アクティブリスニング(積極的傾聴法)を活用する

 職場の指導に良くあることですが、学習者が行き詰まっているような状況を見ると、その原因について指導者は自身の経験から「仮説」を考えます。そしてその仮説をそのまま問いかけると、学習者は「はい」「いいえ」のどちらかで回答することになります。つまり、経験のある分野では「閉じた質問」を使う傾向が強いということになります。学習者に考えさせたい場合などは、仮説が思い浮かんでもぐっと我慢して「開いた質問」を使うことで、自ら原因を考える学びの場 とすることができます。

 この2種類の問いかけと合わせてコミュニケーションのテーマで良く学習するのが、心理学者カールロジャースが開発した「アクティブリスニング」です。カールロジャースは、「人は、自分の経験が尊重され、理解されていると認識すると、相手を信頼する」ことを発見し、信頼関係を築き相手から本音を引き出すための手法として「アクティブリスニング(積極的傾聴法)」を開発しました。コミュニケーション教育の場面では、必ずテーマになる手法の一つです。

 私はこのテーマの学習の際、3人一組での実習をよく行います。実習の主役である「聴き手」、そして「話し手」、もう一人「オブザーバ」を置いて体験します。この実習では、3人目の「オブザーバ」にもっとも多くの気付きがあるようです。積極的に聴くためには、「相手の目を見て」、「共感的な表情で」、「効果的にフィードバックやあいづちを打つ」ことが重要、と実習を通じて学ぶのです。

 私の反省として、アクティブリスニングの学習の際に、姿勢や問いかけのスタイルにこだわり、形ばかりをその場で覚えてもらう指導をしていたことがありました。これだと一回5分程度の実習も二人の会話は余り続かず、5分が長く感じることもしばしばありました。

 「アクティブリスニングは難しい」と実感する実習では、職場に戻って使える手法とはなりません。そこで自分自身「どんな時にアクティブリスニングを使っているだろう?」と考えました。相手から信頼関係を得るための手法でもありますが、既に信頼関係にある仲間との会話ではどうでしょう?

 親友から電話あるいはメールがきて、「今日、時間ない?」と聞かれれば、多少の融通はしてでもその友人のために時間を設けます。大事な相手だからこそ、自然に「時間、あるよ!」と答えて、一緒に居酒屋にでも行きます。

 久しぶりに会った際にも、その時の第一声は「おい、どうした?」と、相手が聴いて欲しいと思っていることを話しやすく促します。

 例えば職場の愚痴のような話になることも多いですが、その愚痴を聞いて諭すようなことはせずに、良く聴き、共感的な態度で一緒にその出来事に腹を立てたり、悩んだりするものです。その内親友の方から「お前に話して何だかすっきりした、まぁしょうがないよな、また頑張るよ」自分で解決するような話が出てくると聴き役としての私の役割は終了、そこからはいつものように親しい友との脈略もない楽しい会話に入ります。

 私が何かを聴いてもらいたい時には、今度は私からその親友にメールします。「今日、時間ない?」そして万難を排して時間を作ってくれた友は、会うなり「おい、どうした?」今度は友が聴き役になって私に話しを聞いてくれます。