• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
日経マネーDIGITAL

FP快刀乱麻

10月からの火災保険に注目

2015年10月28日(水)

 2015年10月に火災保険が大きく変わりました。注目されたのは最長保険期間が36年から10年に大幅短縮されたことです。火災保険料の支払い方法で最も多いのは長期(最長36年)一括払いです。火災保険契約は保険期間が長期になればなるほど割引になるため、9月末までの保険始期であれば、36年の保険期間でも1年契約の25年分程度の保険料で済みます。そこで「急いで9月末までに契約したほうが得だ」ということになり、9月は駆け込み契約が急増したようです。

損害保険会社や代理店からみた商品改定

 保険会社の立場からすれば、36年もの期間を一定額の保険料で補償することは大きなリスクです。建物の築年数、世帯構造の変化、物価変動、自然災害による支払いなど、収支の大幅なブレが予想されるからです。もっと短期間で保険料の見直しを図りたいというのは当然でしょう。

 一方で、保険を販売する代理店は10月以降に契約者が支払う保険料が今までの36年分一括から10年分一括に減ってしまうので、9月末までに36年間の契約締結を考えるのが自然です。損害保険代理店が得られる収入は契約者の支払う保険料に比例しており、保険期間が10年なら契約者が支払う保険料は1年契約の8年分程度になるため、保険期間が36年と10年では代理店の得られる収入が約3分の1に激減します。代理店側が駆け込みで36年の保険期間を勧めた背景には、こうした保険料収入の影響もあったことは「お金の構造」として知っておきましょう。

契約者からみた10月以降のメリット(1) 特約

 商品改定により新しくなった特約があります。主に「地震火災費用」と呼ばれる特約です。これは地震、噴火、津波による火災で一定以上の損害が発生した場合に保険金が支払われるというものです。以前からこの特約は存在していましたが(保険会社によっては扱いなし)、多くの損害保険会社は支払う金額を「火災保険金額×5%(300万円が限度)」としており、「お見舞金」程度の役割でした。10月以降はこれに加えて「火災保険金額×30%(支払い限度なし)」や「火災保険金額×50%(支払い限度なし)」が選択できる特約が新設されたところもあります。

 地震保険では地震、噴火、津波が原因となる建物や家財に対する補償は火災保険金額の50%が上限ですから、地震が原因で火災が発生し全焼しても50%しか補償がありません。つまり地震保険だけの加入では建物の補償が100%にはならず、専門家のアドバイスとして家財の火災保険金額を多めにしたり、建物の火災保険金額を+30%まで契約したりと対策が提案されていました。火災に限定されているものの、地震、噴火、津波に対する補償を100%まで高められる特約が登場したため、地震等にもたっぷり備えたいという方にとっては選択肢が広がったということです。

契約者からみた10月以降のメリット(2) 補償内容の選択

 住宅ローンを利用して住宅を購入する場合、金融機関やローンを借りる側の属性等により、質権設定の有無に関わらずローン返済期間と同期間以上の火災保険契約が借り入れの条件になることがあります。その場合、ローンが35年返済であれば、35年以上の火災保険料一括払いが条件ということになります。資金が潤沢にあれば35年の超長期契約でも補償内容を自由に選べますが、保険期間が35年と指定されると予算の都合で補償内容が自由に選べない場合もあります。しかし、保険期間の上限が10年となれば、それ以上の契約期間を条件にされることはなく、保険期間が短くなった分、補償内容を自由に選ぶことも可能になるかもしれません。ただし、10年後には再び保険料を支払うことになりますから、10年後に備えての貯蓄も必要になります。

 これから先の将来には補償内容も大きく変わるかもしれません。9月末までに契約できなくて悔しい……という声も耳にしますが、手厚い補償という観点からいえば10月以降のメリットもありますので、今回の改定を前向きに捉えてみてはいかがでしょうか。もしもの時の補償ですから、その時に補償が十分かどうかを保険加入の際の検討材料にしてみましょう。

このコラムについて

 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は隔週水曜日です。

市川 貴博(いちかわ・たかひろ)
市川 貴博

 生活経済研究所長野 主任研究員。
住宅会社のトップセールスとして活躍する傍ら、顧客の住宅ローンとライフプランを真剣に考えるようになり、労働者のマイホーム取得時の総合アドバイスと資金計画を多数サポート。2011年労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」に参画後、労働組合のコンサルタントとして全国で講演中。CFP認定者


日経マネーメールマガジンの登録(無料)はこちら

日経マネーのムック&書籍紹介

  • 『老後不安を解消!! 確定拠出年金(DC)をはじめよう 2017制度改正完全対応版』

    6月5日発売(907円+税)

    老後資産づくりのノウハウがつまった一冊。2017年から誰でも使えるようになった「確定拠出年金(DC)」は “幸せ老後"を迎えるために欠かせない資産形成の道具です。その仕組みやメリット、活用術を分かりやすく解説します。さらに積み立て投資の利点や、投資に回すお金のつくり方などについて多方面からまとめています。

  • 『ふるさと納税のすべてが分かる本 2017年版』

    11月22日発売(815円+税)

    昨年好評だった「ふるさと納税」ムックの2017年版が発売になりました。この本では、まだふるさと納税をやったことがないという人にも分かりやすく、寄付の仕方や、減税の仕組み、確定申告の手続きなどを解説。最新の返礼品も260品ご紹介しています。実質2000円の負担で様々な返礼品が貰えるこの制度、利用しないのは損です!

  • 『不動産で億万長者!』

    10月31日発売(1000円+税)

    不動産を活用した資産形成の本。「都心部・地方」「新築・中古」「一棟・一室・戸建て」と分け、それぞれの投資法の長所と注意点を分析。どの最寄り駅の物件がいいのかを選ぶ参考として「200駅 三大都市圏中古マンション利回りマップ」「家賃が下がりにくい駅 80駅」と保存版データを掲載。さらに「海外不動産投資」「REIT・不動産クラウドファンディング」など。

  • 『退職までやっておくべきこと!サラリーマンの為の退活読本』

    9月2日発売(1000円+税)

    なんとなく定年が気になってきた世代のサラリーマンが抱く疑問に答える1冊。50代で早期退職したら年金や退職金はいくら減る? サラリーマンOBは受け取った退職金をどうやって使っている? おひとり様はどんな老後準備をしておけばいい? 定年後の移住はどんな感じ? 60歳以降も働くとしたらどんな仕事でいくら稼げる?などなど、ちょっと気になるサラリーマンの定年後の生活を豊富な事例を交えながら紹介。

  • 『間違いだらけの相続&贈与』

    8月3日発売(926円+税)

    日経ビジネスとの共同ムック。2015年から相続税の大増税が行われ、課税対象になる一般家庭も増えています。しかし、間違った相続税対策も多く、それでは却って損をしかねません。「腕利き税理士&弁護士が教える賢い相続」など、このムックで正しい対策を知り、今すぐ始めましょう。

  • 『国債が暴落しても長期投資家は平気だよ』

    4月21日発売(1500円+税)

    日本国債はバブルとも言われる高値続き(利回りは低下)で、いつ暴落してもおかしくないと言われています。万一そうなれば経済の大混乱は避けられませんが、株式に長期投資していれば乗り越えられる、と澤上篤人さんは説きます。第2部ではさわかみファンドCIOの草刈貴弘さんが、サバイバルに役立つ銘柄選びの方法を伝授します。