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FP快刀乱麻

住宅ローン借り入れで加入する団体信用生命保険の留意点

2016年5月27日(金)

 住宅ローンを借りる時、多くの金融機関では生命保険に加入することになります。もし亡くなってしまった場合にその保険金でローンを完済するためです。この保険は団体信用生命保険(以下、団信)と呼ばれます。貸す側も借りる側も死亡リスクを回避する目的の団信ですが、今は住宅ローンを選ぶポイントの1つにもなっています。

保険を販売する側とローンを貸す側から見た団体信用生命保険

 マイナス金利が導入される以前から、住宅ローンは銀行の金利競争が激化し、変動金利は1%を下回ることが当然のようになっていました。そこから抜け出すように、2001年には従来の団信に加えて、がんと診断された場合、保険金によってローン返済を支援する「ガン保障特約付団体信用生命保険」が登場しました。「他行の住宅ローンより金利は高いですが、返済期間中にがんになってもローン返済は安心です」といううたい文句でローンを借りる側のニーズを取り込み、この団信が住宅ローン販売を後押ししました。

 2006年には、がんだけでなく、心筋梗塞、脳卒中で所定の状態になったら住宅ローン残高が“ゼロ”になる「三大疾病保障付き住宅ローン」が販売されました。仕掛けたのはフランスの金融グループ「BNPバリパ」の保険子会社、カーディフ生命とカーディフ損保で、銀行に対して保険を販売するために提案された三大疾病保障付き団体信用生命保険を住宅ローンに組み込んで販売したのです。

金利競争から保障競争へ

 その後、団信は3大疾病から7大疾病、8大疾病、と保障する疾病数を増やし、ついには「全疾病保障」といううたい文句まで登場しました。そうなると比較するのは難しく、一般的には「3大疾病より8大疾病の方がいい」という結論に陥りやすくなります。ローンの比較というより保障内容が良さそうな金融機関を選んでしまうこともあるようです。

 また、今回は詳しくは触れませんが「ワイド団信(引受条件緩和型団体信用生命保険)」なるものも登場し、従来の団信では加入できなかった方も加入できるメニューも用意している金融機関もあります。しかし、生命保険が各社ごとに保障内容が違うように、団信も引き受けている保険会社によって内容が異なります。

保険会社による違い

 いくつか事例をみてみると、中央労働金庫の「オールマイティ型保障団信」(引受は日本生命保険相互会社)は、3大疾病保障付きの団信に、障害等級1級に相当する障害状態になった場合、ローン残高がゼロになる保障が加わっています。また、りそな銀行の「団信革命(特定状態保障特約付き住宅ローン)」(引受は第一生命保険株式会社)は、7大リスクと表現し、通常の3大疾病に病気・けがによる16の状態、所定の要介護状態を加えて保障の範囲を広げています。

 みずほ銀行の「8大疾病補償プラス」(引受は損保ジャパン日本興亜株式会社)は、7大疾病に慢性膵炎を加えた8大疾病を保障しますが、先に1年間を上限に団体長期障害所得補償保険(GLTD=在職中に病気やケガにより働けなくなった場合に、収入の一部を補償する保険)が給付され、その時点で状況が継続していた場合はローン残高に相当する保険金が給付されます。また、がんについては上皮内がんでも給付されると記載されていますが、先にGLTDが給付されるため、1年経過後に状態が改善されていれば住宅ローン残高はゼロにはなりません。

何で選ぶのか?本来の目的を考える

 同じ金利のローンであれば保障内容が良いものを選ぶべきですが、いくら保障が良くても主である住宅ローンの金利が高いケースや、希望する金利タイプではない場合もあります。保障で安心は得られても、ローンの支払いで生活が困窮するのでは本末転倒です。手厚い団信にすることによって金利に上乗せされる負担は、0.2~0.4%程度。長期固定金利がほぼ1%をつける時代にあっては、金利負担の2~4割に相当します。

 2000万円のローンを35年返済する場合、仮に0.3%の金利上乗せで月々2550円程度の保険料相当額を支払うことになり、35年間の総額は約107万円です。住宅ローンは保障の善しあしだけでなく、本当に必要な保障なのかどうか、さらには主であるローンの善しあしも含めて検討しましょう。

このコラムについて

 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は隔週水曜日です。

市川 貴博(いちかわ・たかひろ)
市川 貴博

 生活経済研究所長野 主任研究員。
住宅会社のトップセールスとして活躍する傍ら、顧客の住宅ローンとライフプランを真剣に考えるようになり、労働者のマイホーム取得時の総合アドバイスと資金計画を多数サポート。2011年労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」に参画後、労働組合のコンサルタントとして全国で講演中。CFP認定者


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