パブリックスピーキングは習得しうる “スキル”

 海外で通用するパブリックスピーキング、というと、英語を勉強しなければ!と考える人が多いものです。しかし、ノンネイティブである私たちにとって、ネイティブと対等に話せる英語力を養うのは至難の業。一方でパブリックスピーキングは、習得しうる“スキル”です。

 パブリックスピーキングの極意は、聞いている相手がたった一人の営業相手でも、何百人の聴衆でも、彼らの心を捉えて放さず、心を大きく動かす、ということです。実はそこに言語力はあまり必要ではありません。どの言語を使う場合でも、パブリックスピーキングのスキルの上達にフォーカスすることで、今あなたが持っている言語力のままで、異文化の人相手でも、格段に伝わりやすいスピーチを実現することができるのです。それこそが、グローバル・パブリックスピーキングです。

 本コラムでは、グローバル・パブリックスピーキングのコツをご紹介していきます。

 先日、某グローバルホテルグループの「タイムシェア」のプレゼンテーションを受ける機会がありました。

 タイムシェアとは、世界中に自分の部屋を持つという優雅なライフスタイルを実現する、というコンセプトで、高級コンドミニアム・スタイルの部屋を、特定期間だけ所有し、本当にそこに暮らしているかのようなバケーションを楽しむことができるものです。

 しかしタイムシェアは、不動産売買にも似ており、半永久的な時間と、経済面でのコミットメントが必要になるため、やすやすと購入するような商品サービスではありません。が、それでも買う気にさせてしまうのが、専任セールスマンのプレゼンテクです。

 私はというと、時間面・経済面以外に求めている要素があったため、結局購入には至りませんでしたが、セールスマンのプレゼンテクが非常に素晴らしかったので、どんな点が優れていたのか、分析したいと思います。

人は何を欲するのか

 まずタイムシェアのセールスオフィスに到着すると、すぐにコンピューター画面から、「私の家族の理想のバケーション」に関する質問への回答を入力します。所要時間3分ほどで入力が終わり、コーヒーやクッキーなどを頂きながら待つこと5分弱。担当セールスマンのShakがやってきました。

 セールスマンのShakはアメリカに長く住むパキスタン人。恐らく、最初のアンケートで、私がアメリカ在住暦の長いアジア人であることも分かっていたので彼が私たちの担当になったのでは、と推測します。この時点で既にポテンシャル顧客へのカスタマイズが始まっていたのです!

 にこやかにあいさつをし、デスクに案内すると、Shakは資料などを取りに、1~2分席をはずします。デスク横には大きなスクリーンが設置されており、世界のタイムシェア施設の美しい写真が映し出されます。次々と出てくる写真を見てまず気づきました。冒頭のコンピューターによるアンケートで、「好きなバケーション先」に選んだ、「アジア」、「ヨーロッパ」、「カリブ海」ばかりの写真が出てくるのです。

 顧客の興味に基づきながら、夢のような理想のバケーション映像が次々と映し出される……。Shakのセールストークが始まる前から、既に気分は優雅なタイムシェアオーナーです。Shakの離席は、偶然ではなく、ポテンシャル顧客の心を開くために計算し尽くされたセールスプロセスの一部だったのです。

 Shakがデスクに戻ると、まずは「お互いを個人ベースでよく知ろう」、と、各自自己紹介。次に、「理想のバケーション」について、先ほどのコンピューターアンケートよりももっと深い質問が投げかけられます。

 例えば、「バケーションはあなたにとってどれくらい重要なものなのか、それはなぜか?」、「なんのためにバケーションに行くのか? バケーションから得られる、またはバケーションに求める“よいこと”は?」、「今まで行ったことがなく、ぜひ行ってみたいバケーション先はどこか?」などなどです。