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日経マネーDIGITAL

FP快刀乱麻

老後の身支度は50歳過ぎから 「FPは見た」

2015年6月12日(金)

 敷地250坪、建坪80坪――。戸建て住宅街に一際目立つ純和風のお屋敷。そのお屋敷に70歳を超えた老夫婦が住んでいました。塀の中は分かりませんが、お屋敷の周りはいつもきれいでした。それが最近は、道路との境界に雑草が目立つようになってきました。
 娘さんが1人いらっしゃいましたが、かなり前に嫁ぎました。そして、本当に時おり、お孫さんと遊びに来られていましたが、最近は見かけることもなくなりました。ドイツの高級車が3台あったのですが、車の運転をしなくなったのでしょうか、車庫が開くのは空気の入れ替えで月に数度。もちろん車はありません。毎日の掃除だけでも大変だろうなと思いながら、最近では、人が住んでいるのかどうかも分からない。なにせお屋敷ですから。

 気にかけていると、自然と情報が入って来るようになりました。上場企業の役員を務めた旦那様は、毎日雇いのお手伝いさんの介助を受けながら生活をしているのですが、奥様の様子がおかしい。ということで親族が病院につれていったところ、診察の結果、認知症であることが判明。お屋敷に旦那様をおいて、有料老人ホームへ移ったそうです。
 すると、旦那様の介護、お屋敷などなど重荷となっていたものから解き放たれたのが良かったのでしょうか、認知症の症状が消えてしまいました。認知症に完治があるのかどうか知りませんが、普通に生活ができるようになったのだそうです。 
 旦那様やお屋敷、財産、その他もろもろが気になるが、かといって家に帰りたくはない。しかし、ほぼ毎日のように有料老人ホームから外出するそうです。目的はコーラスなど人と楽しく一緒に過ごすため。そして、有料老人ホームの30平米ほどの自室には、気に入ったものと必要なものだけ。残念ながら旦那様に関するものは一切ないそうです。
 どうも、夫(旦那様)はお屋敷にこだわり、家から離れたくないご様子。しかし、老いの進む妻(奥様)からすれば、肉体的にも精神的に限界に達してしまう。残された人生、夫の世話や掃除など家事からは解放されたいようです。

 75歳を過ぎれば、もう余生です。身の半分は、この世にないようなものではないでしょうか。お屋敷やお金、ものなどにこだわっている場合ではないようです。人生は一度しかないので、どうしても振り返ることばかりになります。それでは、先達の経験が生かされません。
 50歳にもなれば、そろそろ人生の棚卸しをしておくべきではないでしょうか。棚卸しの方法はいくらでもあります、まずは心の中で、人生を更地にすることです。

このコラムについて

 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は隔週水曜日です。

井戸 美枝(いど・みえ)
井戸 美枝

 井戸美枝事務所代表。CFP・社会保険労務士。神戸市生まれ。関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエント・フライヤー。年金・社会保障問題を専門としながら経済エッセイストとしても活動。著書多数。人生の神髄はシンプルライフにあると信じる。


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