学習者のモデルを明確にする

 「学習者は誰で、どんな素養を持ち、どんなことに興味・関心を示すか?」 教案設計では、教案の中身を議論する前に学習者のモデル化に取り組むことを求めています。

 前述の3年目研修について補足します。私は昨年、つまり2年目の彼らと「考える力の強化」をテーマに問題解決法の学習を行いました。

 2年目で「考える力の強化」、3年目で「巻き込み力の強化」をテーマとした研修を行なうことは、顧客であるメーカーの方針によるものです。幸運にも2年連続して私が担当させていただいたことで、いろんなことを考え、感じることができました。

 2年目の「問題解決法」の学習はやや難易度が高く、「理解した」というよりも考える習慣の緒に就いたレベルの学習になっていたかもしれません。正直もう少し経験を積んでからの方が吸収できるかもしれないと思いました。1年経った彼らを見て、その思いは強く働きました。

 一方、3年目に行った「巻き込み力の強化」のテーマは、対人関係スキルを磨く内容ですので、内容的には特別な知識がなくても大丈夫。例えば新入社員でも分かるものです。難易度はそれほど高くありません。

 単純に難易度から判断すれば、2年目と3年目のテーマを入れ替えた方が良いとも考えられます。

 しかし、そう単純なものではありません。3年目になって議論している彼らの様子を見て、2年目よりも仕事を任されている自覚、自分の責任を強く感じだした発言が多いことに気づきました。彼ら自身が、責任ある仕事に取り組む中で、「対人関係強化」の必要性に気付いている今だからこそ、この議論ができるのです。学習する内容は、自ら学びたいと感じるテーマが重要で、単に順番に学習すれば良いのではなく、うまく動機づけできる内容をテーマとして選定する必要があります。

 そのためには、「学習者は誰で、どんな素養を持ち、どんなことに興味・関心を示すか?」を明らかにすることが必要です。

安藤 良治(あんどう・よしはる) PSマネジメントコンサルティング 代表
安藤 良治

 1956年生まれ。メーカー系ソフトベンダに入社し、27年間教育、採用、組織・人事と人事畑一筋に歩んできた。その間、インフォーマルグループ“夢現会”を社内に立ち上げ、社員の自立化、第一人称で自社を語る人財の育成に力を注ぎ、人事部長を経て2005年に独立。独立後は、仲間と実践的な問題発見・開発技法「創造的実行プロセス(B-CEP:ビーセップと呼ぶ)」の開発と普及を柱に、プロジェクトマネージャー能力強化研修、ビジネスアナリシス実践研修、ITリーダー研修、ITシミュレーション研修、PBL型新人研修(3ヶ月)の運営責任者等を担当している。また、NPO法人ITスキル研究フォーラムの人財育成コンサルタントとして“人財育成のツボ“の情報発信や、一般社団法人IT人材育成協会(ITHRD)において「ラーニングファシリテータ育成」プログラムの開発と普及活動を行い、主としてIT業界の人材育成に注力した活動を行っている。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。