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FP快刀乱麻

住宅ローンを借りる時に考えておくべきこと

2015年4月15日(水)

 住宅ローン相談の現場では銀行の金利や金利優遇を気にする方が多いのですが、それ以上に大切なのは金利タイプ、当初の借入金額、返済期間の設定です。借りる側の視点と販売側(銀行や住宅メーカー等)の視点の両面から見てみましょう。

金利タイプは3つ

 金利タイプには(1)変動金利、(2)固定金利期間選択型、(3)固定金利の3タイプがあります。
 (1)変動金利は6カ月ごとに金利が見直されます。金利は低く設定されることが多く、同じ借入額でも当初の返済は軽くなります。同じ返済額であれば借入額は多くなるので、販売側から見れば高い物件を買ってもらいやすくなる「良いローン」です。
 しかし「金利が上昇すると怖い」という理由で変動金利を単純に嫌う方もいます。販売側としても(3)固定金利を勧めると借入額が減ってしまうのでメリットがありません。そこで「変動」という言葉を使わず、「10年固定なら1.2%と金利も低く、10年間金利が固定で安心」と説明しやすいタイプが(2)の固定金利期間選択型です。一定期間は金利が固定され、その期間が過ぎると見直しが必要になります(固定金利期間や変動金利への移行を選択する)。ただし、最初の固定期間を過ぎれば金利が変わるので、(1)変動金利と同様、そのリスクを考える必要があります。
 (3)固定金利は借りる側にとっては金利変動がないのがメリットですが、デメリットは金利が高いこと。販売側から見れば、同じ返済額だと借入額が下がってしまうため、積極的にアピールしないことも利用率の低さにつながっています。住宅金融支援機構が公開している2014年度の「民間住宅ローン利用者の実態調査 民間住宅ローン利用者編(第2回)」によると、全期間固定金利型の利用者は約26.7%に留まっています。

借入金額が4倍になると、利息も4倍に!

 当初の借入金額はとても重要です。仮に借入額が1000万円、30年返済(元利均等返済)で当初10年間の金利が1.2%の場合、返済額は約3.3万円です。仮に11年目から金利が高騰して5%になったとしても、返済額は約4.7万円で、無事返済できる可能性が高いでしょう。しかし借入額が4000万円の場合は当初10年間の返済額が約13.2万円、11年目以降は約18.6万円と高騰します。つまり、借入額が少ないほど金利変動による家計への影響が小さくなりますので、そのことは押さえておきましょう。
 また、返済額は全て「元金」の返済に充当されるわけではなく、「利息」を含んでいることも重要です。毎月支払う利息は「前月のローン残高×金利÷12」で計算されるため、借入額が4倍になれば利息も4倍になります。借入金額を増やすことには相当慎重であるべきです。

返済期間は短いほど良い

 販売側は利益を最大化するために最長期間での借り入れを勧めますが、返済期間の違いは利息額に大きな影響を与えます。1.76%の固定金利(東京都エリアの手数料定額型【フラット35】の平均金利、15年4月10日現在)、元利均等返済で3000万円借りた場合の総利息額を見てみましょう。返済期間が25年だと約710万円、30年だと約864万円、35年ではなんと約1020万円です。毎月の返済額は逆に25年で約12.4万円、30年で約10.7万円、35年で約9.6万円と安くなりますが、「変動金利で金利上昇による返済額アップの可能性を考慮するなら、最初から12.4万円支払って利息を310万円浮かす」という考えがあっても良いでしょう。

 返済期間は、販売側から勧められるがまま「35年返済」と決めてしまう方がほとんどですが、そもそも私が住宅営業を始めた1998年当時はローンの返済期間は20年または25年が一般的で、一部の高耐久性木造住宅(現在は廃止)でも30年が最長でした。この30年にしても、それまでの25年から延長されたのが87年で、多くの木造住宅に対する返済期間が35年になったのは住宅金融公庫の制度改定の2000年です。
 また「フラット35」の名称で35年返済をうたった住宅ローンが誕生したのは04年(平成16年)12月であり、大半の方は未だ30年返済すら完了していないことになります。果たして多くの方が35年返済を完済し、老後生活資金も確保できるかどうかは未知数です。
 ここまで最長返済期間が延びた背景は住宅の耐火性能や耐久性の向上にあり、勤労者の支払い能力が上がったからではありません。フラット35は15年以上35年以内であれば1年単位で選択できますし、返済期間が20年以内であれば金利が大きく下がるようになっていますから、返済期間を短くするメリットはさらに大きくなります。

ライフプランを考える

 ローンは一時の損得で決めてはいけません。子供の教育費が家計を圧迫する期間には、一時的に支払えなくなる可能性もあります。逆に変動金利で将来は返済金額が大きく上がったとしても、収入や支出の状況によっては返済が可能かもしれません。その辺を判断するためには、キャッシュフロー表を作成すると良いでしょう。繰り上げ返済の可否も判断できるようになるはずです。
 住宅購入者の中には子育て世代も多いわけですが、住宅購入から20年近くは子供の教育費に貯蓄の大半が使われるのが現実です。教育費に充てるべきお金をローン返済に回してしまっては本末転倒です。
 そして、シミュレーションしてみると、厄介なのは金利の変動です。過去の統計から見ると10年以内に金利が2%高騰する確率は低いといえますが、返済期間が長くなると話は別です。バブルの頃は1年間で2%以上高騰した事実もあり、将来に不確定要素を持ち込まないためにも、返済額を抑えるか、低金利の固定金利を利用し、計画しやすい将来を手に入れるのが良いでしょう。
 変動金利と固定金利の金利差は、金利上昇リスクを抑えるための保険料のようなもの。リスクの高い人は保険料を払って固定金利、リスクの低い人は保険料をカットして変動金利という考え方を軸にしてはいかがでしょうか。リスクの高い人ほどコストを負担するのは、一般的な保険と同じです。

 最後に、あまり知られていませんが金利は値引き交渉が可能です。最優遇金利よりもさらに引き下げられますが、家電量販店で他店の価格を見せて値引き交渉するのと同様、他の金融機関の方が低金利である事実を示さなければなりません。借りる方の「属性」によっても可否は異なりますが、他の金融機関との金利比較表を持ち込むとスムーズに話が進みます。これまでも交渉に成功した事例は多いので、諦めずにお試しください。

▼(参考)住宅ローン金利比較(全国版、2015年4月)
http://www.fpi-j.com/guide/report/index.html

このコラムについて

 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は隔週水曜日です。

市川 貴博(いちかわ・たかひろ)
市川 貴博

 生活経済研究所長野 主任研究員。
住宅会社のトップセールスとして活躍する傍ら、顧客の住宅ローンとライフプランを真剣に考えるようになり、労働者のマイホーム取得時の総合アドバイスと資金計画を多数サポート。2011年労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」に参画後、労働組合のコンサルタントとして全国で講演中。CFP認定者


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