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FP快刀乱麻

先進医療も健康保険が使える治療になる?

2016年2月10日(水)

がん粒子線治療の一部が健康保険対象に

 厚労省の諮問機関、中央社会保険医療協議会が1月20日に承認した「がん粒子線治療の一部を健康保険の適用とする」というニュースを、関心を持って見聞きした人は多いのではないでしょうか。がん粒子線治療とは、医療保険やがん保険のCMで耳にすることが多くなった重粒子線治療、陽子線治療のことですが、これらは「先進医療」なので、自己負担となる技術料が300万円程度かかります。ところが、健康保険が使えるようになれば高額療養費も適用され、治療費の負担はかなり下がります。

 ただし、今回健康保険の対象となるのは一部のがんに限られます。陽子線治療は小児がん、重粒子線治療は手術による切除が難しい骨軟部腫瘍のみで、その他のがんについては引き続き先進医療の扱いとなります。先進医療が保険導入に向けた検討がなされるのは、2年に1回の診療報酬改定時となっています。

 「いよいよ認められるのか」と個人的に感慨深いのですが、それは2012年に粒子線治療施設を見学したときに聞いた話が4年を経て実現するからです。粒子線治療の保険収載の可能性を質問したところ、重粒子線治療を行う千葉市稲毛区の放射線医学総合研究所では「悪性骨肉腫(骨軟部腫瘍の一種)に対する効果が見られ、将来的に保険収載の可能性がある」、陽子線治療を行う筑波大学付属病院では「がん以外の細胞にはダメージを与えないことから、成長途中にある子供のがん治療に保険収載の可能性がある」とのことでした。

そもそも先進医療は研究段階の治療

 このことからわかるように、先進医療は技術的妥当性(有効性、安全性、技術的成熟度)や社会的妥当性(倫理性、普及性、費用対効果)が確認されれば、保険適用の治療となる可能性のあるものです。「先進」という文字が、これまでにない絶大な効果がある治療というイメージを醸し出しますが、実際には臨床研究段階の治療で効果を確認中の治療だということを知っておく必要があります。そういう意味では、保険収載された治療こそ、効果が確認された信頼おける治療ということができそうです。

 研究は日進月歩。先進医療も常に新しい治療技術が申請され、認められれば先進医療のラインアップに加わります。逆に、医療機関が取り下げたり治療効果が認められず取り消しとなったりで、消えていくものもあります。

 1月20日に中央社会保険医療協議会が提出した報告書「既存の先進医療に関する保険導入等について」を見ると、平成 27 年6月 30 日時点で先進医療として告示されている先進医療 A の 61 技術と総括報告書が提出されている先進医療 B の2技術のうち、重粒子線治療、陽子線治療を含む14種類が、「有効性、効率性等に鑑み、保険導入することが適切」とされています。これらは先進医療から外れ、保険診療となるわけです。

 また、「有効性、効率性等が十分に示されていないことから先進医療から削除する方向で検討することが適当」とされる技術も11種類あり、やはり先進医療ではなくなります。そして、39 技術については、「保険導入の適否を評価するために必要な有効性、効率性等が十分に示されていないことから、引き続き先進医療で実施されることが適当」と、臨床研究の継続を求める報告となっています。先進医療は有効性、効率性などを評価するための段階の治療であることがわかります。

不安に備える前に

 粒子線治療が300万円程度かかることから、先進医療は高額とのイメージがあります。そのことが「高額なんだから先進医療は効果も高いはず」と連想される要因かもしれません。実際には、今回保険収載される14種類のうち、300万円といった高額の技術料がかかるのは重粒子線治療、陽子線治療くらい。あくまで1件あたりの平均値ですが、大半が30万円以下で、1万円以下のものもあります。引き続き先進医療で実施される技術についても、高額のものはほとんどありません。

 ただ、今後高額の技術が登場する可能性はあります。2010年11月に先進医療Bに承認された「重症低血糖発作を伴うインスリン依存性糖尿病に対する心停止ドナーからの膵島(すいとう)移植」という技術があり、トータルで1300万円かかるとされています(原則 3 回まで実施)。これの実績報告は、ようやく13年7月~14年6月に4件出ており、1件当たりの平均値として395万円がかかっています。14年7月~15年6月も4件の実績があり、1件当たりの平均値は220万円。これだけではトータル1300万円かかるか推測できませんが、高額なのは確かです。とはいえ、全額が患者負担とはならず、実施機関が負担している部分もあるようです。

 この先進医療技術が承認されて以降、多くの生命保険会社が先進医療保障2000万円限度の医療保険・がん保険を販売するようになりました。それまでは1000万円限度が一般的で、1000万円でも粒子線治療を受けるのに十分な保障額ですが、それを超える金額の技術が登場した以上、安心をうたう保険商品としては対応せざるを得ないというところでしょう。
 今後も様々な不安要素に対応する保険商品が開発されると思いますが、保険で備えないと安心して暮らせないリスクかどうか、少し情報収集の範囲を広げて見極めることが大切です。

このコラムについて

 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は隔週水曜日です。

浅田 里花(あさだ・りか)
浅田 里花

 (株)生活設計塾クルー取締役。CFP。証券会社、独立系FP会社を経て独立。生活設計のアドバイスのほか、執筆や講演活動をゆるゆる行っている。クルーでは毎月マネーセミナーを開催中。詳細ホームページhttp://www.fp-clue.com/の「クルーセミナー」参照。


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