• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
日経マネーDIGITAL

FP快刀乱麻

給付まで考えたい地震補償の選択

2016年2月26日(金)

 地震に対する補償は、保険会社が窓口となる地震保険と共済団体が扱う自然災害共済との2つに大別されます。両者の違いは、補償範囲や掛け金はもちろんのこと、その給付にもあります。

加入限度額の違い

 地震保険は、保険責任を政府が再保険し保険料の管理運用も行うので、どの保険会社から加入しても補償内容や保険料などは同一です。単独での加入はできず火災保険に付帯する形で、元となる火災保険金額の30%から50%の範囲で加入金額を設定します。

 一方、共済団体の全労済の場合は、地震を含む自然災害共済も単独加入はできず、火災共済に付帯する点では地震保険と変わりません。違いは加入比率で、元となる火災共済の30%が限度です(注1)。

給付率の違い

 加入限度額だけを見ると、地震保険の方が手厚いようにも感じますが、給付率からは意外なことが分かります。

 地震保険の給付は(1)全損(2)半損(3)一部損の3つに区分され、それぞれ加入金額の(1)100%(2)50%(3)5%が支払われます(注2)。それに対して自然災害共済は【1】全壊【2】大規模半壊【3】半壊【4】一部壊に4区分され、それぞれ加入金額の【1】100%【2】60%【3】50%【4】10%が支払われます。

 (1)全損と【1】全壊の給付率は100%で差がないものの、それ以外の給付率では自然災害共済がやや上回っています。半壊が2つに細分化され【2】大規模半壊だと(2)半損よりも10%多い60%が支払われ、【4】一部壊でも(3)一部損より5%多い10%が給付されるからです。

給付額の違い

 このことから、加入限度額の低い自然災害共済が給付額では逆転するケースも発生します。例えば3000万円の建物に地震補償を付けた場合、地震保険なら50%の1500万円が、自然災害共済なら30%の900万円がそれぞれ加入限度となります。

 上限額自体は地震保険が勝るものの、(3)一部損の場合の給付額が75万円(1500万円×給付率5%)なのに対し、【4】一部壊は90万円(900万円×給付率10%)となり、自然災害共済の給付額の方が多くなるのです。

給付の実態

 東日本大震災における地震保険の「損害区分別支払状況」(注3)を見ると、建物への支払い件数のうち、(3)の一部損への支払いが78.8%で、実に全体の8割弱を占めたことが分かります(注4)。

 (3)一部損に支払われた保険金額は計2712億円で、支払件数46.6万件で割ると1件当たり平均約58万2000円が支払われた計算です。一部損の支払いが5%であることから逆算すると、地震保険の加入金額はおよそ1164万円で、地震保険を上限の50%まで加入していた場合、元となる火災保険の加入金額はおよそ2328万円が平均値になります。

 もしこの世帯が、自然災害共済に加入していたとしたら、【4】の一部壊の給付額は69万8000円(注5)となり、地震保険よりも約2割多い共済金を得ていたことになります。

給付まで含めた選択

 大規模な損害では加入限度額の少ない自然災害共済が不利なものの(注6)、小規模の損害では給付額が逆転するように、有利な選択は世帯のリスクごとに変わります。

 2017年1月からは地震保険の損害が4区分になり、現行の半損(50%支払)が小半損(30%支払)と大半損(60%支払)に細分化されます。リスクごとに有利な選択がさらに複雑化することになり、加入先の再検討を迫られる世帯が増えるかもしれません。
 

(注1) 大型タイプの場合

(注2) ただし(1)全損は時価が限度 (2)半損は時価の50%が限度 (3)一部損は時価の5%が限度

(注3)一般社団法人 日本損害保険協会、日本地震再保険株式会社「安定的な地震保険制度の運営に向けて」平成24年による

(注4) 全損の件数は全体のわずか4.8%、半損は16.4%

(注5) 火災共済2,328万円、自然災害共済には上限の30%に当たる698万円。一部壊はその10%(69万8000円)

(注6)実際の取得価額にかかわらず、建物の所在地・構造・延床面積で加入額が決まるため、ローコスト住宅などの加入では給付額が地震保険よりも相当に多くなる場合もある

このコラムについて

 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は隔週水曜日です。

関口 輝(せきぐち・あきら)
関口 輝

 生活経済研究所長野 主任研究員。住宅メーカー、損害保険会社と転職を経る中で、“顧客にはお金の真実が全く伝えられていない現状”を目の当たりにする。一般勤労者が正しい知識と問題意識を持つことの重要性を認識し、2001年労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」に参画。現在、非営利活動団体(労働組合・関連団体)へ活動の中心をシフトし、お金の真実を伝えるべく講演を中心に精力的に活動中。AFP認定者


日経マネーメールマガジンの登録(無料)はこちら

日経マネーのムック&書籍紹介

  • 『ふるさと納税のすべてが分かる本 2017年版』

    11月22日発売(815円+税)

    昨年好評だった「ふるさと納税」ムックの2017年版が発売になりました。この本では、まだふるさと納税をやったことがないという人にも分かりやすく、寄付の仕方や、減税の仕組み、確定申告の手続きなどを解説。最新の返礼品も260品ご紹介しています。実質2000円の負担で様々な返礼品が貰えるこの制度、利用しないのは損です!

  • 『老後不安を解消!! 確定拠出年金(DC)をはじめよう』

    11月4日発売(1000円+税)

    老後資産づくりのノウハウがつまった一冊。2017年から誰でも使えるようになる「確定拠出年金(DC)」は、 “幸せ老後"を迎えるために欠かせない資産形成の道具です。その仕組みやメリット、活用テクニックを分かりやすく解説します。さらに、投資信託の積み立てや株式投資、外貨投資などの資産運用術について多方面からまとめています。

  • 『不動産で億万長者!』

    10月31日発売(1000円+税)

    不動産を活用した資産形成の本。「都心部・地方」「新築・中古」「一棟・一室・戸建て」と分け、それぞれの投資法の長所と注意点を分析。どの最寄り駅の物件がいいのかを選ぶ参考として「200駅 三大都市圏中古マンション利回りマップ」「家賃が下がりにくい駅 80駅」と保存版データを掲載。さらに「海外不動産投資」「REIT・不動産クラウドファンディング」など。

  • 『退職までやっておくべきこと!サラリーマンの為の退活読本』

    9月2日発売(1000円+税)

    なんとなく定年が気になってきた世代のサラリーマンが抱く疑問に答える1冊。50代で早期退職したら年金や退職金はいくら減る? サラリーマンOBは受け取った退職金をどうやって使っている? おひとり様はどんな老後準備をしておけばいい? 定年後の移住はどんな感じ? 60歳以降も働くとしたらどんな仕事でいくら稼げる?などなど、ちょっと気になるサラリーマンの定年後の生活を豊富な事例を交えながら紹介。

  • 『間違いだらけの相続&贈与』

    8月3日発売(926円+税)

    日経ビジネスとの共同ムック。2015年から相続税の大増税が行われ、課税対象になる一般家庭も増えています。しかし、間違った相続税対策も多く、それでは却って損をしかねません。「腕利き税理士&弁護士が教える賢い相続」など、このムックで正しい対策を知り、今すぐ始めましょう。

  • 『国債が暴落しても長期投資家は平気だよ』

    4月21日発売(1500円+税)

    日本国債はバブルとも言われる高値続き(利回りは低下)で、いつ暴落してもおかしくないと言われています。万一そうなれば経済の大混乱は避けられませんが、株式に長期投資していれば乗り越えられる、と澤上篤人さんは説きます。第2部ではさわかみファンドCIOの草刈貴弘さんが、サバイバルに役立つ銘柄選びの方法を伝授します。