こんな友とのやり取りを思い出せば、カールロジャースの言う
「人は、自分の経験が尊重され、理解されていると認識すると、相手を信頼する」
本当だなと思うと同時に、信頼関係のできている相手とならアクティブリスニングを知らなくても自然と積極的に傾聴することができている事実に気づきます。

 そこでアクティブリスニングの実習の際には、親友との会話を紹介してから、取り組むように改訂しました。あまり表情や問いかけにこだわらずに、親しい友人と話しているような気持になることを優先して実習をするようになったことで、5分間の実習が長いと感ずるような人はいなくなりました。

 指導者と学習者の間にも信頼関係が欠かせません。指導者の信頼があるからこそ、学習者の信頼が得られます。相手を信頼して、アクティブリスニングを実践することが指導者に求められていると思います。

 指導の場面で重要な役割を果たす「コミュニケーション」。プロジェクト管理の場面でもプロジェクト計画を立てる際に「コミュニケーション計画を策定する」ことがプロジェクトを成功に導くために欠かせないとPMBOKが推奨しています。と同様に指導の場面においても場当たり的な「発問」ではなく、教案設計の時点でコミュニケーション計画を策定しておくことが望ましいです。前回掲載したストーリーボードに「発問」の場面とその内容についても記載しておくのが一 般的な方法です。

 さて、15人以上もいるような研修で「双方向コミュニケーション」を実施することは可能でしょうか?指導者1人に対して、nの学習者ととらえれば、1:nの関係ですから、双方向のコミュニケーションは困難である。と考えても不思議ではありません。しかし、インストラクションデザインの分野では、
「1:nではなく、(1:1)×nの関係で双方向コミュニケーションする」
と学びます。

 「発問」を上手く活用して、1:1の双方向のやり取りを生み出し、そのやり取りをn回繰り返すことで、「双方向コミュニケーションを実践する」ことができるというのです。

 これは言うは易しで、誰に質問したか、どんな反応だったかをうまく記憶しておかなければならないので訓練が必要です。でも、(1:1)×nの法則を理解してから、私自身の「発問」も徐々に進化してきているように感じています。

 皆さんも(1:1)×nの双方向コミュニケーションを意識されては如何でしょう?ここでもカールロジャースの言葉を念頭において取り組むことが大事だと感じています。

安藤 良治(あんどう・よしはる) PSマネジメントコンサルティング 代表
安藤 良治

 1956年生まれ。メーカー系ソフトベンダに入社し、27年間教育、採用、組織・人事と人事畑一筋に歩んできた。その間、インフォーマルグループ“夢現会”を社内に立ち上げ、社員の自立化、第一人称で自社を語る人財の育成に力を注ぎ、人事部長を経て2005年に独立。独立後は、仲間と実践的な問題発見・開発技法「創造的実行プロセス(B-CEP:ビーセップと呼ぶ)」の開発と普及を柱に、プロジェクトマネージャー能力強化研修、ビジネスアナリシス実践研修、ITリーダー研修、ITシミュレーション研修、PBL型新人研修(3ヶ月)の運営責任者等を担当している。また、NPO法人ITスキル研究フォーラムの人財育成コンサルタントとして“人財育成のツボ“の情報発信や、一般社団法人IT人材育成協会(ITHRD)において「ラーニングファシリテータ育成」プログラムの開発と普及活動を行い、主としてIT業界の人材育成に注力した活動を行っている。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。