リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

ハリウッド映画のようにストーリーを語る

 ヒットするハリウッド映画には共通点があります。それはアリストテレスも提唱した、「三幕構成」でストーリーの骨格が組み立てられている、ということです。脚本技術の指導者として名高いシド・フィールドは、このアリストテレスの三幕構成を活用したシナリオメソッドを生み出し、「ターミネーター」、「タイタニック」、「アバター」監督・脚本のジェームス・キャメロンをはじめ、「羊たちの沈黙」の脚本テッド・タリーほか、数々の映画監督や脚本家たちを指導してきました。

 シド・フィールドは次のように言っています:

「脚本は技術であり、芸術である。

すべてのドラマは葛藤である。
葛藤無しでは、アクションは生まれない。
アクションがなければ、キャラクターを作ることが出来ない。
キャラクターなしでは、ストーリーは生まれない。
ストーリーがなければ、脚本は存在しない」

 実はこれは、スピーチにおけるストーリー構成についても同じことが言えるのです。「脚本」を「スピーチ」に置き換えてみてください。

 情報をストーリーに、ストーリーをドラマにするという点では映画もスピーチも同じですが、違うのは、映画はドラマを映像と音で語るのに対し、スピーチはドラマを言葉で語ると言う点です。もちろん、スライドや映像などを使いながらスピーチを行う場合もあるでしょうが、スピーチの醍醐味はやはり、「言葉で五感を刺激する」というところにあります。

 そして、ストーリーを情景として鮮明に思い浮かべられれば思い浮かべられるほど、そのストーリーは強く印象に残るのです。

 そのためのストーリー構築モデルが、「9つのC」なのです。シド・フィールドの三幕構成シナリオメソッドと9つのCを重ね合わせて解説しましょう。

第一幕:ドラマのSet-upをする
①Curiosity(好奇心)
②Circumstance(状況)
③Characters(キャラクター)

 筆者の4歳の娘も未だにどっぷりはまっている2013年のヒット映画、「アナと雪の女王」を例にとってみましょう。

 第一幕は、幼年時代のアナとエルサが氷の魔法で一緒に仲良く遊び、アナが事故に遭うシーンから始まります。アナはトロールの長老の力で回復しますが、ここでアナの記憶が消されるため、エルサが自分を遠ざける理由がアナには分からなくなってしまいます。ストーリー展開のきっかけとなる出来事がダイナミックに起こり、主人公に直面するのです。

 この先どうなっていくのか?Curiosity(好奇心)が高められます。エルサは魔法の力をコントロールできなくなり、その力からアナを守るために姉妹が引き離されてしまいます。その後、両親の国王夫妻が海難事故で亡くなり、姉妹が途方に暮れるまでが、第一幕のセットアップにあたります。ここでは、主人公のアナ、姉のエルサ、氷売りのクリストフ、トナカイのスヴェン、および雪だるまのオラフといったCharacters(キャラクター)が次々と登場します。

 そして、姉妹が二人きりであり、エルサの魔法とそれを恐れるエルサ自身のために、姉妹が離ればなれになっている孤独な状況(Circumstance)が描かれています。主人公はこの状況改善に取り組もうと試みますが、出来事はその次に待ち受ける、更にドラマティックなシチュエーションにつながります(④Conflictへとつながっていきます)。

第二幕:葛藤と変化のクライマックス
④Conflict(葛藤や障害)
⑤Cure(救世主)
⑥Change(変化)
⑦Conversations in Dialogue(会話調の対話)

 第一幕では、きっかけとなる出来事がダイナミックに起こり、主人公に直面しました。第二幕では、主人公が相次ぐ困難を乗り越え、目的を成しとげようとします。主人公の目的と欲求が定まることにより、そのために乗り越えなければならない障害も設定され、主人公はその障害に打ち勝つことが求められます。第二幕においては、主人公の物理的または心理的な障害が浮き彫りにされ、主人公の試練はクライマックスに向けて、いよいよ困難なものとなり、主人公は窮地に追いやられます。Conflict(葛藤)です。