大学卒業後、どの仕事も失敗してうまくいかず、どうしたらいいのか悩んでいたクレッグは、当時のルームメートだったスコットにアドバイスを求めます。「すべて僕の手から離れていくんだ」と絶望的に語るクレッグに、スコットのセリフが間髪いれず入ります:

 「どうがんばっても手から離れてくれなかったあの“ダメ彼女”がいたじゃないか!」

 さらに真剣に悩むクレッグに対しスコットは、「本を読んで自己開発をしろ」というもっともらしいアドバイスをするわけですが、そこで今から本屋に出向いて本を買う気満々のクレッグは、「よし!そうしよう、ここから一番近い本屋はどこだ?」とたずねます。そこでスコットのセリフが再度入ります:

 「知らないよ、僕、本読まないから」。

 スコットにこれらのユーモアあるセリフを言わせたおかげで、全体的にシリアスなトーンのストーリーにもかかわらず、たった六十数秒間の中で、4カ所も笑いが起きています。平均すると15秒に1回です。もちろん、デリバリーの技術や、絶妙な間の取り方も笑いに貢献していることはいうまでもありません。

なぜ、他人に言わせるのか。

 なぜ自分「以外」の登場人物がユーモアのあるセリフを言う必要があるのでしょうか。

 それは、自分自身は、シリアスな状況に陥っている張本人だからです。もしそんな状況にある自分自身(という登場人物)に面白いセリフを言わせたら、それは「後付けで無理やりねじ込んだ感」が伝わってしまいます。その時、そんな気持ちではなかったはずだからです。一方で、その場にいたほかの人物だったならば、深刻な状況でも、それを第三者として捉えることができますから、突拍子もないセリフが出てきても、さほど不自然ではありません。逆にその人物の個性が生き生きと見えてくる効果もあるのです。

 さて、今度は皆さんの番です。苦悩やコンフリクトなどを語るシリアスなストーリーはありますか? その時、その場にいた人は誰でしょうか。その人はなんと言ったのでしょうか? 何かユーモアにつなげられる一言がなかったでしょうか? 探してみましょう。

 ここで1つのコツは、その人物が言った内容全部をセリフとして言わせるのではなく、その内容をコンパクトに要約して、短いセリフとして言わせることです。そうすることで、ユーモアのインパクトが最大化されます。

リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)

アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役
ブレイクスルー・スピーキング代表

リップシャッツ 信元 夏代

アスパイア・インテリジェンス代表
ブレイクスルー・スピーキング代表
 早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーにて消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 TEDxTalk スピーカー。2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修等も行う。
BREAKTHROUGH Speaking: http://www.btspeaking.com
ASPIRE Intelligence: http://www.aspireintelligence.com

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。