リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

すべての仕事はセールスである

 「セールス」または「営業」と聞くと、ある特定の人たちの仕事だと思われることでしょう。現に、営業部門、セールス部隊など、営業の専門分野が職業カテゴリーとしてあるくらいですから、もしあなたの仕事が人事関連だったら、自分はセールスパーソンだとは決して認識しないことでしょう。しかし、実はすべての人の仕事には「セールス」が含まれているのです。

 あなたの職業が何であれ、仕事をする上で、チームメンバーや上司、部下、顧客、パートナー、プレス、株主……などなど、様々な状況で様々な人たちに対し、自分の意見を受け入れてもらうようコミュニケートをする場面というのは必ずあるはずです。そんな場面では、説得力を持って話し、相手の意識や行動などに変化を及ぼし、問題解決をする、というプロセスが欠かせません。

 これこそが「セールス」なのです。すなわち、セールスというのは何もモノやサービスを売り込む職業のことだけを指すのではないのです。相手を説得する、納得させる、共感させる、賛同させる……ためにコミュニケーションを取ること、それこそがセールスです。パブリックスピーキングは、まさにアイデアを売り込む「セールス」活動です。

 ですから、すべての人は2つの職業を持っているといってよいでしょう。「あなたの職業」そして「もう1つの職業」、つまり「相手を説得するという職業」の2つです。

 しかし最高の「セールスパーソン」は、モノやサービスを売り込みません。そして「売っている」という感覚を相手に与えることがありません。

まず最初に何を売るべきか

 では最高の「セールスパーソン」は、まず何を売るのでしょうか。セールスパーソンであるあなた自身への信頼を得るため、自分自身の売り込みをする、と考える方も多いかもしれません。これも実は大きな間違いです。売るべきものは「結果」です。

 つまり、商品の機能性の高さなどをアピールするのではなく、その商品やサービス、あるいはあなたのアイデアや意見を取り入れたら、どんなベネフィットが得られるのか。そしてそれらのベネフィットが得られた時、どんな未来・生活・問題解決が待っているのか。それが「結果」です。

“I”主導の主語から脱却する

 しかしながら、つい自分を売り込もうとして、気づかぬうちに“オレさま”プレゼンになってしまっているケースは多々あります。その1つに“I”の多用が挙げられます。

 例えば、“I think”というフレーズはよく使われます。しかし、セールスのプロフェッショナルは、「Think」ではなく「Know」、つまり「…と思う」のではなく、「…だと知っている/確信している」から相手を説得しているのです。また、「I」を主語にして語ることで、話のフォーカスが相手ではなく、セールスパーソン自身に引き込んでしまい、相手との壁を作ってしまうのです。