが投資だと思っている方に、本当の投資、資産運用を知っていただきたいと思います。

<ごあいさつ>

日本CFA協会元会長/ウェルス・マネジメント・フォーラム代表幹事 岡本和久
「投資のプロたちが皆さんに本当にお伝えしたいこと」


このコラムでは質問コーナーも設けます。どんな初歩的な質問でも結構ですのでどんどんお寄せ下さい。
(ただ、個別銘柄に関する相談や短期的な相場見通しについてはお答えできません)。

<このコラムへの質問はこちらからどうぞ>
問い合わせ内容を「CFAに質問」としてください。


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