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FP快刀乱麻

誰もが納得の「配偶者控除見直し」はどうあるべき?

2016年9月7日(水)

「配偶者控除」から「夫婦控除」へ?

 このほど自民党税制調査会が「配偶者控除」の見直しを進め、2017年度税制改正大綱に盛り込む方針であることを明らかにしました。

 配偶者控除については、民主党政権(当時)が廃止を打ち出していましたが、実現しないまま自民党に政権交代。自民党は逆に、2013年参院選のマニフェストには配偶者控除維持を掲げていました。しかし、一億総活躍社会の実現をうたう安倍晋三政権は、女性の社会進出を阻む制度と捉え、配偶者控除見直しにいよいよ着手するようです。

 ご存じの通り、「配偶者控除」とは税額計算の際に用いる「所得控除」の1つ。所得税・住民税は、収入から経費(給与所得者の場合「給与所得控除」)を引いた「所得」から、さらにそれぞれの家族構成や様々な事情に応じて適用される所得控除を差し引いた金額に対し、税額が計算されます。従って、同じ所得金額でも所得控除が多いほど、税額が少なくなります。

 配偶者(一般的に妻)の年収が103万円以下であれば、所得税の場合夫には38万円の配偶者控除が、年収が103万円超141万円未満の場合は、その額に応じた「配偶者特別控除」が適用されます。配偶者控除が廃止されれば、夫の所得控除が減少して税額がアップ。家計への影響は必至というわけで反対の声も大きく、これまで見直しが進みませんでした。

 そこで上がっているのが「夫婦控除」の新設。詳細が決まるのはまだこれからですが、配偶者の収入によらず夫婦で一定額の控除が受けられる、ただし中間所得者層以下に恩恵が及ぶよう所得制限を設ける、といった内容になるようです。

崩せるか「103万円の壁」

 配偶者控除がなぜ女性の社会進出を阻むとされるのか。「103万円の壁」と言われるように、まず、パート収入があっても、給与所得控除の最低額65万円と所得税の基礎控除38万円を合わせた103万円以下なら所得税がかからないこと。また、夫の勤務先が配偶者手当制度を導入している場合、配偶者控除を受けられる103万円以下を要件としているところが多いこともあって、年収が103万円を超えないよう勤務時間を抑えて働くケースが少なくないからです。

 既に厚生労働省は、配偶者手当の在り方を検討するよう企業に求めています(「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」平成28年5月9日付基発0509第1号)。そして配偶者手当の廃止を決定したり、子どもや障害を持つ家族等を扶養する社員への手当に移行したりする企業が出てきています。国家公務員の配偶者手当についても、2018年度までに半減、本省課長級は20年度に廃止する方針です。

 この流れは高かった「103万円の壁」を低くし、勤務時間を調節せずに働くモチベーションにはなるでしょう。「壁」はさらに社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)負担が発生する「130万円の壁」もありますが、この10月から従業員501人以上の企業で働く場合、(1)週20時間以上の勤務、(2)年収106万円以上、(3)勤務期間1年以上の見込み、の要件を満たすパートタイマーは厚生年金・健康保険加入対象となり、壁が「106万円」に下がります。対象となったケースは「壁」を意識せず、状況が許すかぎり働くという選択をした方がいいでしょう。 

みんなが納得の制度は難しい?

 とはいえ、子どもが小さいのに保育所に空きがないなど、「状況が許さない」ケースにとっては、配偶者控除や配偶者手当の廃止は家計に大きな痛手です。現実問題として、女性が働ける環境作りを進めないと、一億総活躍社会は実現しないでしょう。

 保育所が足りないという待機児童問題はもちろん、共働きでも家事や子育ての大半を女性が担っているケースが多いことも、解消していく必要がある問題です。残業続きなど夫が家事や子育てに参加しにくい労働環境にあるケースが少なくありませんが、「長時間労働の是正」は政府にとっても大きな課題。今後の施策に注目です。また、各家庭でも現状を良しとせず、夫婦の役割分担の在り方について十分に話し合う必要がありそうです。

 配偶者控除に話を戻すと、パート収入が103万円あっても控除対象になることがそもそもおかしいと思います。妻本人は所得税ゼロであり、世帯収入としては十分メリットを受けているはず。様々な事情で全く働くことができず収入ゼロというケースであれば、夫が中所得以下などの条件付きで配偶者控除が使えてもいいと考えます。

 また、恐らく人的控除見直しの一環で検討されることになると思われますが、「年少扶養控除」は復活させるべきでしょう。現在、16歳以上19歳未満の子どもには「扶養控除」、19歳以上23歳未満の子どもには「特定扶養控除」が適用されますが、16歳未満の子どもには一切控除がありません。子ども手当(現在は児童手当)の財源のために廃止されたままです。児童手当があるとはいえ、少子化に歯止めをかけたいなら、子育て世代の税負担軽減に手を着けるべきかと考えます。

 税や社会保険制度は、どのように設計・改正しても、様々な立場の人がいる以上、全員が満足するのは難しいもの。これまで恩恵を受けてきた層が受けられなくなると、反対するのは当たり前です。社会全体にとって良くないのか、それとも自分のエゴなのか。一人ひとりが見極められるといいのですが。

このコラムについて

 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は隔週水曜日です。

浅田 里花(あさだ・りか)
浅田 里花

 (株)生活設計塾クルー取締役。CFP。証券会社、独立系FP会社を経て独立。生活設計のアドバイスのほか、執筆や講演活動をゆるゆる行っている。クルーでは毎月マネーセミナーを開催中。詳細ホームページhttp://www.fp-clue.com/の「クルーセミナー」参照。


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