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FP快刀乱麻

「在宅死」と医療保障の見直し

2016年9月23日(金)

 1950年代までは8割を超えていた「在宅死」は年々減り続けており、2014年の調査では12.8%まで下がっています。一方で、60%を超える人が自宅療養を望み、そのうち約11%が最後まで自宅で過ごしたいと希望しています(出所:厚生労働省 「終末期医療に関する調査(2010年)自分が治る見込みがなく死期が迫っている(6カ月程度あるいはそれより短い期間を想定)と告げられた場合の療養の場所について」)。

 住み慣れた自宅で家族に見守られながら過ごす最期の時を、我々が再び選択し得る日は来るのでしょうか。

地域差が大きい「在宅死」

 今年7月、厚生労働省が初めて「在宅死」の市区町村別統計を公表しました(全国1741市区町村)。この調査から、地域の「在宅死」の割合には大きな格差があることが明らかになっています。

 一般的には、医療の受けやすさや病床数の影響が大きいため、離島や過疎地は「在宅死」の割合が高く、逆に人口当たりの病院数が多い地域は「在宅死」の割合が低くなる傾向があります(在宅死の割合が最も高かったのは東京都神津島村の54.8%、次いで鹿児島県与論町の50.0%で、いずれも離島)。

 しかし、人口5~20万人の自治体(428市区町村)でも「在宅死」の割合には約5倍の格差があり、人口20万人以上の中核市(126市区)でも約3倍の格差があります。「在宅死」には事故死や自殺も含むことや、都市部では孤独死が占める割合が高いと考えられるため、「在宅死」=「自宅で看取られる自然死」ではない点を差し引いても、決して小さな格差とはいえません。

地域差の正体

 地域差の最大要因と考えられるのが「在宅療養支援診療所」の存在です。「在宅自宅療養支援診療所」は、自宅療養のために地域で主たる責任を持って診療にあたる地方厚生局の認可機関で、24時間往診・訪問看護が可能な体制を維持することや、緊急時の病床確保、介護・福祉サービスとの連携などが設置要件となっています。

 国の後押しも受けその数は全国で約1万5000カ所まで増加していますが、依然、設置がない自治体が28%を占めるという現実もあります。一方で、5万人以上の自治体の中で「在宅死」の割合が高かった10市区町村の中9市区町村には、いずれも15カ所以上の「在宅療養支援診療所」が設置されています。自宅療養支援の体制が充実すると「在宅死」が増えるという構図が見て取れます。

自宅療養と医療保障

 さて、療養について考慮すべき点に加入済みの医療保険(共済)があります。自宅療養は保険診療のため入院ほどの負担はありません(高額療養費も対象となる。介護保険も同様。訪問介護でも高額介護サービス費の対象となる)。半面、入院が支払い要件となっている医療保障からは給付を受けられません。

 自宅療養を念頭に置く場合は、実費補償型(主に健康保険の自己負担額を補償する仕組みのもの)の医療保障を検討してみましょう。まだ絶対数は少ないものの、AIU保険「スーパー上乗せ健保」、富士火災「みんなの健保2」などの先駆的商品に他社も追随しつつあり、今後の拡大が期待される分野です。

 また、職場や労働組合の共済制度にも、入院を支払い要件としない医療保障があります。最有力は電機連合のけんこう共済で、「休業補償給付金」、「長期療養給付金」、「超・長期療養給付金」と自宅療養の保障が充実しています。主たる対象を現役世代としているため退職後は保障が制限されるものの、掛金が非常に低廉なため今後の制度改正に注目したいところです。

 いずれにせよ、保障には加入していたにもかかわらず、自宅療養が高額になった時に給付されず、あてが外れたということがないように、しっかりと準備しておきましょう。

 「在宅死」の実現には親族の合意と協力も欠かせませんが、核家族化や晩婚・未婚化が進む現代では親族側が協力を渋ることも考えられます。その意味で「在宅死」は高齢者だけの問題ではなく、現役世代が将来直面する課題としてとらえるべきものでしょう。

このコラムについて

 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は隔週水曜日です。

関口 輝(せきぐち・あきら)
関口 輝

 生活経済研究所長野 主任研究員。住宅メーカー、損害保険会社と転職を経る中で、“顧客にはお金の真実が全く伝えられていない現状”を目の当たりにする。一般勤労者が正しい知識と問題意識を持つことの重要性を認識し、2001年労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」に参画。現在、非営利活動団体(労働組合・関連団体)へ活動の中心をシフトし、お金の真実を伝えるべく講演を中心に精力的に活動中。AFP認定者


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