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FP快刀乱麻

不妊治療の助成における新制度のポイント

2016年7月11日(月)

 厚生労働省による「不妊に悩む方への特定治療支援事業」では、特定不妊治療に対し、公費による助成金を支給しています。この不妊治療・公費助成制度が改正されました。

 助成金の申請をする際の受給要件として治療開始日の年齢が考慮され、助成回数が決定されるようになります。申請時期により受給金額が大きく変わりますので、細かくなりますが具体的に知っておくことが大切です。
 

現行制度と新制度の違い

 新制度に改正するに当たって2014年から助成回数の調整をしていましたが、今年年4月からは、すべての方が新制度へ移行されることになりました。

 これまでの制度を現行制度といいますが、年齢制限はなく、助成金の上限額は治療区分ABDE(採卵や受精確認を伴う施術)で15万円、治療区分CF(Cは凍結卵の移植、Fは採卵したが卵が得られず中止)では7万5000円で通算10回までの申請が可能でした。ちなみに治療区分の内容は次の通りです。

A:新鮮胚移植を実施
B:凍結胚移植を実施(受精卵を一旦凍結し、母体の調整後胚移植)
C:以前凍結した胚を解凍して胚移植を実施
D:(採卵後)体調不良により移植の目途が立たず治療終了
E:受精できず(胚の分割停止等により中止)
F:採卵したが卵が得られない、又は状態のよい卵が得られないため中止

 一方、改正後の制度を新制度といい、上限額15万円(または7万5000円)の変更はありませんが、39歳以下の方は通算6回、40歳から42歳までの方は通算3回、43歳以上の方は本事業の対象外となるなど、年齢ごとの通算回数に制限が設けられました。

 所得制限は、現行制度から引き続き、夫婦の所得合計が730万円未満とされています。

 現行制度と新制度の違いだけを比べると、助成金額が減少したように思えるかもしれませんが、新制度に移行する少し前、2015年度補正予算が今年1月20日に成立したことで、厚生労働省より助成金上限額の拡充が施行されました。
 

助成金上限額において2つの拡充

 拡充については、今年1月20日以降に終了した治療が対象となり、拡充内容は以下の2点です。

(1) 初回の治療に限り、助成上限額が30万円に拡充

(2) 特定不妊治療の一環とする男性不妊治療の助成上限額が15万円に拡充
 
 まず(1)の初回30万円への拡充ですが、対象になるのは本事業において初めて助成金の申請をされる方です。さらに対象の治療区分はABDE(採卵や受精確認を伴う施術)となります。

 次に(2)の男性不妊治療の上限拡充ですが、今回の施行で男性不妊治療の助成制度が全国で実施されることとなり、上限も15万円と統一されました。

 男性不妊治療も特定不妊治療の一環ですが、夫に原因が見つかり手術(精巣内精子回収法、精巣上体精子吸引法、その他精子を精巣又は精巣上体から採取するための手術など)が必要となった場合は、特定不妊治療費の助成金とは別に申請ができますので、上乗せされると大きな受給となるでしょう。ただし、治療区分C(以前に採卵が済んでいる凍結卵の移植のみ)は対象外です。

申請に当たって混乱しやすい大切な部分

 通算回数を決める年齢の考え方は、「初めて助成を受ける際の治療開始日の妻の年齢」です。男性不妊治療も、手術を受ける夫の年齢ではなく、妻の年齢で通算回数が決まります。

 2016年4月1日以前から助成制度を利用していた人も含め、すべての方が新制度に移行されますので、すでに6回もしくは3回の助成を受けた方は通算されて本事業では対象外となります。
 
 特定不妊治療とは、体外受精・顕微授精のことを指しますので、病院で受診してすぐに始められる治療ではありません。すぐに結果の出ない検査や、病院によっては体外受精・顕微授精についての説明会の参加後など、医師の定める治療開始日まで準備期間として時間を必要とすることもあるでしょう。

 不妊治療に踏み切れず悩まれている方は、この機会に検査だけでも受けてみてはいかがでしょうか。医師の判断となりますが、女性側の原因だけでなく、男性側の原因が見つかれば、タイミング指導や人工授精に時間をかけることなく、男性不妊治療を踏まえて適切な治療を受けることができます。

このコラムについて

 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は隔週水曜日です。

宇田川 京子(うだがわ・きょうこ)
宇田川 京子

 1972年埼玉県生まれ。会社員を務めながら、実母と祖父の癌闘病支援、祖母の介護を連続して経験し、公費助成制度の大切さを学ぶ。2011年に生活経済研究所長野へ入所後にAFP資格を取得し、同所研究員として調査・執筆活動に従事。


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