安藤 良治
ITスキル研究フォーラム 人財育成コンサルタントPSマネジメントコンサルティング 代表

 「新入社員の時、配属された職場でそこにあるマニュアルを読むよう指示され、特に指導プログラムのないまま過ごした方はいますか?」

 30代から40代を対象にした主任研修を担当した際、冒頭の質問を受講者に投げかけてみました。私が社会人になった頃は、配属当初は「マニュアル読みが仕事」が当たり前の状況でした。少しは改善されていたのだろうと期待して質問したものの、何と半数以上の人が手を挙げました。

 まだまだ、体系的な学習環境ができていない職場の実態を目の当たりにして、「このままではグローバル競争の中で取り残される!」と危機感を覚えました。

 「マニュアル読み」を配属当初の「仕事」として育てられた人は、それを当り前の文化として、指導者となった今でも同じように繰り返しています。全社的な取り組みとして「職場での学習の文化」を作らなければ、現場任せに「うまいことやれ」と言っても変わるものではありません。

 「職場指導員研修」などを導入している企業は、「職場で体系的に学習する」文化作りに全社的に取り組まれている例と言えるでしょう。こうした取り組みをしている企業とそうでない企業の実力は、今後ますます開いていくのではないでしょうか。

 では、なぜ学習する文化を作る必要があるのか。

 「学びたい」という強い意志と目標がある人は一人でも学べます。例えマニュアルだけでも、そこから吸収することもできます。しかし、学習の支援をしてくれる人もなく、自己学習だけで吸収することは、意思の継続の面からも、吸収のスピードの観点からも問題があります。

 「OJL(On the Job Learning)の定着と実践」をテーマに本コラムで連載しているのは、「育てる人(ラーニングファシリテータ)を育てる」ことが重要になると考えるからです。「学びの支援」をする存在となって学習者に積極的に関わることで、一人で学習していてはとても長く時間がかかることを、短期的にそして多くの目的を達成することが可能になるはずです。

 「当社では、OJL(On the Job Learning)の文化ができていないな」と感じておられる方は、その改善に向けてその方策を一緒に考えましょう。

 前置きが長くなりました。本題に入ります。ロバート・ガニエ博士(1916-2002)は、教育システム設計の第一人者として、教育学、ID(インストラクショナルデザイン)を学ぶ者にとってはその存在を知らない人はいません。中でも学習の情報処理理論の研究と効果的に学習するための「教授事象」の研究が有名です。

 「ガニエの9教授事象」をインターネットで検索すれば、ある学習モデルの教授事象として、

  • 導  入 1.学習者の注意を喚起する
  •      2.学習者に目標を知らせる
  •      3.前提条件を思い出させる
  • 情報提示 4.新しい事項を提示する
  •      5.学習の指針を与える
  • 学習活動 6.練習の機会をつくる
  •      7.フィードバックを与える
  • まとめ  8.学習の成果を評価する
  •      9.保持と転移を高める
この9つの教授事象が出てきます。

 これらの教授事象は、指導する側が学習者に対し、外側からどのような刺激を与えるかという観点から、紹介されたものです。この教授事象をガニエは学習者の内側の変化に着目してこの理論を組み立てています。