パブリックスピーキングは習得しうる “スキル”

 海外で通用するパブリックスピーキング、というと、英語を勉強しなければ!と考える人が多いものです。しかし、ノンネイティブである私たちにとって、ネイティブと対等に話せる英語力を養うのは至難の業。一方でパブリックスピーキングは、習得しうる“スキル”です。

 パブリックスピーキングの極意は、聞いている相手がたった一人の営業相手でも、何百人の聴衆でも、彼らの心を捉えて放さず、心を大きく動かす、ということです。実はそこに言語力はあまり必要ではありません。どの言語を使う場合でも、パブリックスピーキングのスキルの上達にフォーカスすることで、今あなたが持っている言語力のままで、異文化の人相手でも、格段に伝わりやすいスピーチを実現することができるのです。それこそが、グローバル・パブリックスピーキングです。

 本コラムでは、グローバル・パブリックスピーキングのコツをご紹介していきます。

 先日、ニューヨークで、桂三輝(かつらサンシャイン)さんという方の英語落語公演を観る機会がありました。

 筆者は特に落語好きというわけではなく、テレビでは見たことはありますが、寄席に行くのは、実は初めて。ニューヨークに住んでいると、いろんな日本のモノ・コトがやってきて、日本にいたらわざわざ体験しないようなことも「やってみようかな?」「行ってみようかな?」と思えるよさがあります。今回の落語もまさにそれ。生・落語、せっかくだから行ってみよう!と思ったわけですが、これが、実に多くの学びがあったのです。

 実はサンシャインさんはカナダ人。外国人で落語家になったのは、明治・大正期に活躍した、初代快楽亭ブラックに続いて、2人目とのこと。現在ではほかにも数名外国人落語家がいるようですが、サンシャインさんが落語家デビューをした当時は、およそ100年ぶりの外国人落語家誕生、そして上方落語会では初めての外国人だったそうです。

 サンシャインさんは、かの有名な桂文枝師匠(“桂三枝”でご存じの方が多いのでは)に弟子入りし、現在は日本語での落語はもちろん、英語での落語を世界各国に広めていらっしゃいます。ニューヨーク以外に、ロンドンでも公演をされているのですが、75分間の公演、笑い続けました。外国人だからこその視点で、日本語や日本文化を面白おかしく、独特の軽妙な語り口でテンポよく噺していくさまは、海外在住22年の私のツボにはまりまくりです。

 でも、噺家を生業としている、プロとしてのサンシャインさんの技の極みは、そこ、ではなかったのです。

世界に通ずるストーリー

 日本の古典ストーリーを、日本の伝統技術で、英語で、一人芝居のように何役も演じ分けながら語り、文化も価値観も笑いのツボも違う人たち全員を、同じポイントで同じタイミングで笑わせる。

 これ、並大抵の努力では実現できないアートフォームです。毎日毎日何年もかけて学び続け積み重ねた修業のたまものにほかなりません。何をどんなふうに修業したらこの境地に行き着けるのか。英語で、アメリカで、プロスピーカーを生業とする筆者には興味津々です。

 サンシャインさんの落語は上方落語(大阪)ですが、日本語だと、大阪弁であるだけで面白い、ということがあると思います。

 ところが、英語でやる際、同じような感覚で、アメリカ南部なまりやスコットランドなまりで話したり、スラングをたくさん入れて話そうとしたりすると、お客はこれが日本の話かアメリカ南部の話かスコットランドの話か混乱してしまう。言葉のイメージが邪魔をして、お客様が本来の世界観に入り込めません。