安藤 良治
ITスキル研究フォーラム 人財育成コンサルタントPSマネジメントコンサルティング 代表

 「コミュニケーション」を辞書で調べると、「社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。言語・文字・身振りなどを媒介として行われる」とあります。

 「コミュニケーション」という言葉自体に、互いに伝達し合うことの意味があるわけですから、敢えて「双方向」と付した今回のタイトルは、不自然な表現と感じる方もおられるでしょう。

 しかしながら、育成の場面において「指導者」と「学習者」の関係は、指導者の一方的な話が多いことに思い当たる方は多いのではないでしょうか。

 一対一の個別指導の場面においても指導者が一方的に「教え込み」、学習者の理解を確かめないまま、「教えた」というアリバイをもとに放置しているケース、が、職場の指導に多く見られます。「教えたのにできないのは学習者が学習しないため」と突き放してしまっては、学習者の意欲はどんどん低下して、職場での戦力として育ってくれません。

育成の場で求められるコミュニケーション

 育成の場面にこそ、「互いに意志や感情、思考を伝達し合う、双方向のコミュニケーション」が必要だと感じます。

 「育成の場面における双方向コミュニケーション」の鍵は、「発問」にあると言います。「発問」とは、指導者が学習者に問いかけをする行為で、学習者から回答を得た後に、その問いかけの内容に関して、指導者が薀蓄を語るやり取りをいいます。答えを知らないで問う「質問」とは異なり、「発問」は指導の場面で学習者の理解度を確認する、気持ちを理解するうえで重要な行為とされています。

 大勢を対象にした学習の場面では、全員を対象に問いを投げかける「全員対象発問」、ある人を指名して問う「指名発問」、席の順番や氏名順など順番に問う「リレー発問」などを使って、指導者は一方的な話に終始せず、時折学習者の理解度を確認したり、学習者の体験を引き出す中から伝えたい内容に関しての興味を高め、維持することに努めます。

 学習者が答えづらい内容や批判的な意見が返ってきそうな内容に関しては、問いを投げかけてから指導者自身がその薀蓄を語り出す「自問自答型発問」をうまく利用することで、一方的な話よりも「対話」を演出することで理解を深める手法を使うこともあります。

 ジャーナリストの池上彰さんは、テレビ番組で出演者から質問を受けると良く「いい質問ですね!」と答えてから、少しその質問に咀嚼を加えてから、質問者に問いを投げ返す、あるいは他の出演者に問いかける「投げ返し発問」を使います。この手法は、話題を発展させることに有効なだけでなく、とっさの質問に良い薀蓄が思いつかない場合に、他者の考えも伺いながら自分の考えを整理するために使うこともできます。

 発問を上手く活用することで、指導者の一方的な話でなく、学習者との対話型「双方向」のコミュニケーションに近づいてきます。

 問いかけのスタイルには、学習者が「はい」あるいは「いいえ」で回答できる「閉じた質問」と、「はい」「いいえ」では答えられず自分の考えや事実を回答しなければならない「開いた質問」があります。指導の場面では意識して「開いた質問」を用いて相手の考えを引き出したいものです。