アリストテレスが「説得の3要素」として挙げているように、論理的アピール、倫理的アピール、そして情緒的アピールの3要素がそろって初めて、人は完全に説得されるのです。

 倫理的アピールは、自社の評判や実績、ブランド力などである程度補えますが、ビジネスプレゼンには、情緒アピールが欠如しているケースが多々あります。それを補ってくれるのが、「ストーリー」です。

 単なる事実を脱して、わが社のストーリー、つまり「コーポレートストーリー」にしなければ、人は心から説得されないのです。

コーポレートストーリーは3つのCに注目

 ストーリーを構築する際、「9つのC」という要素を組み込んでいく手法は、「ストーリーをドラマにする9つのC」で解説しているとおりですが、ビジネスプレゼンで使用する「コーポレートストーリー」には、ハリウッド映画のようなドラマチックさは、確かに少々邪魔になってしまいます。

 コーポレートストーリーを構築する際は、この9つのCの中から、「Conflict」、「Cure」、「Change」の3つのCにフォーカスして構築していくと効果的です。

 通常、「事例紹介」は下記のようなイメージで説明されます:

◆クライアント:通信事業 A社
◆課題:各種サービスが複雑化しており、俊敏かつ柔軟な情報基盤を作ることが必須
◆ソリューション:
 □複雑化する各種サービスを見える化することで、事業プロセスの効率化、資産を削減
◆成果:
 □わが社の商品、「Business Flowchart」を導入することで、資産1/4へ
 □大規模プログラムの開発期間を約30% 短縮し、かつ高品質な開発を実現

 ここに欠けているのは、「Conflict」「Cure」「Change」のうちどれでしょうか?

 「Cure」はわが社の商品、Business Flowchartです。この商品がきっかけとなり、資産と開発期間の削減という「Change」を実現しました。この2つのCは通常、「事例紹介」に含まれています。しかし決定的に欠けているのは、「Conflict」です。

 「Conflict」とは、欠点や欠陥、という意味ではありません。

 ソリューションを提供するにあたり、必ず、なんらかの苦労があったはずです。そして、プレゼンの聞き手の企業でも、もし同商品の導入を決定したら、少なからず、なんらかの障害が必ず出てくるはずです。

 この事例のA社では、どんな障害があったのでしょうか。どんな点に苦労したのでしょうか。どんな人たちがどのような思いでそれに取り組んでいったのでしょうか。その障害を共に越えようとしたことで、クライアントとわが社の合同チームが一体感を感じるきっかけになったということはありましたか? 誰かがふと発した一言から、ひらめきがあったりしなかったでしょうか?

 例えば、上記の「事例」に「Conflict」を加えてみると、こんなに豊かで、「ヒトの顔が見える」ストーリーになるのです。